アメリカの景況感は「ISM指数」で掴む
ISM製造業景況指数は、アメリカ国内の企業の景況感を表す、景気関連の経済指標です。0%から100%の数値で表され、50%が好況・不況の分岐点です。アメリカの景気の先行指標と位置付けられています。
大事なのはISM製造業景況指数
「ISM指数」とは、アメリカ国内企業の景況感を表す経済指標です(図表1)。ISMとは、米供給管理協会(Institute for Supply Management)の略です。ISM指数には、「ISM製造業景況指数」と「ISM非製造業景況指数」の2種類があります。
「ISM製造業景況指数」は、ISMが製造業の購買・供給管理の責任者に向けてアンケート調査を行い、その結果を指数化した景気関連の経済指標です。
もう1つの「ISM非製造業景況指数」は、非製造業の購買・供給管理の責任者に向けてアンケート調査を行い、その結果を指数化した景気関連の経済指標です。
どちらの指数も、0%から100%の数値で表されます。50%が好況・不況の分岐点とされ、50%を上回ると好況、50%を下回ると不況を示します。
為替市場関係者が注目しているのは、「ISM製造業景況指数」の方です。
[図表1]ISM指数とは
ISM製造業景況指数と為替相場の関係は?
「ISM製造業景況指数」については、毎月第1営業日に発表されるということで速報性が極めて高いうえに、アメリカ国内の景気に先駆けて変動する傾向があるとして市場の注目を集めています。
ISM製造業景況指数が底入れすると数カ月遅れて景気が底入れするといった具合で、アメリカの景気の先行指標と位置付けられています。
指数が予想を上回れば景気に対する楽観的な見方が広がり、ドル買い材料となります。下回れば先行きに対する悲観的な見方につながり、ドルが売られる傾向があります(図表2)。
[図表2]ISM製造業景況指数と為替相場の動き
ワンポイント ISM製造業景況指数と利上げの関係とは?
「ISM製造業景況指数」は、1931年以来、1世紀近く使われている伝統的な経済指標です。過去を振り返ると、FRB(米連邦準備制度理事会)は、この指数が50%を下回っているときには、利上げをしたことがありません。アメリカの政策金利の動向を見通すという意味でも、重要な経済指標といえます。
「米消費者物価指数」でアメリカのインフレ動向を読む
米消費者物価指数は、アメリカのインフレ動向に関する経済指標です。為替市場では、指数が前月比や前年比でどの程度変化したか、その変化率が注目されます。インフレ目標の数値とは異なります。
米消費者物価指数(CPI)はインフレ動向に関する指標
「米消費者物価指数」は、アメリカのインフレ動向に関する最も重要な統計で、米労働省が毎月中旬に発表します(図表3)。一般消費者世帯が購入する商品とサービスの総合的な価格の動きを指数化したもので、英語のConsumer Price Indexの頭文字を取ってCPIと略されます。また、価格の変動が激しい食品やエネルギーを除いた物価指数(米消費者物価コア指数)も同時に発表されます。
[図表3]米消費者物価指数とは
米消費者物価指数と為替相場の関係
為替市場では、これらの指数が前月比や前年比でどの程度伸びたか(あるいは縮んだか)の変化率が注目されます。
たとえば、ある年の米1月CPIが前月比+0.5%だった場合、翌2月のCPIが前月比+1.0%になると「インフレが加速」したと評価します。
この場合、短期的には利上げ期待などからドルが買われるケースが多いのですが、中長期的な視点では「インフレ=物価上昇」はドル安要因となるため注意が必要です(図表4)。
[図表4]米消費者物価指数と為替相場の動き
ワンポイント FRBのインフレ目標
米FRBはインフレ目標を2%に設定しています。インフレ目標とは、中央銀行が金融政策の目安にする物価上昇率のことですが、実はFRBが目安にしているのは消費者物価指数ではありません。「個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)」のコア指数の前年比上昇率2%を目安に、金融政策の運営を行っています。
個人消費支出価格指数(Personal Consumption Expenditures Price Index)とは、GDPを構成する要素の1つである「個人がモノやサービスに対して使った金額」である個人消費支出(PCE)から算出した物価指数です。
そして、個人消費支出価格指数から価格変動が大きいエネルギーと食品を除いた指数が、PCEコア指数(コアPCE、PCEコアデフレーターともいう)です。商務省が毎月末、前月の数字を発表しています。
FRBが、個人消費支出価格指数をインフレ目標にしているのは、個人消費支出価格指数のほうが消費者物価指数よりも調査対象が広いことと、実際の物価動向を反映するとされていることが理由と考えられています。