市場の価格に欠かせない「人気」という要素
【ルール 20】
1株あたり純資産に食い込んだら注意
純資産、自己資本、株主資本・・・いずれも「会社の実質的な財産」という意味で、専門家も「3つのちがいは、あまり気にしなくても問題ない」「実際、2006年に会社法が改正されるまで、これら3つにちがいはなかった」と説明する。ここでも、3者のちがいには触れない。
純資産とは、要するに、その会社がいま解散したら、いくらの価値があるかを表している。その純資産を、発行済株式数で割ったものが「1株あたり純資産」であり、解散価値とも呼ばれるものだ。
会社というのは継続的に事業を行っていくわけだから、解散することを前提に価値を計算することに疑問は生じるが、株価の人気量を計るために便利な指標である。
通常、株価というものは、必ず人気を含んでいる。計算上の価値に、将来性だけでなく知名度など人気が上乗せされているのである。企業の成長の期待や、実態に関係なく人気でさらに上昇するという期待も人気である(もちろん、株式市場そのものにも人気が含まれている)。
株価変動の大きな要因が人気であることは、会社の内容に変化がないのに1日で10%、20%といった変動があることで証明され、議論の余地はない。実質的価値がゼロのオプションが、一定の価格で取引されるのも、人気の上乗せと考えることができる。つまり、
株価=解散価値+人気
であり、
1株あたり純資産に食い込む=人気がゼロになった=裸値(はだかね)になった
と捉えられるのである。
市場の価格に人気という要素がある以上、割高・割安を正しく計算しようとすること自体にムリがあり、1株あたり純資産も一面的な尺度であることはいうまでもない。
しかし、4~5年下げ、3段下げ完了の低位株とは、まさに裸値、あるいはそれに近い銘柄であり、チャート分析を主体にほかの判断要素を加えることで、有効な判断が可能になるのである。
低位に甘んじている銘柄には倒産の危険もあるが…
【ルール 21】
前期が赤字で、今期が経常または税引きトントンの銘柄に注意
【ルール 22】
5期連続無配および債務超過はチャートがよくても避ける。
また、その他の財務指標(有利子負債比率、株主資本比率)を見て判断する
チャートの形がよくても、内容に大きな不安がある場合は、サイアクのリスクを避けなくてはならない。安定的な配当を重視する日本で5期連続無配は厳しい。また、債務が総資産よりも大きい債務超過というのも、かなり厳しい状況である。
低位に甘んじている銘柄には倒産の危険もある。まっとうな手法として、安全を重視するのがFAI投資法なのだ。
赤字や無配の会社は、一般的に避けられるものである。機関投資家などは、ほかにどんな要素があっても投資対象として選べない。
もちろん、FAIでも倒産のリスクには気を配っているが、赤字、無配というだけで対象外とすることはない。安値にある低位株では、よくあることだからだ。
現時点の業績はわるいが倒産の心配はなく、これからよくなる─大きな株価上昇が見込める、と考えるのは自然だ。
まして赤字の場合、前述した機関投資家の都合などから、実態以上に売られている(評価が低い)ものである。上昇に転じるところをつかまえれば“おいしい”のだ。
赤字の会社が、月足チャートでは安値から上げの兆しが感じられ、なおかつ、経常または税引きの利益がトントン予想なら要注意となるわけである。しかし、第8回で解説したように、予想を安易に信じてはいけない。
とくに赤字の会社なら、見込みが薄くても「今期は一応トントンの予定です」とアナウンスするのは、ある意味、自然なことである。