すっかり浸透した「ふるさと納税制度」だが・・・
ふるさと納税。最近では、この言葉を知らない方は少ないのではないでしょうか。
実質2,000円の負担で、地域の特産品や観光体験の機会等を手にすることができるということで話題が広がり、ふるさと納税を専門に取り扱うポータルサイトは増え、ガイドブックや雑誌の特集で目にする機会もずいぶん多くなりました。
このコラムをお読みの方の中にも「ふるさと納税で、おいしい牛肉が届いた! カニが届いた!」などという経験をお持ちの方がいるでしょう。一個人の経済合理性から考えたら、とても有利だといえます。
しかしながら、日本最大級のふるさと納税総合サイト『ふるさとチョイス』(https://www.furusato-tax.jp/)を企画・運営する、株式会社トラストバンク(本社:東京都目黒区、代表取締役:須永珠代)が2017年11月に行った調査によれば、76.9%の方が「ふるさと納税を知っているが、未経験」と回答、30%以上の方が「ふるさと納税を知っているが、制度の趣旨を知らない」と回答したそうです。
話題は広がりニュースにも頻繁に取り上げられながらも、その制度が正しく理解されていないふるさと納税。今回は、そんなふるさと納税について解説していきましょう。
他県や大手メーカーで作られた返礼品を送る自治体も
ふるさと納税は、第1次安倍政権が導入を打ち出し、2008年度に実施されたものです。
総務省自治税務局市町村税課が2018年7月に発表した「ふるさと納税に関する現況調査結果」によれば、ふるさと納税の受入額は、2012年度までは概ね100億円前後で推移していたようです。
しかし、自治体が豪華な返礼品を競うようになり始めた2013年度には145.6億円、翌2014年度には388.5億円と増加し、その後2015年度は1,652.9億円、2016年度に2,844.1億円と急激に増加。直近の2017年度実績ではその規模を3,653.2億円(対前年度比:約1.28倍)にまで拡大しました。
受入件数も、2013年度には42.7万件だったものが、2014年度は191.3万件、2017年度には1,730.2万件(対前年度比:約1.36倍)となるなど、金額と件数が同じような成長カーブを描いて伸びています。
この急成長の要因として、2013年度を起点とした増加は、インターネット上で簡単に返礼品を選ぶことができるようになった「ふるさと納税ポータルサイト」の登場にあります。
さらに、2015年度以降の増加は、第2次安倍政権が2015年度の税制改正で、減税枠の増加と手続きの簡便化を図ったことなどが大きく影響していると思われます。
[図表1]ふるさと納税の受入額及び受入件数(全国計)の推移
この実績を都道府県別に見ると、受入額が最も多いのは北海道で約365億円、以下佐賀県の約315億円、宮崎県の約249億円、山形県の約226億円と続きます。
逆に受入額が最も少ないのは、富山県で約4.4億円、以下徳島県の約8.3億円、京都府の約13.4億円、広島県の約14.6億円、奈良県の約14.8億円となっています。
下位のグループは、いずれもパッと特産品や観光名所などが思いつくところが並んでおり、「地域の特産品や観光体験を返礼品として贈ることで地方創生につなげる」というイメージがあるふるさと納税制度の結果としては、少々意外な気もします。
市区町村別の受入額1位は大阪府の泉佐野市で、一市で約135億円ものふるさと納税を集めています。受入額2位は、宮崎県の都農町の約79億円、3位は同じく宮崎県の都城市で約75億円、4位は佐賀県のみやき町、5位は同じく佐賀県の上峰町と、九州勢が後に続きます。
1位の泉佐野市の受入額100億円超えは全国の自治体でも初めてのことで、しかも2016年度の約35億円から、一気に約100億円も増やしています。この大躍進には驚きを隠せません。
これに対して、泉佐野市の千代松大耕市長は、「泉佐野市は財政破綻寸前だったので、ふるさと納税に積極的に取り組んできた結果だ」とNHKの取材にコメントしていますが、その返礼品には、特産の「泉州タオル」や「季節の泉州野菜セット」だけでなく、他県や大手メーカーで作られたものも数多く(なんとその数1100種類超!)並ぶため、泉佐野市のこの姿勢には疑問の声も数多く上がっています。
[図表2]ふるさと納税の受入額及び受入件数(受入額の多い20団体)