本記事では、超高齢化社会に突入している日本の現状について見ていきます。※本連載では、高齢者が貧困に陥るきっかけとなる無駄な医療を受けずに、人生をまっとうするために知っておくべきことについて、データを基に解説します。

この費用も減らすべく、政府は特別養護老人ホームの入所要件を引き上げ、要介護度3以上にしました。その結果、ますます介護を必要とする人が介護施設に入れない「介護難民」になるという状況を生み出しているのです。

 

民間の有識者会議「日本創成会議」によると、団塊の世代すべてが75歳以上の後期高齢者となる2025年に、全国で約43万人が「介護難民」となり、特に東京圏(東京都、埼玉、千葉、神奈川県)だけで3割の約13万人に上るという試算を発表しています。

 

では、一般家庭での介護環境はどうでしょうか。すべての高齢者のケアを家族が家庭でするというのも、現実問題としては難しいでしょう。厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」によると、1953年における1世帯当たりの家族の平均人数は5.0人でした。ところが、この数字は年を追うごとに下降。1961年には4人を、1992年には3人を割り、2015年には2.5人にまで下がっています。昔の日本は大家族で暮らしていました。そのため、家庭内に高齢者の介護をする余裕があったのですが、核家族化が進み、世帯当たりの人数が減ったことで、介護の担い手が少なくなってしまったのです。

 

さらに、昔ながらの家制度の崩壊も、介護の担い手不足に拍車をかけています。以前は「長男の嫁が義父母の面倒を見る」という習慣がありましたが、今はそうしたケースは少なくなっています。

 

高齢者だけの世帯が増えているのも、在宅での介護を難しくしている原因の一つです。1980年時点で、一人暮らしをしている高齢者は全体の8.5%にすぎませんでした。また、高齢者夫婦のみの世帯も19.6%という水準でした。ところが、1990年には高齢者単身世帯は11.2%、高齢者夫婦のみの世帯は25.7%に増加。2014年には、高齢者の単身世帯が17.4%、高齢者夫婦のみの世帯は38.0%です。つまり、高齢者のうち半数以上の
55.4%は一人暮らし、もしくは高齢者だけで暮らしているというわけです。

 

もし、高齢者夫婦が2人だけで生活している場合、どちらかが倒れて介護が必要になったら、高齢者が高齢者の介護をする「老老介護」の状態に追い込まれてしまいます。介護は肉体的、精神的な負担が大きく、介護している方が「介護疲れ」に追い込まれる危険性は小さくありません。

 

医療費は高くなり、逆に年金の額は少なくなる。さらに、病院での療養が受けられず、「介護難民」となる恐れが高くなる。高齢者にとって、厳しい時代がやってくるのは明らかなのです。

 

【図表2】家族形態別にみた65歳以上の高齢者の割合

 

経済的に困窮する「一人暮らし高齢者」の現状

一人暮らしの高齢者を巡る環境は厳しくなる一方です。

長寿大国日本と「下流老人」

長寿大国日本と「下流老人」

森 亮太

幻冬舎メディアコンサルティング

日本が超高齢社会に突入し、社会保障費の急膨張が問題になっている昨今、高齢者の中で医療を受けられない「医療難民」、貧窮する「下流老人」が増え続けていることがテレビや新聞、週刊誌などのメディアでしばしば取り上げられ…

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