外国人観光客に「おもてなし」が伝わりづらいのはなぜか?

本記事では、外国人観光客に「おもてなし」が伝わりづらい理由を検証します。

外国人観光客に伝わらない「おもてなし」の精神?

日本人は生来「おもてなし」の心をもっているといわれています。見知らぬ街で道を尋ねれば、10人中10人が非常に親切に教えてくれます。若い人はスマホのアプリで気軽に調べてくれたり、目的地まで連れていってくれたりする人もいます。

 

その日本人が万全なおもてなしマニュアルを手にすれば、それこそ「鬼に金棒」となるはずです。

 

しかし、万全なマニュアルにのっとっていても、誠心誠意お客様に対応していても、実はそれが外国人のお客様にきちんと伝わっていなかった事例を、私はサービスの現場で何度も目にしてきました。

 

誠意を込めて謝罪しているのに気持ちが伝わらない、丁寧に料理をサーブしてもフレンドリーじゃないと言われてしまう――皆が真面目にサービスを提供しているだけに残念でなりません。

 

ぜひ皆さんに「一度来日していただいた外国人観光客をリピーターにする世界基準の接客サービス」が何であるかを理解していただき、そのうえで伝授していきたいと思っています。

 

理解を深めるために、まずは、日本におけるサービスの問題点を明確にしておきましょう。

「画一的なサービス」に陥りがちな日本の接客

ホスピタリティ・ビジネスという言葉は、今では皆さんにとって耳慣れた言葉になっていると思います。日本では従来から、ビジネスマナーとして名刺の渡し方やおじぎの角度など、形から入るものについてはきちんと時間をかけて指導されてきましたが、お客様との「心のやりとり」については効果的な研修は行われていなかったように思われます。

 

しかし、相手の「心」とのかかわり、相手へのおもいやりをともなうサービスこそが、ホスピタリティ=おもてなしになるのではないでしょうか。

 

ホテル、旅館、エアライン、レストラン、デパート、個人商店、観光地など、求められる基本は同じです。

 

控えめであることが美徳とされている日本では、仕事中は無駄口をきかずにきちんと業務を遂行していくことが最も大切と思う方が多く、ややもすると画一的なサービスに陥りがちです。

 

たとえば、コーヒーショップでの接客サービスを想像してみてください。多くの日本人は、コーヒーをこぼさず、熱いままで提供することをビジネスの本質ととらえています。

 

これは、商品・サービスを購入していただいたお客様への対価として当然提供すべき応対です。これはあくまでもビジネスを遂行するためのコミュニケーションなのです。

裏方のスタッフにも求められる「おもてなし」の姿勢

それに対して、お客様の好みを会話のなかで探ったりするのは、相手の心をつかむ「ハート・コミュニケーション」です。このハート・コミュニケーションは、現場では個々人に任せられていますが、これが大きなポイントの一つです。

 

日本にもある外資系コーヒーショップの例などは、想像しやすいのではないでしょうか。たとえば注文時に咳をしていたり、鼻言だったりすると、店員さんがコーヒーの入った紙カップに「おだいじに」と、スマイルのイラスト入りでメッセージを書いて渡してくれたりします。

 

彼らには日常会話を織り交ぜながら、コミュニケーションを取ろうとしている印象があります。これは彼らのハート・コミュニケーションですが、同時になすべき業務(ビジネス・コミュニケーション)もこなしていきます。

 

その傾向がよく表れているもう一つの例が、海外のショッピングセンターの清掃スタッフでしょう。日本では清掃スタッフは、「黒子」「裏方」のイメージがあるため、背景と溶け合うように黙々と仕事をこなしています。

 

しかし、アメリカなどでは、清掃スタッフはゲストとすれ違うときに「こんにちは」「今日はいい天気だね」と声をかけてきたり、空港ではゲストがカートを置こうとしているときなどは、「こっちのほうが置きやすいよ」などと気楽に指示してくれたりします。「足元に気をつけてね」と言われることもあります。

 

その職場に関わる人々すべてが、仕事をしながらお客様をおもてなしすることを忘れません。このあたりは日本人とは、仕事に対する姿勢の違いがあります。

笑顔を絶やさず、フレンドリーな会話をすることが重要

またホテルのフロントでも、お客様をお迎えするときに、

 

Where are you from? 「どちらからですか?」

How was your flight? 「フライトはいかがでしたか?」

Is this your first trip to Japan/Tokyo? 「日本/東京へは初めてですか?」

 

のようにプラスαの声かけをするのが、英語のコミュニケーションの基本です。

 

先日訪れたパリのホテルは、どのスタッフからも当たり前のようにお客様との自然な会話が生まれていました。チェックインの作業をしながらフレンドリーに会話するなど、受付も完璧でした。

 

長い文章を話す必要はありません。業務を速やかにこなしながら、にこやかに会話をすることが大切なのです。笑顔を絶やさず短い言葉を交わしながら、お客様のために仕事をします。

 

一方では、仕事を事務的にこなし、必要なことだけを伝えればいいという仕事の仕方もあるでしょう。どちらがお客様へのおもてなしとして優れているかは、言うまでもありません。

 

もちろん、「笑顔で」「相手の立場に立って」を追求するあまり、相手の言いなりになってしまうのも決して正しいことではありません。プロとして笑顔でお客様と接することと同様に、クレームがあれば、プロとして凛とした態度で接することも時には必要になります。

一言を添える「ハートコミュニケーション」がカギ

ホスピタリティービジネスが成功するには、次のような図式が必要です。

 

「お客様の期待を超えて満足していただく」→「リピーターになっていただく」→「そのお客様の周囲の方にも来ていただく」→「その方たちにもリピーターになっていただく」

 

最終的にここへつなげていくためのおもてなしが、日本人には必要なのです。

 

コーヒーショップに来るお客様は、あたたかくおいしいコーヒーをタイムリーに受け取ることを期待して来店されます。ただし、おいしいコーヒーをこぼすことなくタイムリーに提供しただけでは、お客様の期待を超えるサービスまでには到達していないのです。

 

お客様の期待を超えて、満足していただくためには相手の心に残るハート・コミュニケーションが不可欠になってきます。たとえば、「寒くなってきましたね」とか、「咳がつらそうですね」といった、ちょっとした一言がリピーターになっていただくきっかけになるはずです。

 

人間としての感情の部分(ハート・コミュニケーション)とビジネスとして通さなければならない部分(ビジネス・コミュニケーション)、どちらか一方に偏ることなく、サービスの両輪として、その両方をバランスよく地道に積み上げていくことがキーポイントとなります。

 

 

村田 志乃

株式会社RADIANT 代表取締役

 

株式会社RADIANT 代表取締役

新潟大学人文学部英米文化課程卒業後、米国系航空会社(旧NW)日本支社に入社。旅客部門、機内サービス部門を経て、アジア地区における接遇教育専任担当として、接客力をもつ多くの社員を職場に送出。退社後、神田外語学院エアライン科講師を経て、株式会社早稲田総研インターナショナル(現:早稲田大学アカデミックソリューション)の英語コミュニケーションクラスの講師として大学の講座で教壇に立つ。
その後、株式会社RADIANT設立。ヒルトン東京ベイを皮切りに、マンダリンオリエンタルホテル東京、東京ステーションホテル等の大手ホテルにて、英語接遇研修を行う。その他、大手製薬会社、医療メーカー等の社内研修においても高い評価を得ている。

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村田 志乃

幻冬舎メディアコンサルティング

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