税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
預貯金に関する質問では絶対に「嘘をつかない」
税務調査官は、前回までに紹介した6つの事柄(関連リンク『税務調査官による「ヒアリング調査」の内容と上手な対応法』、『税務調査で故人の「趣味」などを聞かれた場合の対処法』参照)に加え、以下のような質問もしてきます。
⑦銀行・証券会社などとの付き合いや、担当者の自宅への訪問
⑧遠方の預金口座がある場合、口座開設の理由について
⑨死亡原因や病歴、入院時の本人の状況について
⑩入院中のお金の管理は誰が行っていたか
⑪生前の贈与の有無について
⑫特殊関係人の有無
今回は、⑦から⑨の質問について具体的に見ていきましょう。
⑦銀行・証券会社などとの付き合いや、担当者の自宅への訪問
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ある程度の資産を持っている人は、金融機関にとっては大事なお客さまです。当然、相続税の対象になるほどの財産を遺した人であれば、金融機関の人との付き合いがあったものと調査官は考え、それについて質問をしてきます。これについても、前回紹介した⑥と同様に、実際に会ったことがなければ「私は知りません」でかまいません。
たとえ、面識があったとしても「お付き合いはあったかもしれませんが、金融機関の人に会っていたのは故人だけです。私は一度も会ったこともないし対応もしていません」といわれてしまえば、調査官は、それ以上の追及はできません。
このとき、ついうっかりと「ええ、よく来ていましたよ」などと事実と異なる安易な答え方をしてしまうと、調査官に突っ込みを入れる材料を与えることになるということです。
⑧遠方の預金口座がある場合、口座開設の理由について
サラリーマンで転勤が多かった人によく見られるケースです。給与振込や光熱費などの引き落としを便利にするために、赴任先の近くで口座を開設して、そのままになっているということがままあるのです。ただ解約を忘れただけで他意はなくても、税務調査上は預金隠しにつながるものになるので、必ずマークされます。事前にきちんと答えられるよう確認しておきましょう。
また、身内に金融機関に勤めている人がいて、その人の成績に貢献するために、複数の口座を開設していたというケースもあります。相続人である娘さんの夫が銀行員で転勤を繰り返し、成績アップのために赴任先で複数の口座を開設していた、などといったことも考えられるのです。
申告書を作る際には、私のほうでもいろいろと質問をし、調べられる限りは調べるのですが、相続人自身が正直に話してもらわないことには限界があります。調査当日に初めて聞かされたのでは、こちらも手の打ちようがありません。そして、家族にとっても後味の悪い思いをしてしまいます。
預貯金については、どんなに隠そうとしても絶対にバレてしまいます。くれぐれも隠し立てはしないようにしてください。
お金の管理は「本人の指示に従っていた」ことを強調
⑨死亡原因や病歴、入院時の本人の状況について
亡くなる直前のお金を誰が管理していたかということを、調査官は知りたがります。闘病期間中に家族が本人名義の預金を引き出すのはよくあることですが、これは「本人の意思によるもの」であることが必要です。
本人の意思で引き出して使ったというのであれば何ら問題はありませんが、本人の意思そっちのけで家族が勝手に引き出して移し替えたり勝手に使ったということになると、いろいろな問題につながります。ですからこの手の質問に対しては、あくまでも「本人の指示に従って家族が動いていた」ということを強調して答えるようにしましょう。
意識不明のこん睡状態に陥っていたら、「本人の意思で」と押し通すのは無理ですが、そうでなければ「体は自由にならなかったけど、意識はちゃんとありました」「まだらボケの状態ではありましたが、お金のことになると人任せにしたくなかったみたいです」「本当は本人が銀行に行きたがっていたんですが、そうもいかずに家族が代理で行って、お金を引き出してきました」と事実を基に答えるようにします。
税務署が主治医にまで病状を確認することはよほどのことがなければありません。あくまでも亡くなった人の指示であったという事実を伝えることが大切です。
「奥さん、長い間大変でしたね。亡くなる前は特に大変だったでしょう」と、ねぎらいの言葉を調査官からかけられて、つい、「そうなんです。亡くなる半年も前からすっかりボケちゃって、最後は何もわからなくなっていました」などいった会話は要注意です。ベテランの調査官はさぐりを入れてくるのが上手ですから、気を抜かないようにしてください。
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