ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットに代表される世界の富裕層の多くは、自らの資産を活用して「財団」等を立ち上げ、社会問題の解決に挑むなど、積極的な社会貢献活動を行っています。日本ではまだあまり浸透していない社会貢献活動の可能性について、ファンドレイジングアドバイザーの肩書きを持つ宮本聡氏が解説します。今回は、「ふるさと納税」の流れと仕組みについて、詳しく見ていきましょう。

たった2,000円の負担で、寄付額が全額控除される!?

「ふるさと納税」は、ふるさと“納税”という言葉によって多少誤解されているところがあります。

 

「納税なのか? 寄附なのか?」などと議論されることがありますが、正しくは、都道府県や市区町村などの自治体への「寄附」のことをいいます。

 

自分の選んだ自治体に寄附(ふるさと納税)を行った場合に、寄附額のうち2,000円を越える部分が、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度となっており、通常の寄附金控除(関連リンク『NPO法人への寄付で受けられる「税制上の3つの優遇措置』参照)で控除しきれない分は、住民税所得割額の2割を上限として、全額控除することができます。

 

出所:ふるさと納税ポータルサイト(総務省)
[図表1]ふるさと納税とは? 出所:ふるさと納税ポータルサイト(総務省)

 

単純に例示すると、住民税を年間50万円払っている方が10万円を自治体に寄附(ふるさと納税)した場合、2,000円を超える9.8万円が住民税から控除されます。

※2,000円部分は自己負担となります。

 

ふるさと納税を行い、所得税・住民税から控除を受けるためには、原則として確定申告を行う必要があります。

 

なお、本来確定申告を行う必要のない給与所得者等は、確定申告を行わなくてもふるさと納税の寄附金控除を受けられる仕組み「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が2015年4月から始まりましたので、利便性が増しています。

 

この特例の対象となるのは、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内であることが条件で、ふるさと納税を行う際には、各ふるさと納税先の自治体に、特例の適用に関する申請書を提出する必要があります。

 

出所:ふるさと納税ポータルサイト(総務省)
[図表2]ふるさと納税による寄附金控除の申告  出所:ふるさと納税ポータルサイト(総務省)

 

ふるさと納税ポータルサイト(総務省)より、筆者作成
[図表3]ふるさと納税の流れ  ふるさと納税ポータルサイト(総務省)より、筆者作成

 

確定申告を行うと、前述の「控除額の計算」に沿って所得税と住民税の控除額がそれぞれ決まり、所得税分はその年の所得税から控除(還付)され、住民税分は翌年度の住民税から控除(住民税の減額)されます。

※全額が「還付」されるわけではありません。

 

前述しましたが、この控除額は2015年度に2倍に増額されており、政府がさらにこの制度を促進させようとしている思惑がうかがえます。

 

出所:ふるさと納税ポータルサイト(総務省)
[図表4]税金の控除額の計算  出所:ふるさと納税ポータルサイト(総務省)

 

お得な返礼品や寄附金控除に目が行きがちですが、ふるさと納税の大きな特徴としては、

 

「寄附したい自治体を自分で選ぶことができる」

「寄附の使い道を選択できる場合がある」

 

ということが挙げられます。これは言い換えると、2割上限という制限がありながらも、「税金の使い途を個人が選ぶことができる」という制度だということです。

 

ふるさと納税市場が若干歪みながら成長していることは否めませんが、「税」というものに比較的関心の低い日本において、公的サービスのあり方を考える機会の提供になるかもしれないという点においては、この後の成長に大きな期待感のある制度だと言えるのではないでしょうか。

 

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納税者の意識向上や地域創生に役立つ「ふるさと納税」

ふるさと納税の制度は、

 

「多くの人が地方のふるさとで生まれ、その自治体から医療や教育等様々な住民サービスを受けて育ち、やがて進学や就職を機に生活の場を都会に移し、そこで納税した結果、都会の自治体は税収を得ますが、自分が生まれ育った故郷の自治体には税収が入りません」

 

「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた『ふるさと』に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」

(出典:「ふるさと納税研究会」報告書)

 

そんな問題提起から始まり、数多くの議論や検討を経て生まれた制度です。簡単にいうと、「本籍地への納税」の考え方が起点です。

 

出所:ふるさと納税ポータルサイト(総務省)
[図表5]ふるさと納税制度が生まれたきっかけ  出所:ふるさと納税ポータルサイト(総務省)

 

総務省のふるさと納税ポータルによれば、ふるさと納税は「税制を通じてふるさとへ貢献する仕組み」ができないかという想いのもと導入されたもので、3つの大きな意義があるとされています。

 

出所:ふるさと納税ポータルサイト(総務省)
[図表6]ふるさと納税の三つの大きな意義  出所:ふるさと納税ポータルサイト(総務省)

 

日本の多くの給与所得者は年末調整で納税手続きが終わり、自分で確定申告書を作成・提出する方は多くありません。そのため、実際に自分がいくら税金を納めているのかを、具体的に認識していない方も多くいるのではないでしょうか。

 

その結果、税金の使われ方にも関心が低くなり、投票などの政治参加にも無関心になるという悪循環が生まれていると感じています。

 

そんななか、一部といえども納税先や使い道を自分で選択し、税金の控除金額の上限を試算するきっかけともなり得るふるさと納税の第一の意義は、たいへん分かりやすいものだと思います。

 

そして、生まれ故郷やお世話になった地域などの「心のふるさと」の力になることができるという第二の意義には、大いに共感できます。

 

現在の日本では都市部への人口集中が進んでいますが、多くの人々は地方出身者、あるいは地方出身者の子どもや孫であり、都市生活者にとっても地方との縁は深いものです。さらに、地方から都市部への食料供給や自然環境の維持などの面で、都市生活者は直接的な恩恵も受けています。

 

ふるさと納税を通じて「心のふるさと」に感謝する契機となるこの制度は、人口減少や高齢化による財源不足で、地域の課題解決に悩む地方の活力につながるものとして期待できます。

 

そして第三の意義として、健全な形で自治体間の競争、例えば寄附者に対する効果的な情報提供やコミュニケーションの競争が進むことがあります。

 

識者の中には、「ふるさと納税の意義は、自治体の資金調達にマーケティングの視点を持ち込んだこと。地域や特産品をアピールするだけでなく、交流人口や移住者を増やすためどうすればいいかを考える自治体が増えている」などとコメントする方もいます。

 

実際に各自治体がこのふるさと納税の3つの理念に基づき、創意工夫のもとにこの制度が運用されたならば、納税者の意識向上や地域創生といった好循環が生み出されることが期待できるのです。

 

 

 

宮本 聡

営業コンサルタント

ファンドレイジングアドバイザー

(株)シティインデックス海外不動産事業マネージングディレクター

認定特定非営利活動法人ACE 理事

公益財団法人 ふじのくに未来財団 理事

株式会社リビルド 社会貢献部長

一般財団法人 共益投資基金JAPAN 理事

 

 

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