本記事では、会社の「貸借対照表」の基本的な見方と活用法を解説します。

会社が持つ資産と負債がひと目で分かる「貸借対照表」

貸借対照表は「Balance Sheet(バランスシート)」の頭文字を取って「B/S」とも呼ばれます。本書では、貸借対照表で統一します。

 

貸借対照表は、財一決算期の期末の日(決算日)時点で会社が持っている産(資産)、あるいは、資産を築くために使った自己資金(資本)、資産を築くために借り入れた金額(負債)の状態を示したものです。

 

下記の【図表】を参照してください。貸借対照表の内容をわかりやすく示しています。

 

貸借対照表は、左側と右側に分かれます。

 

左側を「借方」といい、右側を「貸方」といいます。左側(借方)は、会社の資産を示します。資産には現金や売掛金、設備など事業活動に必要なものがすべて入ります。流動資産は1年以内に現金化できる類いの資産です。固定資産は不動産など現金化するのに1年以上かかる資産です。

 

右側(貸方)は、会社の負債と純資産(資本)を示します。「負債の部」には、買掛金や未払金、借入金や預り金など、この先支払わなければいけないものが表示されます。

 

「純資産の部」は、株主から出資してもらった資本金、過去の利益の蓄積など、会社の真の財源を示します。負債には、すぐに返済が必要なもの(流動負債)と、ゆっくり返済するもの(固定負債)があります。

 

【図表】 貸借対照表とは

「賃借対照表」とは

 

「貸借対照表」から見えてくる会社の問題点

●純資産の比率が低い会社は業績が悪い

純資産は他人や銀行に返済しなくていい〝純粋な自分の会社の資産〟です。長年、少しでも黒字が続いていれば、利益剰余金などがわずかずつでもプールされていくため、純資産の部が増えていきます。しかし、赤字が続くと、負債の比率が大きくなり、純資産の部が小さくなります。場合によっては純資産の部がゼロやマイナスになることもあります。大体、赤字を3期も続けると、純資産の部はほぼマイナスになるでしょう。純資産の比率が高ければ高いほど、何年も利益を積み重ねてきた実績になります。貸借対照表が会社の歴史であると言われるのは、このように過去の業績が如実に読み取れてしまうからです。

 

●仮払金が大きいと融資はNG

仮払金は字義通り、仮に払ったお金です。仮に払ったお金は、何らかの資産か経費になって戻ってくるのが前提です。なので、借方の流動資産の品目として記載されます。この内訳を見て、社長への仮払金が大きい場合は注意が必要です。

 

たとえば、社長が海外出張をしたとします。その出張費を仮払金として一旦計上したものの、社長が領収書を出さず、精算ができませんでした。すると、それは社長への仮払金として処理されます。仮払いの精算が見込めない場合は、社長への貸付金になります。このような状態で融資を申し込んでも、銀行は「まず仮払金を回収してからにしてください」と言います。「話は社長が返すものを返してから」というわけです。これは当然と言えば当然の言い分でしょう。

会社の評価を下げてしまう不動産もある!?

●借入金の内訳によっても融資が止まる可能性がある

借入金の残高や内訳も重要なポイントです。銀行からの借入以外に、どんな借入があるかを見て、不健全だと判断されると融資は下りません。たとえば、生命保険会社の契約者貸付金、社長からの借入金、身内からの借入金、その他の個人からの借入金、カード会社からの借入金、貸金業からの借入金……それらが列挙されていると、「この社長はあちこちから借金をしまくっている。融資不適格会社だ」と判断される場合があります。

 

●利益を生まない不動産はマイナス評価になることも

会社名義で不動産を所有している場合、その所有目的についても注目されます。賃貸アパートや駐車場など「収益を生む不動産」であるかどうかです。本社ビル、社宅、自社用駐車場など「収益を生まない不動産」は、結果的に会社の評価を下げてしまう場合があります。

 

NECをはじめ多くの企業が本社ビルを売却してそのまま賃貸の形に変えているのも、そのためです。昔は不動産を持っているほうが安心な会社と思われていましたが、現在はリスクになる可能性もあるため、必ずしもプラス評価にはならないのです。

 

●リース契約は借金と同じ

機械などの設備をリースで購入しているケースも多いと思いますが、リース契約は分割払いと同じです。時々、「気に入らないからリース代を払わない」とか「もう機械を返すから払わない」と言う人がいますが、これは借金を返さないのと同じで金融事故になります。また、過剰なリース契約も融資の妨げになります。

 

 

鈴木 みさ

株式会社スタジオM 代表取締役
Intelligent Financial Management株式会社 取締役

 

本記事は、2016年11月10日刊行の書籍『銀行に好かれる会社、嫌われる会社』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

鈴木 みさ

幻冬舎メディアコンサルティング

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