マンハッタンの居住用不動産市場は、今年1-3月期に9年ぶりの大幅な販売減少を記録した以降、7-9月期現在まで軟調に推移しています。しかし、アマゾンが既存本社のシアトルに加え、ニューヨーク市とワシントン近郊のバージニア州北部に第2本社を新たに設置すると発表、周辺居住用不動産市場が中長期的にみて改善する可能性が出てきました。
アマゾンがニューヨーク市に第二本社の設置計画を発表、高収入の職を大量採用予定
マンハッタンの居住用不動産市場は、今年1‐3月期の販売戸数が前年同期比-24.6%と、実に9年ぶりの大幅な販売減少を記録して以降、7‐9月期現在まで二桁台の販売戸数の減少(率)が継続しました。しかし、今年11月13日にアマゾンがニューヨーク市に第二本社を新たに設置すると発表したことから、今後は周辺の居住用不動産市場が中長期的にみて改善する可能性が出てきました。
[図表1]マンハッタン コンドミニアム/集合アパート統計
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アマゾンの発表によれば、ニューヨーク市では平均年収15万ドル(約1,700万円)の職を25,000人以上雇用する計画で、アマゾンの投資額約25億ドルに対し、アマゾンが受け取る補助金等は15.25億ドルに及ぶ見込みです。ニューヨーク市内の建設予定地はロング・アイランド・シティで、マンハッタンとイースト川を隔てた場所にあります。
[図表2]アマゾンが計画中のニューヨーク第二本社予定地
マンハッタンからは8つの地下鉄や多数のバスやフェリーが運行し、JFK空港やラガーディア空港にも近く、アクセスが良好なロケーションです。アマゾンは、400万平方フィート(約37万㎡)のオフィス・スペースを計画中で、さらに800万平方フィートまで拡張可能です。
投資家はアマゾン第二本社の観測報道をきっかけにアパートメントREITを物色、その影響度や期待値の大きさを物語る
米国株式市場では、メディアがアマゾンの第二本社の建設計画に関する観測記事を11月初旬に報道して以来、賃料上昇等を見込んで関連銘柄が物色されています。
例えば、米国アパートメントREITのAvalonBay Communities(AVB)やUDR(UDR)、Equity Residential(EQR)、Aimco(AIV)などは、今年10月末と比較して、S&P米国REIT指数やS&P500指数を上回るパフォーマンスを示しています。
これまでマンハッタンの居住用不動産市場には、住宅ローン金利の上昇や住宅価格の高騰等を背景に、変調の兆しが表れていました。しかし、アマゾンの第二本社設置によって居住用不動産市場が中長期的には改善に向かう可能性が出てきたことは、不動産価格の上昇による資産効果も期待できる点でポジティブです。
また、周辺産業に莫大な経済効果をもたらす可能性があるという点でも、今後注目すべき材料だと考えます。
[図表3]主要アパートメントREITの推移
(2018年11月21日)
田中 純平
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト
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