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芸術を鑑賞するだけで「コミュニケーション能力」が高まる理由

前回は、ビジネスパーソンに「芸術の教養」が不可欠な理由を取り上げました。今回は、芸術に接することで「コミュニケーション能力」が高まる理由を見ていきます。

感想を言語化するプロセスが「思考力」を鍛える

芸術の効果①思いや考えを言語化する「表現力」が身に付く

 

芸術の教養が身に付くと、どんなよい効果が得られるのでしょうか。美術商ならではの視点も交えながら、一つひとつ紹介していきます。

 

映画や文学に触れて温かい気持ちになったり、悲しくて涙が出たり、感動したという体験は誰にでもあるはずです。映画や文学は芸術の一種。その作品にじっくりと向き合うと、作者や演じる人の想い、メッセージに刺激されて、何かを感じたり、考えさせられたりするものです。

 

それは美術や音楽、舞台など、他の芸術作品に対しても同じでしょう。

 

その芸術作品に触れたときの気持ちや考えをできるだけ詳細に言語化すると、表現力が身に付くと同時に、思考力が刺激されて、自分の意見を持てるようになります。

 

芸術作品に触れたときに生まれる感情は、「なんとなくこんな気がする」という、どこかファジーなものです。また今まで感じたことのないような複雑な気持ちになることもあるでしょう。

 

簡単に言葉にしにくいため、概して「きれい」「明るい」「暗い」といった簡単な形容詞だけの感想で済ませてしまったり、「言葉にならない気持ち」で終わったりしてしまいがちです。

 

そこでぜひ実践してほしいのが、自分の感情や考えに近い言葉を探すこと。「この木が描かれた絵が好きだ」と感じたら、「どうしてそう思うのか」「作者はどういう気持ちでこの作品を描いたのか」などと深く考えて、心や頭の中を整理していき、それを言語化するのです。

 

もしかしたら、その木の絵に惹かれるのは、小さい頃木に登った思い出が蘇るからかもしれませんし、その絵のタイトルとあなたの現状が重なっているからかもしれません。そういう気づきを含めて、言葉にしてみてください。

 

続けるうちに、あなたの言語化能力は必ずアップします。

感想を正確に伝えることで「表現力」が磨かれる

例えば、世界的に有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」ですが、この絵に対してあなたはどんな感想や意見を持っていますか?

 

私が実物の「モナ・リザ」を初めて観たのは20歳そこそこで、芸術の必要性など考えてもいない頃。「え!?思っていたより小さい。これがかの有名な『モナ・リザ』なんだ……。もっと近くで観てみよう。確かに微笑んでいる。目が合う!」

 

最初に出てきたのはそんな単純な感想だったように思います。

 

けれども、ずっと作品のイメージが残っているのです。独特な雰囲気のまなざしが頭に焼き付いて、「ダ・ヴィンチは他にどんな絵を描いたのだろうか」などさまざまなことを考えさせられました。

 

そして何より、あまりにも有名なモナ・リザに会えたことに心が満足したように感じました。

 

同じ絵を観ても人によって意見はまったく違いますし、同じように「すばらしい名画だ」と感じていても、その気持ちをどんな言葉で表現するかは一人ひとり違うものです。これこそがまさに個性なのです。

 

このように言語化した気持ちや意見は、実際に声に出して人に伝えると、さらに表現力が磨かれます。ぜひ、美術作品について、友人や家族と意見交換する場をつくってみましょう。

 

そうすれば相手に自分の気持ちや考えを正確に、分かりやすく伝えるために言葉を選ぶようになるので、より言語化能力が鍛えられます。さらにより伝わりやすいように、声のトーンや表情、身振り手振りなどにも気を配るため、表現力がトータルで向上するでしょう。

 

また、意見を言い合うときには、相手の意見を聞くことも必要です。そこでは、相手が話しやすいようにうなずいたり、相づちを打ったり、上手に聞くスキルも磨かれます。

 

相手の立場に立って分かりやすく伝えたり、上手に話を引き出したりするのは「教養=思いやり」にもつながりますから、コミュニケーション能力全体のレベルアップが期待できます。

表現力は「自分の存在感」を出すための重要な能力

「芸術が表現力を伸ばす」というのは、ギャラリーで働くスタッフを見ていても感じます。

 

私のギャラリーでは、予定されている展覧会に向けダイレクトメールやチラシを作る際、そこに掲載する作家や作品の紹介文執筆をスタッフが交替で担当します。担当者は、作家の魅力が最大限に伝わるような文章を考えなければいけません。さらにその文章はスタッフ全員でチェックするのですが、そこで出たさまざまな意見を反映して、ブラッシュアップしていきます。そういうことを繰り返していくうちに、語彙が増え、表現力もアップしていっているように思います。

 

その証拠に、最初は口下手だったスタッフもお客様との会話をリードできるようになりますし、何より、対応したお客様に作品を買っていただく頻度も増えていきます。これは、お客様に作品や作家のよさを伝える表現力が身に付いていくからでしょう。

 

また、展覧会のテーマや企画を決める会議においても、全員が臆することなく自分の意見が言えるようになるのも、芸術との関わりが一つの要因になっているのかもしれません。私に遠慮するスタッフは一人もいません。

 

表現力はどんな仕事でも、どんな職場でも必要なスキルです。

 

表現力がアップすれば、説得力が高まります。説得力があれば、会社でのプレゼンや営業活動でも成果が出るものです。人を巻き込んで大きなプロジェクトを成功させる力にもなります。特に、国や文化の違う人のなかで実績をあげるには、自分からアピールし、周囲を動かす力がなくてはならないでしょう。

 

ビジネスパーソンにとって表現力は、グローバル化が進むなかでも、自分の存在感を出すための重要な能力なのです。

 

 

山田 聖子

靖山画廊 代表

 

靖山画廊 代表 

共立女子短期大学卒。出版社や企画会社を経て、1996年に株式会社アートジャパンを設立。東京は銀座に「靖山(せいざん)画廊」を構える。その審美眼により数々の新進気鋭作家を発掘し、多数の展覧会を手掛ける。トレンドを抑えた催事を企画したり、銀座の画廊を気軽に楽しめる「画廊の夜会」「クリスマスアートフェスタ」などを主催する銀座ギャラリーズの理事を務めたりと、一般に敷居の高いイメージがある芸術の魅力を日本中に広めるべく奔走中。

著者紹介

連載グローバル時代のビジネスに役立つ!教養としての「芸術」入門

 

教養としての「芸術」入門

教養としての「芸術」入門

山田 聖子

幻冬舎メディアコンサルティング

多数メディアで活躍中の「ギャラリスト」が解説! 初心者でも楽しみながら学べるはじめての「芸術」ガイド。 【目次】 第1章 日本人は「芸術」への関心が不足している 第2章 「芸術」は世界共通の“コミュニケーションツ…

 

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