PBRを「有効な株価指標」として注目する理由
【ルール 17】
経常利益予想が30%以上増加だったら注意
FAIでは経常利益に注目する。経常は「けいじょう」だが、「計上」と区別するため「けいつね」と読むことが多い。
株式投資は、「今」ではなく「これからどうなるか」が問題だから、まだ来ない将来を考える。だから予想の数字を見る。ところが予想は、その会社自身が出す数字だから、控えめに数字を出すところもある一方で、どうしても努力目標的な数字、つまり楽観的になりがちである。
「会社四季報」などで一時期のデータを“断面的”に見ても絶対に気がつかないが、時間の経過の中で予想が「上方修正」されたり「下方修正」された経緯まで見ると、いろいろなことがわかる。
「この会社は楽観的な予想を出すことが多い」とか、「抑えめな数字を出す傾向がある」といったことも読み取れるのだ。
しかし、多くの銘柄を対象にすることから、会社ごとに深い考察をしているわけにもいかない。だから、経常利益のわずかな増加予想は無視する。30%以上増益の予想が出て、はじめて注意するのである。
【ルール 18】
1株あたり純資産の増加は買い。3期連続増加は絶好。ただし、3連続陽線などで上げていれば売り
1株あたり純資産と株価が同じ場合、PBR(株価純資産倍率)は「1.0倍」である。PBRが大きいほど株価は割高、逆に小さいほど割安といえる。
FAIでは、PER(株価収益率)はあまり役に立たないと考えているが、PBRは唯一有効な株価指標として注目している。もちろん、これだけで銘柄を選択することはなく、いつでも月足を中心に総合的な判断をするわけだが、その中でPBRを重要視している。
さて、この1株あたり純資産、やたらと大きな変化をみせるものではないが、低位の銘柄では大きく変化する例は少なくない。業績が低迷したあと著しく回復した結果、1株あたり純資産の増加率が顕著になる場合は買い、それが3期続く状況はさらによい、ということだ。
「ただし、ここで3連続陽線などで上げていれば売り」というのは、株価の先見性によって、すでに一定の値上がりをみせていたら、追いかけて買ってはならない、という意味である。
株価は「これからどうなるのか」という先見性が現れる
【ルール 19】
人員整理および資産売却は買い
人員整理は通常、後ろ向きの対応として悪材料である。だが、業績が低迷し、株価が安値にある企業が人員整理や資産の売却をしたら、これからよくなるための一手と、プラスに評価できる場合が多い。
株価を観察する基本としては、
●高値での好材料は売り
●安値での悪材料は買い
である。株価は、総合的な“人気”で動く。だから、内容と株価は目に見えて連動しないのが原則なのだ。
いささか古い話だが、筆者が例としてよく出すのは、野村證券株のバブル期の天井である。高値5,990円をつけたのは、バブルの上げ相場の途中、1987年4月20日である。そして、「株価が永遠に上げ続けるのでは」という雰囲気だった1989年の月間終値平均は3,500円を下回る水準。1990年は年初から一転、市場全体が下向きになったのだが、その1990年9月には1,320円の安値をつけている。
株価には先見性がある。「今どうなのか」ではなく、「これからどうなるのか」が株価として現れる。市場参加者は、他人より少しでも早く動きをつかんで儲けようとするのだから当然だ。
前に「典型=例外」と述べたが、野村證券の例は、これこそ典型といいたくなる。
安値でも同じことだ。これもバブルのころの話だが、1986年に石川島播磨重工業(現IHI)が無配転落したが、その直後から大きく株価が上がっている。1987年に東芝機械がココム(対共産圏輸出規制)違反で騒がれたが、当時400円前後で底練りしていた同社の株価は、ピクリとも下がらなかった。