いずれは個人の投資にまで浸透!?「航空機投資」とは何か?

航空機は、交通手段以外に「投資対象」としての側面もあります。航空機投資の醍醐味は、その安定したリターンだけでなく、投資を通じて社会の進歩や発展、平和に貢献できることにあります。本連載は、経済のグローバル化が進む現代における航空機投資の魅力的を解説します。

交通手段だけでなく「投資対象」の顔も持つ航空機

航空機はとても魅力的な存在です。搭乗時の楽しさだけでなく、見るだけで高揚感を覚える方も少なくないと思いますし、更に深く航空力学やテクノロジーを知るほど、ますます人を虜にしてしまう不思議な力を持っています。また頻繁に航空機やエアラインにまつわる書籍が出版されているだけでなく、年に数回は必ず経済雑誌で特集が組まれることからも航空機の人気の高さをうかがい知ることができます。

 

このような航空機ですが、実は交通手段以外にも投資対象としての顔も持っています。世界中の金融機関や投資家が、融資や投資の形で航空機を所有し、世界中のエアラインにリースを行っています。現在運航中の航空機の約40%がリース機であり、皆様が最近乗った航空機も高い確率で所有者はエアラインではないのです。

 

この航空機と金融にまつわる分野を航空ファイナンスと呼び、海外の大学やビジネススクールでは専門学科を設けており、関連する専門書も豊富です。しかしながら、こと日本においては航空ファイナンスの情報がほぼ皆無なのです。

 

その理由の一つとして日本の航空ファイナンスの特殊性があると考えています。現状では日本で航空機に投資をするのは、専門のリース会社、もしくは減価償却などを目的に保有する法人に限られており、航空機のリース、売買といったノウハウを必要とするのはそうした企業に在籍する一部の専門家に限られています。

 

筆者も30年以上にわたって航空ファイナンスに関わってきましたが、日本で航空ファイナンスに関わっている人材が限定され高齢化していく一方で、若手の育成が不足していると感じており、これは業界の情報発信が不足していた結果であると考えています。このような状況下では投資家や個人の方に航空機投資の情報が届くことは望めません。

 

筆者としては、航空機のリース、売買といったノウハウを一部の専門家だけのものにするのではなく、本連載やその他啓蒙活動を通じて広く日本の投資家に航空機投資を紹介し、さらには航空ファイナンスの人材育成にも貢献していきたいと思っています。そしてリスクプロファイル及びリターンのバランスに優れた航空機投資の認知を高めていくことで、より多くの投資家が航空機に投資できるような環境づくりにもつながっていくものと考えています。

 

日本ではまだまだ認知度が低い航空機投資ですが、ゆくゆくは個人の投資にまで浸透していくポテンシャルを持っています。不動産やインフラ投資がJ-REITやインフラファンドとして個人でも投資が可能になったように、近い将来、航空機の上場ファンドが一般的になると予想していますし、そうなるように私たちも努力していきたいと思います。

 

航空機はこの世界にとって重要な役割を担っています。航空機投資の醍醐味は魅力的なリスク・リターンの特性ももちろんありますが、航空機産業にリースを通じて参加することで、社会の進歩や、発展、平和に貢献するという要素も持ち合わせています。

 

本連載を通じて、航空機へ投資するということがどのような意味を持つかということを複数の視点で知っていただき、航空機投資や航空ファイナンス業界へ興味を持つきっかけになることを願っています。

世界経済の発展を牽引してきた「航空産業」の成長

投資の魅力の説明に入る前に、航空産業について少しだけ触れたいと思います。

 

航空産業というと航空会社や空港、航空機といった華やかなイメージが先行しがちではありますが、航空産業は海外旅行だけでなくビジネスや外交、貨物輸送等、国の公共交通機関としてなくてはならないインフラの一つです。

 

加えて、関連産業としてエアライン以外にも空港サービス、整備、旅行会社、機内食、地上輸送、給油、清掃、マイレージにクレジットカードと数多くのサービスが連携して成り立っている一大産業です。

 

あるリサーチでは「航空産業は旅行業と合わせると全世界で5600万人以上が関わっている世界レベルの巨大産業の一つであり、生み出す収益をGDPレベルで比較すると世界第19位の規模になる(※1)」と言われており、世界経済の根幹を担っている重要な産業の一つといえます。

 

※1 Avolon: "Funding the Future" p.3、 October、 2013

 

大げさに聞こえるかもしれませんが、世界経済の発展と航空産業の成長は深く関連しており、航空機が近代の世界経済の発展を牽引してきたといっても過言ではありません。

航空機は最も「速く・安全・経済的」な移動手段

航空機による移動には現実的には代替手段がなく、500㎞(東京-大阪間)を超えたあたりからは航空機での移動が優勢となりますし、さらには海を越えた移動は実質的には航空機しか選択肢がありません。

 

航空券は高いというイメージが強く意外に思われるかもしれませんが、航空機による移動は長距離移動においては実は「最も速く」「最も安全で」「最も経済的な」移動手段です。

 

ITが発達し、テレビ会議やインターネットなどコミュニケーションの手段が多様化しても航空機による移動は現代社会と世界経済になくてはならないものです。むしろITが発達することでグローバル経済がより活発化し、国を超えたビジネスが急激に増加してきたという実感をお持ちの方のほうが多いのではないでしょうか。

 

さらに忘れがちであるのですが、航空機は貨物も運びます。旅客機であれば床下に「ベリー(belly:おなか)」という貨物専用スペースがありますし、貨物専用機も存在しています。

 

商品や貨物をわざわざ空輸するのはもったいないと思われるかもしれませんが、例えば中国から米国(東海岸)までを陸送+船便輸送すると2~3カ月は必要です。スマートフォンや新製品を、製造から数カ月もかけて輸送していたらその間にビジネスチャンスを失ってしまうことは想像に難くありません。スマートフォンなどでは「世界同時発売」は当たり前になってきていますが、これも航空輸送が世界経済を陰で支えている例の一つです。

 

ほかにも普段あまり意識することはないかもしれませんが、季節を通して新鮮な生鮮食品や野菜を食べられることも、離島の人が牛乳を飲めることも、航空機がその物流のまさに一翼を担っているからにほかなりません。

 

経営資源としてよく「ヒト・モノ・カネ」と表現されますが、国を超えて「ヒト・モノ」を輸送する手段として航空機は大きな役割を果たしています。人と物の移動は税収や関税などを通じて政府歳入の重要な源泉となり、各国の経常収支に貢献します。

 

世界経済の成長は、航空輸送の需要増大を促す重要な要素である一方、航空輸送自体も経済成長の重要な源や促進剤でもあり、相互に影響を与え合う関係です。世界への航空輸送ネットワークが増大すれば、市場へのアクセスが改善し、企業間および企業内の繫がりが高まり、そして世界中の資源および資本市場へのアクセスも向上するため、生産性および経済成長を押し上げることができます。

 

国際航空運送協会(IATA)の調査(※2)によると、航空輸送ネットワークの接続性と生産性、さらにはその国の国際競争力との間には強い相関関係があると結論付けられており、各国がこぞって航空産業を保護・育成しているのも頷けます。

 

※2 IATA(Outlook for airline markets and industry performance):1996年から2005年までの国際競争力調査として48カ国対象に調査を実施した結果。

 

したがって、航空輸送は世界経済にとって不可欠な存在であり、富の創造と経済発展において中心的な役割を果たしています。

航空輸送量とGDPのそれぞれの成長に見える相関関係とは?

航空業界は長期的な経済成長に支えられてきましたが、それゆえに航空輸送量の成長と世界の国内総生産(GDP)の成長は切っても切れない関係にあります。実際に、航空輸送量は世界のGDPの成長を超えて増加しており、図表1は国際民間航空機関(ICAO〈※3〉)が作成した世界のGDPと航空輸送量の比較ですが、過去20年、航空旅客輸送量(RPK〈※4〉)・貨物輸送量(FTK〈※5〉)ともに世界のGDPの増加を超えて成長していることがわかります。

 

[図表1]世界のGDPと航空運送量(旅客・貨物)の比較 出所:ICAO
[図表1]世界のGDPと航空運送量(旅客・貨物)の比較
出所:ICAO

 

 

そして、航空機需要は航空運送需要に比例します。つまり世界の航空機の数は世界のGDPの増加と連動して増大してきたといえます。航空機をグローバル資産たらしめている所以はここにあり、各国・地域のローカル経済・地政学の影響を受けづらい特徴(利点)を、図表1からも確認することができるかと思います。

 

同時に、世界のGDPとの連動性は航空機需要の将来予測に対しても大きな強みを与え、航空機の需要は精度の高い長期予測を立てることができる資産であるとみなされています。

 

※3 ICAO:国際民間航空機関(InternationalCivilAviationOrganization)、国際連合経済社会理事会の専門機関の一つで、IATA(International Air Transport Association)とともに世界の航空業界を支援する団体。IATAがエアラインによって組織されているのに対して、ICAOは国連組織の一つという違いがある。

 

※4 RPK(Revenue Passenger Kilometer):有償旅客キロメートル。有償旅客とはチケットを有料で購入した旅客のことで、「有料旅客の数×輸送した距離」を有償旅客キロメートルと定義し、航空旅客運送量を計る単位として広く使われている。例えば、羽田×福岡(約1000㎞)を10人運んだ場合、RPKは1万RPKとなる。数と距離の両方の概念を組み込んだ単位であり。多く運ぶ・長く運ぶを同じ尺度で評価するために使用されている。ちなみに「有償」となっているのは、マイレージなどの「無償」航空券による旅客も実績として使用すると運送実績をエアラインが簡単に操作できてしまうためである。

 

※5 FTK(Freight Ton-Kilometer):貨物トンキロメートル。RTK(Revenue Ton-Kilometer)有償トンキロメートルが使われることも多く、RPKと同様、航空貨物輸送量を計る単位。旅客数の代わりに航空貨物の重さ(トン)と輸送距離を乗じたもの。旅客実績と同様に広く使われているが、貨物の場合は「運送スペース」という制限事項もあるために単純にFTKやRTKだけで安易に評価するのは避けるべきである。FTK(RTK)の弱点として「重たいものを運べば増える」という計算式上の特徴があり、極端な例を挙げると綿のようなものを運べばFTK(RTK)は少なく実績がないように見えるが実際はスペースの関係上それ以上積み込むことができないといったことも起こり得る。FTK(RTK)でエアラインの運送実績を評価してしまうと、水やワイン、鉄などの重たいものを運ぶことを間接的に推奨してしまうので注意が必要である。往々にして、そのような「重たいもの」は重たい割には実入りが少なく、さらにコストもかかるため、利益が出ないといった事態に陥りやすい。

 

相関関係があるからといって、因果関係にあると容易には判断すべきではありませんが、航空機が世界経済に果たす役割を考えれば、世界経済の成長との相互関係性の高さについての抵抗感は少ないと思います。

 

各国・地域の経済および世界経済は引き続き定常的な景気サイクルの影響を受けると見られていますが、長い目で見ると世界が恒久的な景気後退に陥ることは少ないと考えます。ゆえに今後も長期にわたり、航空業界の成長および航空機に対するニーズの増大は続くものと見込まれているのです。

国の経済発展に大きく貢献する航空機

さて、世界経済の成長を担うグローバル資産である航空機ですが、今この瞬間も数え切れないほどの航空機が空を飛んでいます。世界中の航空機の運航状況(※7)はflightradar24(※8)に代表されるようなWebサイトで視覚的に確認することができます(しかもリアルタイムな動きや過去のプレイバックも可能)が、想像を超えた数の航空機が世界中で運航されていることに驚かれることでしょう。

 

なにかと暗い話題が多い昨今ですが、航空機の運航を見ていると世界経済の活力を感じることができます。日本ではなかなか耳にしなくなってしまった『成長』というキーワードですが、世界に目を向けるとまさにこれから発展せんと活力を秘めた国や地域はまだまだ存在しており、航空機はそんな国や地域を繫ぐことで世界経済の発展や人や文化の交流に貢献しているのです。

 

※6 航空機や船舶が航路を進むことは「運航」と表す。一方で、電車やバス、タクシーなどの地上交通機関は「運行」と表す。地上交通は「運行」で、それ以外は「運航」と区別されることも多いが、人工衛星は「運行」なので注意が必要である。

 

※7 flightradar24:https://www.flightradar24.com

 

図表2は日本とその周辺国の昼間の運航状況を表したものです。縦横無尽に航空機が運航されている状況がよくわかりますが、整然と並んだ航空機が作る航路の線がまるで高速道路網のように張り巡らされていることが読み取れると思います。

 

出所:http://flightradar24.com
[図表2]日本とその周辺国運航状況(昼間)
(※)出所:http://flightradar24.com

 

この縮尺だと特に中国本土の航空網の整備状況がよく表わされていますが、もう少し縮尺を小さくすると日本の空でも同じように所狭しと航空機が飛んでいる様子を見て取ることができます。

 

図表3は北米の運航状況ですが、既に夜になっている東海岸から欧州行き深夜便が数多く飛んでいるのがわかります。一方、夕刻になる西海岸では午後最後の便が到着していく様子が見られます。利便性や乗り継ぎのことなどを考えると、やはり午後到着便は人気が低く、東海岸の深夜便の混雑ぶりと比較すると随分とまばらです。

 

出所:http://flightradar24.com
[図表3]北米の運航状況(東海岸:夜、西海岸:昼)
(※)出所:http://flightradar24.com

 

最後に図表4ですが、夜明け前の欧州路線図です。世界各地より午前中に欧州に到着するよう一斉に向かってきている様子は、ある種の感動すら覚えます。

 

出所:http://flightradar24.com
[図表4]欧州の運航状況(夜明け~朝)
(※)出所:http://flightradar24.com

 

このように航空機は世界中の数多くの地点を数多くの人と貨物を乗せて毎日運航しています。さらに就航地は年々増加しており、これからも多くの国と国、都市と都市とが繋がっていくことでしょう。

 

経済の成長の中心は時代とともに先進国から新興国に移ってきており、加えて航空機の技術革新により、これまでは乗り継ぎでなければたどり着けなかった地点を直行便で繫ぐことも可能になっています。その結果、世界各地で航空ネットワークの拡充が進んでおり、航空機の運航網はより一層複雑かつ重厚になっていくと思われます。どちらが鶏でどちらが卵なのかという議論はあるかとは思いますが、公共交通機関として国の経済発展における航空機の果たす役割は非常に大きなものです。

 

中国を例に挙げると、つい10年前までは中国の国内線・国際線ともに限られたものでしたが、急速な経済発展を成し遂げた結果、先程の図で明らかなように驚くほど多くの航空機が中国の国内外を飛び回っています。

 

航空機の運航はヒトとモノの動きを表し、航空機がつくるネットワークは都市と都市との繫がりの強さを示します。そのような視点で航空機や航路(航空ネットワーク)を見ていただくと新しい発見があると思います。

 

 

澁田 優一

マーキュリアインベストメント

 


野崎 哲也

旭アビエーション

マーキュリアインベストメント 

PwCコンサルティング、IBMビジネスコンサルティングサービス、KPMG FASにて戦略コンサルティング・M&Aサービスに従事した後、2008年に全日空に入社。2013年には、ANAホールディングスとバニラエアの財務と経営企画を兼務。経営計画の策定や、為替・燃油ヘッジ方針/航空機の選定戦略に携わる。2015年よりマーキュリアインベストメントに参画。

株式会社マーキュリアインベストメント:http://www.mercuria.jp/

著者紹介

旭アビエーション 

伊藤忠商事に1989年に入社。宇宙航空機部を経て、航空機オペレーショングリース子会社である米国伊藤忠エアリーズにてジェネラルマネージャーに就任。2002年に三菱商事に入社し、米国での航空機リース会社立ち上げに従事。ジェネラルマネージャーとして発展を主導、2社で合計約180機の航空機のリースおよび売却の経験を持つ。2017年に旭アビエーションを設立、グローバルに航空機リースマネジメント、仲介、テクニカル/コマーシャル・コンサルティングサービスを提供している。

著者紹介

連載無敵のグローバル資産 「航空機投資」完全ガイド

無敵のグローバル資産 「航空機投資」完全ガイド

無敵のグローバル資産 「航空機投資」完全ガイド

航空機投資研究会、澁田 優一、野崎 哲也

幻冬舎メディアコンサルティング

航空機市場が世界経済とともに成長を続ける理由や航空機投資はエアライン企業への株式投資と何が違うのか、他の現物投資と比べた場合の圧倒的なメリット、どの機体を選んで投資すべきなのかなどをわかりやすく解説。

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