アメリカの経済成長率がわかる「米国内総生産」
米国内総生産(GDP)は、四半期ごとに発表される経済指標です。経済成長率が予想を上回ればドルが買われる傾向が強く、下回ればドル売り材料になります。改定値と確定値にも市場は大きく反応することがあります。
米国内総生産と経済成長率に注目
「米国内総生産」(GDP)は、米商務省が四半期ごとに発表する統計で、アメリカ内で期間内に生産された最終製品(完成品)やサービスなどの付加価値の合計を、金額で表したものです。
そして、その金額が前期からどれくらい増えたのかを率で示したものを「経済成長率」(GDP成長率)といい、市場はこの「経済成長率」に注目しています。なお、GDPが前の期から減少した場合は「マイナス成長」と呼びます。
[図表1]米国内総生産(GDP)の発表時期
経済成長率とドル為替相場の関係は?
「米国内総生産」は、1月、4月、7月、10月に速報値が発表され、翌月に改定値、翌々月に確報値が発表されますが(図表1)、当然ながら速報値が最も注目度が高く、市場の反応も大きくなります。
「経済成長率」が予想を上回ればドルが買われる傾向が強く、下回ればドル売り材料になります(図表2)。
ただ速報値は、推計値を多く用いた暫定数値のため、その後の改定値と確定値で大きく修正されることも珍しくありません。その修正度合いが大きいほど市場の反応も大きくなりがちです。
[図表2]経済成長率と為替相場の動き
ワンポイント 名目GDPと実質GDP
GDPには「名目GDP」と「実質GDP」があります。普段、経済指標として市場が注目したり、ニュースなどで取り上げられたりするのは「実質GDP」のほうです。これは、「名目GDP」から物価変動の影響を除いたもので、実質的な経済成長率を示しているためです。
例を挙げて説明してみましょう。ある年にジュースを1本100円で1,000本販売しました。販売額は100×1,000=100,000円ということになります。これを名目GDPだと考えた場合、翌年に1本110円に値上げして同じ1,000本を販売するとどうなるでしょうか。110×1,000=110,000円で、名目GDPは前の年から10%増えたことになります。ところが、実質GDPでは10円の値上げ分(物価の上昇分)を考慮しないので100,000円のまま、つまり成長率は0.0%ということになります。
実質GDPのほうを重視するのは、物価変動の影響を取り除かなければ、その国の本当の経済成長を測ることはできないという考え方に基づいています。
景気のバロメーターとなる「米小売売上高」
米小売売上高は、アメリカの百貨店を含む、小売・サービス業の月間の売上高を集計した経済指標です。前月からの伸び率が予想を上回ればドルが買われ、下回ったり、予想外に減少したりすると、ドルが売られやすくなります。
米小売売上高は景気のバロメーター
「米小売売上高」とは、アメリカの百貨店を含む、小売・サービス業の月間の売上高を集計して米商務省が発表する統計です(図表3)。為替市場は前月比の増減率に注目します。
GDPの7割以上を個人消費が占めるアメリカでは、小売動向が景気のバロメーターとなるため、各月の米小売売上高の結果に、為替市場が一喜一憂するケースが目立ちます。
[図表3]米小売売上高とは
米小売売上高と為替相場の関係は?
「米小売売上高」は、毎月第2週(夏時間:日本時間午後9時半、冬時間:日本時間午後10時半)に発表されます。
前月からの伸び率が予想を上回れば、景気好調との見方につながり、ドルが買われます。
一方、予想を下回る伸びにとどまったり、予想外に減少したりすると、ドルが売られやすくなります。なお、自動車販売は季節ごとの変動が大きいため、これらを除いた「コア小売売上高」も注目されることになります(図表4)。
[図表4]米小売売上高の増減率(前月比)の推移
[図表5]米小売売上高と為替相場の動き