相続税を減額する特例や法律は毎年修正される
相続税の一般的な知識を得ることは、それほど難しくありません。
書店には相続税に関する本や雑誌がたくさん並んでいますし、いたるところで銀行などが主催する相続に関するセミナーが開かれています。おおよその相続税額や、相続税対策のポイントなどについても、ある程度のことがわかるでしょう。最近では、自分の財産を打ち込めば納税額を計算してくれるパソコンのソフトウエアなどもあります。
しかし、そうして得た知識をもとに自分で相続税対策を行うのは、まず無理だと考えてください。時折、本や雑誌、インターネットから得た知識をもとに自己判断で相続税対策を行う方がいらっしゃいます。そのような方にお話を聞くと、「税理士に依頼するお金を節約したい」というより、相続税を学ぶにつれ「自分でもできるような気がしてくる」のだそうです。
確かに、課税財産を合計して申告するだけであれば、本や雑誌の知識を総合することで可能かもしれません。しかし、実際の相続税対策となると、その仕組みが複雑であることがわかると思います。
相続税を減額する特例や法律は、毎年細かく修正されています。「小規模宅地等の特例」などは、一般の方が知らないうちにマイナーチェンジを繰り返していますので、変更があるたびに検討し直さなければなりません。
専門家の知識なしで相続税対策を行うことは危険
また、課税財産の評価を圧縮させ、相続税を減額することができても他の税金が増えてしまうことなども起こり得るため、専門家の知識なしに成すことは難しいのです。
実際に、専門家に一切相談せず「Aの対策をすれば相続税額が〇〇円減額する」と相続税対策を行ったものの、「思わぬ落とし穴があってほとんど減額できなかった」「Aをやったけど、税務署に否認されてしまった」という話をよく耳にします。
そんな失敗でよく聞くのが、生前贈与です。生前贈与には、年間110万円の基礎控除枠が設けられています。そのため相続人となる子や孫名義の口座を作り、毎年110万円ずつ振り込む方が少なくありません。こうすることで、5年なら550万円、10年なら1100万円の贈与が無税でできると思っているのです。ところが、これには陥りやすい落とし穴があります。