引き続き、税務調査の「ヒアリング調査」で具体的に何を聞かれるのかを見ていきましょう。今回は、入院中のお金の管理、生前の贈与の有無、特殊関係人の有無について聞かれた場合の対処法について紹介します。

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贈与に関する質問で「へそくり」という言葉はNG

税務調査の「ヒアリング調査」で、具体的に聞かれる内容を12パターンに分け、その対処法について紹介しています(①〜⑨までは、関連リンク『税務調査官による「ヒアリング調査」の内容と上手な対応法』、『税務調査で故人の「趣味」などを聞かれた場合の対処法』『税務調査官に「預貯金」関連の質問をされたときの対処法』参照)。

 

⑩入院中のお金の管理は誰が行っていたか

⑨と同様、この質問にもはっきりと「故人が自分で管理していました」と答えられるとよいでしょう。本人以外にお金を動かしている人がいると、そのお金は相続財産として、申告漏れという問題につながる可能性があります。

 

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たとえ闘病中であったとしても、多くの人は病気がかなり悪化するまでは「お金のほうは大丈夫か」などと口にすることが多いものです。そのような事実があった場合には「お金のことは本人もかなり気にしていて、病床から家族に指示をしていました」と答えられるといいかもしれません。

 

⑪生前の贈与の有無について

調査官は事前に、故人の預貯金の記録はもちろん、家族の預貯金の残高まで全部調べてきています。そして亡くなった人の配偶者や子ども名義の預貯金があった場合「名義預金では?」という疑いをかけます。

 

名義預金は相続税の課税対象になりますが、そのことを知らず、故人以外の名義の預金は申告不要と思い込んで申告していないことがあり、その分がそっくり申告漏れになっているケースがままあります。

 

ただし、故人からもらったお金が「贈与」であれば、相続財産とはなりません。贈与税には毎年一定金額の非課税枠がありますので、金額によっては贈与税もかかりません。ですから、そのようなお金の動きがある場合において、「生前に故人様から贈与を受けたことはありますか?」という質問に対しては、堂々と「あります」と答えるよう、お願いしています。

 

決して「内緒でこっそり作ったへそくり」という言葉を口にしてはいけません。へそくりの場合、贈与とはみなされず、お金の出どころは夫なので、夫の相続財産ということになってしまうのです。

 

贈与とは「あげる側」と「もらう側」の意思の疎通があった上で成り立つもので、年間110万円までは課税されません。「年間110万円を超える金額ではないので、贈与税の申告はしていませんが、毎年誕生日のプレゼントとして、現金をもらっていました。このお金は、それがたまった結果できあがったものです」と答えていただければ何も問題ありません。

 

間違っても「いいえ、贈与してもらったことはありません」と言い切ってしまわないように注意してください。こう答えてしまうと、午後の調査で、通帳や有価証券類などの現物の中に、申告していない家族名義のものがごっそり出てきたときに、非常に困ったことになります。調査官は「贈与してもらっていないといっていたじゃないですか」と突っ込んでくることでしょう。

 

この段になって、「忘れていました。これは贈与してもらったものです」と前言を翻すわけにはいきません。もちろん家族名義の預貯金に移ったお金などがない場合は「贈与の事実はありません」と、ありのままお話ししてかまいません。

愛人の存在は、税務調査に限っていえば有利に働く!?

⑫特殊関係人の有無

動きの読めない引き出し金の行き先として、ままあるのが特殊関係人です。「特殊関係人」というと響きがかたいですが、平たくいうと「愛人」です。

 

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調査官の口から「亡くなった方には、ご家族以外に生活の面倒を見ていた人はいましたか?」という言葉が出てきたら、すなわち「愛人はいましたか?」ということと考えて差し支えないでしょう。

 

もしそういう人が存在したとなると、動きのわからないお金はそこに行っていたのかな、という話になりますから、税務調査に限っていえば有利に働くこともあります。

 

くり返しになりますが、こと相続に関しては、遊び人でハチャメチャな人のほうが、税務署に対してお金の説明はしやすいものです。遊び人だった人には、お酒・ギャンブル・女性と、お金をつぎ込む先がたくさんあります。お金がごそっと下ろされていたとしても「ああ、そういうことか」となるので、行き先のわからないお金の説明がしやすくなります。

 

健全で真面目、品行方正となると、「そんなきちんとした人がこんなにたくさんのお金を突然下ろすなんて、いったいどこに使ったんでしょうね?」ということになり、説明に困るのです。

 

 

服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

 

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本連載に記載のされているデータおよび各種制度の情報はいずれも、出典元である服部誠著『相続税の税務調査を完璧に切り抜ける方法[改訂版]』(幻冬舎メディアコンサルティング、2017年)の執筆時点のものであり、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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