今週(9/18〜9/23)の国際マーケット展望
・米国経済指標…7月と比較すると伸び率は小幅だったものの、米国経済の堅調さが続いていることを示す数字が出ており、9月には利上げが実施されると予想。
・米中貿易摩擦…トランプ政権は17日、中国に対する2,000億ドルの追加関税を今月24日より実施すると発表。9月下旬に再開の噂がある米中貿易協議に注目が集まる。
・トルコリラ…トルコ中銀が大幅利上げを行い、一時値を戻した。
・今週の注目ポイント…引き続き、好調な米経済指標と貿易摩擦・通貨危機の不安要素がもみ合い、株式はじり高、為替は狭いレンジ内での動きを予想。
米国経済指標…物価は高止まり、インフレ目標は達成か
先週発表された米国経済指標だが、8月米小売売上高は前月比0.1%増と、6カ月ぶりに小幅な上昇幅にとどまった。ただ7月の数字は前回発表の0.5%増から0.7%増へと上方改定されており、第3四半期も米国消費が底堅かったことを示したものと理解された。
インフレ指標では、コアCPIは前月比0.1%上昇にとどまった。市場予想の0.2%上昇、前月まで3カ月連続0.2%上昇は下回った形となった。前年同月比では2.2%上昇と、7月の2.4%上昇からは減速した。 この8月CPIはやや落ち着いた数字に見えるが、労働市場の引き締まりと賃金の伸びが加速するなか、好調な経済を背景に物価上昇圧力は高止まっているようである。また米中貿易摩擦が長期化するなかで、米中間で関税を掛け合う展開となってきており、関税は価格転嫁を通じて物価を高止まりさせると予想される。
注目すべきは、米連邦準備理事会(FRB)も物価の目安として注意を払っている個人消費支出(PCE)物価のコア指数が、7月に前年比2.0%上昇したことだろう。同指数が、2.0%を記録したのは今年で3回目だが、これはFRBのインフレターゲット2.0%が実現されたと判断できる水準であることを意味する。米国経済の堅調ぶりは、変わらず続いており、FRBによる利上げを支持する要因である。筆者は9月FOMCでの利上げは間違いなく実施されると考えている。
米中貿易摩擦…市場は関税発動よりも協議の行方に注目
トランプ米政権は9月17日、米通商法301条に基づき、中国による知的財産権侵害に対抗した制裁関税の第3弾を今月24日に発動すると発表した。中国からの輸入品に総額2,000億ドル(約22兆円)、5,745品目に対し10%の追加関税を課すという内容である。
米中両国は、双方からの500億ドル相当の輸入品に25%の追加関税を課す措置を既に実施しており、米中貿易摩擦は次の段階へ進むことになる。ちなみに、2,000億ドルという規模は、米国における中国からの年間輸入額の約半分にあたる。トランプ大統領は声明で、中国が報復すればさらに2,670億ドル(つまり今回制裁対象となっていないすべての輸入品)を対象に加えると述べて、中国に対米貿易黒字の削減を要求した。
一方の中国は、今回の米国による制裁への報復措置として、600億ドル相当の米国製品に5~25%の追加関税を課す方針を既に決定している。淡々と報復措置は実施されることになろう。市場も、ここまでの関税発動は既に織り込んでいると思われる。9月下旬にも再開が期待されている米中貿易協議がひとつのヤマ場になるだろう。
貿易摩擦に関連しては、日本の対米黒字にもフォーカスがあたるとの懸念が浮上している。米中間に続き、日米間でも貿易黒字削減について協議が行われるとの観測もあり、貿易摩擦問題は、長引くテーマとなる可能性が高くなってきた。
トルコ中銀が大幅利上げ…通貨危機への懸念は弱まるか
トルコ関連では、先週末に、トルコ中銀が予想をいい意味で裏切って大幅利上げを実施したことにより、トルコリラが一時値を戻した。トルコリラ・ショックにより、他の新興国への通貨安圧力が増幅することが懸念されているが、今回の盛り返しで懸念が緩やかになるかが注目される。
引き続き、米国経済の堅調さが株式市場や米ドルの支持要因となる一方で、貿易摩擦や一部新興国通貨の足元のふらつきがリスク回避要因という市場の図式は変化がない。このなかで、株式はじり高、為替は狭いレンジ内での動きを予想する。
長谷川 建一
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO