国内外の動向、仕入れや生産、利益の分配・・・
国の経済活動は5段階に分けられる
為替相場を動かす材料は多岐にわたりますが、その中でも比較的影響が大きいのが経済指標です。しかし、世の中には本当にたくさんの経済指標があります。そのあまりの多さに、面食らってしまう人も多いのではないでしょうか。
入門者がいきなり経済指標を学ぶと、必ずつまずきます。まずはザックリと、経済指標のベースになっている、国の経済活動サイクルを理解しましょう。
ここでは国の経済活動を、「国内外の動向」「仕入れや生産」「利益の分配」「投資」「国内経済への影響」という5段階に分けて眺めてみましょう(図表1参照)。
[図表1]国の経済活動の5段階
①国内外の動向「もし中東で戦争が発生したらどうなるか?」
国の5段階の経済活動が、経済指標にどう関係しているのかを、架空のアメリカの経済シナリオを例にして、見ていきましょう。
最初に、「中東で戦争が発生」というニュースが流れてきたとします。これによって原油の調達が難しくなり、各国が代替先を確保しようとすると、どういう事態が起きるでしょうか?
②仕入れや生産「原油需要の高まりが産業を活発化」
実は、アメリカはかなりの原油生産国です。もしも各国がアメリカから原油を調達すると、その結果アメリカの「貿易収支」は改善すると考えられます。また原油産業を中心に生産活動が活発化し、たとえば「鉱工業生産指数」の上昇なども期待できるでしょう。
③利益の分配「活発化した生産活動の結果を企業と個人へ」
そうなれば企業収益の向上もあり得るでしょう。「米ISM製造業景況指数」が順調に推移し、「米雇用統計」の中では賃金の向上や雇用増加という結果も見られるかもしれません。
企業が収益を設備投資に回すと?
④投資活動「得られたお金はどう使われるか」
次に企業が収益を設備投資に回すと、「米耐久財受注」の数値が向上します。また個人の消費が拡大すれば、「米小売売上高」や「米消費者信頼感指数」、「米住宅着工件数」が増加したり、「貯蓄率」が増える可能性もあります。
その結果、税収が増えるので「米財政収支」がよくなる可能性もあります。また政府が公共投資を増やした様子も、「米財政収支」で確認できるかもしれません。
ワンポイント 「経済指標」とは?
経済指標とは、経済や景気の状況を表す数値のことで、各国の公的機関などが発表します。経済指標を読み解くことで経済状況を正確に把握できます。
⑤国内経済への影響 「景気のコントロール」
そしてここまででアメリカの生産・分配・投資が活発になったため、この3点を考慮して算出される「米国内総生産」(GDP)は上昇することが見込まれます(図表2参照)。
[図表2]アメリカ国内の好調な経済活動がGDPを上昇させる
その一方で、アメリカ国内の積極的な投資が物価を上げ、「米消費者物価指数」や「米生産者物価指数」が上昇すると、「米連邦公開市場委員会」(FOMC)が金融政策判断として、政策金利の引き上げを行う可能性が高まるでしょう(図表3参照)。
[図表3]国内経済への影響を表す経済指標
経済指標の関係を理解しておこう
こうして順番に見てくると、経済指標は相互に関係し合っていることがわかるのではないでしょうか。下記の図表4は、その関係を整理して、ここまでに紹介してきた経済指標を割り振ったものです。
[図表4]経済指標の関係を整理し、アメリカの経済指標を割り振った例
[図表5]おもな経済指標