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バリュー投資の父いわく投資家ならば“詳細に分析せよ”
第1回と第2回では、私のあこがれの投資家であるバフェットさんとソロスさんを紹介してきました。今回からは、社内勉強会、バフェットクラブに頻繁に登場する先人を紹介していきましょう。まずは、「バリュー投資の父」といわれるベンジャミン・グレアムさんです。バフェットさんはよく、「私の85%はグレアムからできていて、残り15%はフィッシャーからできている」と言いますが、バフェットさんの85%を形作っているというグレアムさんとは、いったいどんな人物なのでしょう。
グレアムさんは、1894年、ロンドンのユダヤ系の家庭に生まれ、1歳のときにニューヨークに移住しました。9歳のときに父親を亡くし、富裕層から転落、裕福とは言えない生活を送りましたが、奨学金を獲得しコロンビア大学で優秀な成績を収め、証券会社に入社します。そして、証券会社で多くの経験を積んだ後、1926年に投資会社「グレアム・ニューマン」を設立しました。若かりし頃のバフェットさんも、ここで働いたことがあります。
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私はバフェットクラブでグレアムさんを語る際、幼い頃、彼が経済的に困窮したことが大事だと、まず話します。父親の死後、母親が株の信用取引を始めるものの大暴落で失敗。グレアムさんは、銀行から5ドル借りるのも難しかったという屈辱的な体験をしています。
彼は、この原体験があるからこそ、「健全な投資とはいかなるものなのか」を一生考え続け、死の直前まで、自らの投資手法の更新を続けるのです。
著作『賢明なる投資家』、そして、デビット・L・ドッド氏との共著となる『証券分析』から、「中世のギルドさながらの組織の慣習に支配された」証券投資への、近代的アプローチが可能となり、証券投資は「科学」を目指し始めるのです。
グレアムさんは、『賢明なる投資家』のなかで、投資を以下のように定義しています。
「投資とは詳細な分析に基づいて、元本の安全性を守りつつ適正な収益を得るような行動を指す」そして、「この原則を満たさない行為を投機と呼ぶ」。
具体的には、財務分析を徹底的に行い、実態価値より大幅に安い株式を見つけます。
では、実態価値とは何か。グレアムさんは、純資産に代表される帳簿上に表れる明確な数字に将来の収益力という明確ではない数字を加えたものと定義します。特に前者を重視するのが、彼が、「バリュー投資の父」といわれる所以です。
将来の収益力を測るために、彼は株式を疑似的な債券だと考え株式と債券を利回りや安全性で比較します。この考え方は、後にバフェットの株式は、会社がつぶれない限り利息が支払われる永久債券のようなものだという考えに発展していきます。
現在の価値を見極めて投資で「損する」リスクを減らす
グレアムさんは、「人は誤りを犯すという本質を持っている」と語り、将来予測は非常に難しいと繰り返します。
そもそも彼は、「先のことはわからない。それゆえに、先のことを予想するのはやめるべきだ」と説き、今わかる価値を分析することの重要性を訴えています。
私の言葉でいうと、「Is this for real? (この価値は真実なのか)」と問いを立て、価値を調べる。これこそがグレアムさんが伝えてきた概念なのだと思います。例えば、ある投資先候補の倉庫に行ったら、ひとつひとつの在庫を見て本当に売り物になるのかを確認するような地道な作業です。
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バリュー投資では、現在の価値がどれほど真実であるのか疑って調査していきます。今現在の価値を判断できないものに、将来の価値など判断することはできません。まずは、現在の価値を適切に見極めて、投資で「損する」リスクを減らしていきます。
安全余裕率をもって損をしない投資をすることが最重要
このようにグレアムさんのバリュー投資は、「いかに損をしない投資をするか」という点が重要視されています。
「損をしない」ために、彼は実態価値よりも大幅に安く株式を購入できれば、安全余裕率があり、元本の安全性を守ることができると考えています。
「安全余裕率(マージン・オブ・セーフティ)」とは、グレアムさんによって提唱されたもので、スパークスでも、投資を決断する際に、まず、この安全余裕率があるのかどうかを、詳細に分析します。「儲ける」ためには、「損をしないこと」が最も重要なのです。
バブルで日経平均株価が最高値をつけた年に創業したスパークスも来年で30年。これまでいろいろな投資家や起業家とお会いしてきましたが、この30年を生き抜いてきた人の数は、驚くほど少ないのです。一時、華々しく見えた人も殆どが消えていきました。多くは、どこかの段階で、「損をしないこと」よりも、「儲けること」に目がくらみ、自らの欲望に負けてしまうのです。
バフェットクラブが、若い頃の貧しさを原体験にバリュー投資を編み出したグレアムさんの勉強から始めるのは、私たちが「損をしない」という投資の初心を忘れないためでもあるのです。
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(2018年6月15日)