商品の背景やストーリーに価値を見いだす消費者たち
なぜ今ニッチなニーズに応じた商品・サービスが市場に登場し、そして注目を集め始めているのでしょうか。その理由を理解するためには、現在、ブランドとそのプロモーションのあり方に、巨大な変化の波が押し寄せていることをおさえておく必要があるかもしれません。
以下に述べるように、今、ブランドの世界は大きく揺れ動いており、あたかも〝革命前夜〟のような状況に直面しているのです―。
「○○電気のテレビ」「××食品のカレールー」「△△石鹸のシャンプー」等々、商品のジャンルや名前はそれぞれ違えど、これまで企業の多くは、特定の少数者ではなく不特定 多数の消費者に好まれるブランドを市場に投入することに意を注いできました。しかし、 そのような〝万人受け〟ブランドは、消費者の価値観が多様化する中で絶対的な支持を集 めにくくなっています。
まずは次にあげる「消費者価値観の変化」を示す2つのグラフをご覧ください。いずれも、経済産業省の呼びかけで企業・有識者等により構成された「消費インテリジェンス研究会」(「消費者理解に基づく消費経済市場の活性化」研究会)の手でまとめられたものです。
[グラフ1]消費者価値観の変化(自分に合ったものを求める)
グラフ1に表れているように、この数年の間に、商品を選ぶ際の基準となる価値観として価格を重視する人が大幅に減少しているのに対し、「自分のライフスタイルや好きなものであるか」「気に入っているかどうか」などというように「自分に合っているかどうか」を重視する人が増加傾向にあります。
[グラフ2]消費者価値観の変化(共感を求める)
また、グラフ2では、「商品の背景やストーリーまで含めて商品の価値」とみるのか否かに関するアンケートの調査結果が表されています。そこに示されているように、「モノがよければよい」という人よりも、商品の背景やストーリーまで含めて商品の価値だと考える人の方が多い結果となっています。
このような「消費者価値観の変化」のグラフからは、自らのライフスタイルや嗜好にあった商品、共感できるモノを欲する―そうした十人十色のニーズをもった消費者の姿が浮かびあがってきます。万人を対象としたブランドが、そのような消費者が求めているものでないことは明らかでしょう。
マス広告を重視しない傾向が強まっている
消費者の価値観がこのように多様化の傾向を強める中で、モノの売り方、宣伝の仕方も
大きな見直しを迫られています。