これまでの日本では全ての消費者をターゲットに同じ方法で商品・サービスの宣伝を行う「マスマーケティング」がプロモーションの主流でした。テレビCMや雑誌広告、新聞広告等のいわゆるマス広告を大々的に駆使して消費者にブランドイメージを一気に浸透させることで市場シェアを獲得する―それがプロモーション戦略の王道中の王道とみなされてきたのです。
しかし、このようなマス広告を主軸とする画一的なプロモーション手法は万能とはいい
がたくなっています。まず、消費者の間では、テレビCMや雑誌広告、新聞広告から得られる情報を重視しない傾向が年々強まっています。
大手シンクタンクの野村総合研究所は、商品やサービスを購入する際に利用する情報源の推移に関する調査を定期的に実施してきました。以下は、その結果(左・2012年、右・2015年)をまとめたものです。
(1)テレビのコマーシャル・・・51.5% → 44.8%
(2)ラジオ、新聞、雑誌の広告・・・41.5% → 30.5%
(3)テレビ・ラジオの番組・・・19.9% → 16.2%
(4)新聞の記事・・・27.6% → 22.5%
(5)雑誌・フリーペーパー・・・16.2% → 15.2%
(6)折り込みちらし・・・36.6% → 31.0%
(7)店舗の陳列商品・表示情報・・・50.2% → 55.1%
(8)販売員などの意見・・・30.2% → 35.4%
(9)信頼できる身近な人・・・21.0% → 24.2%
(10)企業が発行するカタログ・ホームページ・・・23.6% → 23.2%
(11)ネット上の売れ筋情報・・・22.0% → 29.6%
(12)評価サイトやブログ・・・23.9% → 34.2%
2012年から2015年の3年間で、(1)テレビのコマーシャル、(2)ラジオ、新聞、雑誌の広告、(3)テレビ・ラジオの番組、(4)新聞の記事、(5)雑誌・フリーペーパー、(6)折り込みちらしを情報源として利用している人の数は明らかに減少しています。テレビのコマーシャルは約6%、ラジオ、新聞、雑誌の広告は11%も減っているのです。
CMへの信頼感は下がっている
また、従来、マス広告の中で、一般消費者に対して最も大きな影響力をもっていたのはテレビCMでした。「テレビCMで宣伝されているブランド=信頼できる」という意識・認識が日本人の間で広く共有されていたことは確かでしょう。