世代によって「適切な連絡手段」にも違いが…
ジェネレーションギャップの本質は、それぞれの世代が育った時代環境と教育内容の違いにあります。その世代に特徴的な考え方や行動の傾向を知り、それに対応する適切なマネジメント方法を知れば、若手社員やシニア人材を効果的に管理、育成できるはずです。
たとえば、相手に対して簡単にお礼を言いたいとき、本来は面と向かって口頭で伝えるのが最も良いのですが、それができないときはどのような手法を使うのがよいでしょうか。
団塊の世代やしらけ世代に対しては、手書きの葉書などを書いて送ると、マナーにのっとっていると感動してもらえるかもしれません。一方、ミニマムライフ世代やゆとり世代に手書きの葉書を送ると、逆に重く感じさせるかもしれません。なぜなら、手書きの葉書をもらえば、手書きの葉書で返事をしなければならないからです。
彼らの流儀では、もしつながっているならLINEやFacebookなどのSNSで軽く感謝を述べるほうが、相手に対する負担が少ないのです。また、新人類世代や団塊ジュニア世代の場合、SNSに慣れていない人も多いですから、メールが最も適切な連絡手段になります。
もちろん、繊細な人間同士の付き合いを、世代で一律に判断するのは間違いです。団塊の世代でもSNSをバリバリ使いこなしている人もいれば、ゆとり世代でも手書きの手紙が最も良いという古風な価値観を持っている人もいます。そのため、基本的にはそれぞれの相手に合わせた個別対応が肝心ですが、おおまかな傾向は世代論から知ることができます。
「言葉」を工夫することでモチベーションアップを
さて、本連載が特にマネジメントの対象として考えているのは、2019年時点で60代であるしらけ世代のシニア社員と、同じく2019年時点で20代であるゆとり世代の若手社員です。これら二つの世代の特徴は、元気のある上下の世代に挟まれて、どちらかといえば大人しく、自信を喪失していることです。
1950年代生まれのしらけ世代は、学生運動で暴れた1940年代生まれからは「政治に無関心」であると責められました。また、バブル景気を謳歌する1960年代生まれの新人類からは「時代の変化を理解できない旧世代」だと言われることもありました。勢いのある二つの世代に挟まれた谷間の世代だったのです。
1990年代生まれのゆとり世代も、事情は似たようなものです。先行世代からは「ゆとり教育」のおかげで勉強していない子どもたちとして見下されていますし、脱ゆとりで英語やプログラミング教育が盛んになった下の世代からは、ITを消費するばかりで生産(プログラミング)のできない旧世代と見られることになるでしょう。
実際、若手社員の中には、スマートなのに自信のなさそうな人が目立ちます。自信のなさは、しらけ世代にも共通していえることです。インターネットが普及して爆発的なIT革命が始まった頃にすでに50代前後になっていたしらけ世代は、職場におけるIT化にも私生活におけるIT活用にも、どこかついていけなさを感じています。時代の変化が速過ぎたために、現役で働いていながら「時代遅れ」になってしまったのではないかと不安を感じているのです。その反動で、スマホやネットを敵視する年配者も少なくありませんが、道具としてのITを使いこなしてからの批判であるならともかく、使っていないのに印象批評では、説得力がありません。
とはいえ、そのような批判をお互いにしていても建設的ではありません。大切なのは、相手を知ったうえで、どうすれば効率よく働いてもらえるかです。
ここで重要なのは、若手社員とシニア人材の価値観はお互いに異なるが、実はどちらも管理職世代に比べて「自信喪失」していることへの配慮です。「言い方」や「言葉遣い」を工夫することで、若手社員やシニア人材のモチベーション向上に驚くほどの効果があることが分かってきたのです。
西村 直哉
株式会社キャリアネットワーク代表取締役社長
人材育成・組織行動調査のコンサルタント