本連載は、スパークス・グループ株式会社のウェブサイトに掲載されている「COLUMN / バフェット・クラブの金言」を転載したものです。

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B/Sや損益計算書から「経営者の姿」が見えてくる

引き続き、スパークス型投資の原点である「実態価値と価格の差の裁定プロセスに参加する」ということを考えていきましょう。

 

スパークスに入ってきたばかりのアナリストには、「この会社いいですよ、株価が安いですよ」とEPS(一株当たり利益)、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)を並べ立て説明を始めようとする人たちがいます。

 

証券分析の知識がある人に限って、会社全体の総資産や株主資本などバランスシートの大きな形について、良く知らない場合が多いようです。売上高、利益、時価総額を聞いてみるとすぐに答えられなかったりするのです。個人投資家向けのマネー誌を見ていても、指標のランキングが並んでいるものが多いですが、ああいう形で企業を考えてしまうのですね。

 

これでは、「木を見て森を見ず」ということで、正に本末転倒。私はまず、バランスシートで企業の大きさと形を見て、売上高がいくらあって、利益が何億出ていて、社員数はどの位で、どんな風に利益を出している会社なのか、まず大づかみすることが一番大事だと教えています。バランスシートや損益計算書を見ていくと、その企業の経営者の考え方、性格もぼんやりと見えてきます。まずは企業全体の形、イメージをしっかりと理解することです。

同業であっても「企業文化・強みの源泉」には違いが…

さらには、数回お話してきたブランドともつながる話ですが、企業の文化というか強さの源泉を調べていくことが大切です。

 

例をあげましょう。この間、久しぶりに、家電量販店の社内勉強会をしていて、ヤマダ電機とカトーデンキ販売(現在のケーズホールディングス)を1990年代に必死に調べたのを思い出しました。

 

スパークスが創業したのは、日経平均株価が最高値をつけた1989年。その後、大型株の株価が大暴落していく中で、私が注目したのが、従来のパラダイムを壊して新しい成長機会を見つけている中小型株でした。当時は店頭市場株と呼ばれていました。そんな中に勃興期を迎えていた家電量販業界があったのです。

 

大規模小売店舗法の規制緩和という追い風にのって、両社は、巨大メーカーが生産から販売にいたるバリューチェーンを独占し、商品の価格形成も割高できわめて硬直的だった市場に「価格破壊」の新風を吹き込み急成長していました。余談ですが、当時、スパークスも投資し大きな成果を得ています。

 

急成長を遂げたヤマダ電機とカトーデンキでしたが、社風は全く異なりました。ヤマダ電機は山田昇社長。ビクターの商品修理店主からの転身です。私は当時のヤマダ電機を訪問した際に、店舗の奥にあった社長部屋に通されて、山田社長にお話を伺ったのを昨日のことのように思い出します。

 

失礼ながら、ヨレヨレの上着にズボン、白い靴下に黒い運動靴といういでたちでした。そこで山田社長は、目を輝かせながら「現在、群雄割拠の家電量販業界は将来3社に集約されるが、当社はそのうちの一つに絶対入る」と、職人らしい几帳面な語り口で語ったのです。現在、約1兆5,000億円あるヤマダ電機の売上高がまだ300億円だったころの話です。

 

 

成長を見込んで同社は、希薄化を伴う増資を繰り返したので、株主として中止を願うお手紙を差し上げたところ、「増資で得た資金は必ず有効に使い株主にお返しします」と丁寧なお返事を頂戴しました。

 

一方のカトーデンキ、加藤修一社長は、いかにも商人で堅実。現金商売で、社員が無理をしない「がんばらない」経営を当時から標榜していました。「急成長したら会社の寿命が来てしまうから、ゆっくり大きくしよう」と、おっしゃっていました。

 

同じ業界にいても、これほどまでに企業文化が異なるのです。今、両社共に、創業家出身の社長ではありませんが、勉強会でいまだ両社のカラーが変わっていないことを確認しました。

 

「企業の実態価値を測ろう」というと、なんだか大ごとのような気がしてきますが、まずは、こんなところから始めてみれば良いのです。

 

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(2018年8月17日)

 

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