今回は、クリニック開業を成功に導く宣伝術について見ていきます。※本連載は、中内眼科クリニック・院長の中内一揚氏の著書、『これから開業する君へ』(兵田印刷工芸株式会社)の中から一部を抜粋し、クリニック開業の1年前に始めておくべきことをご紹介します。

大勢の目に触れる「駅広告」は、最も効果が大きい

医院の駅看板はどこに出すのか? これも結構重要な案件です。

 

もちろん、最寄の駅には1枚は出さないといけません。また、駅から近いのであれば、その駅の直近の出口付近にも案内看板を出すほうがベターです。値段は駅の乗降人数によって変わります。通常の大きさであれば年間50~60万円程度でしょう。また、ポスターサイズのものであれば、30万円くらいです。総額年間100万円くらいは広告費を使ったほうが、なんとなく安心感があります。

 

あとは電柱広告、これは目立ちませんが、直近の看板が空いていると、他の医院に自分の直近の看板を取られる可能性があるので、空いていたら出したほうが賢明です。電柱広告は比較的安く、1本年間2~3万円です。

 

他にもバス広告(車体、車内アナウンス)とか、役所の柱もしくはモニター広告、郵便局の切手袋広告などいろいろありますが、一番効果が大きいのはやはり大勢の人が目にする駅広告です。

 

今の時代は、患者さんは駅看板を見て、そのあとホームページをスマートフォンで調べて、それがまともだったら来院するという流れになっています。なので、どちらかのみというのでは、患者さんが選んでくれないということになります。

 

しかし、注意も必要です。広告できる内容が限られていて、思い通りには宣伝できないのです。例えば、巷で良く見る「大勢が認めた」とか「評判の名医」などと治療効果を煽るような文句は使えません。

 

身近な例では、人間ドックのような検診を単科で行うとして、「眼ドック、皮膚ドック、肺ドック」とか、そういう言葉を作り出して宣伝したいと思っても、世間に認知されていないということで、認められないのです。まず広告代理店が却下してきます。無理やり出しても是正勧告が入り、また作り直さないといけないので、忠告にはおとなしく従って安全なラインを守ったほうが良いです。

 

あと専門医を持っている先生は、○○専門医と書くことができますが、その認定学会の正式名称を書かないといけません(スペースの無駄使い)。さらに自費診療も、学会で認められているようなものであれば広告できますが、その場合は、値段をきっちりと示さないといけない決まりになっています。

 

私は、3カ所に看板を出していますが、実は一番もめたのは地図でした。今の時代、スマホ付随の地図ソフトが優秀で、画面を指先で廻してみたら立体表示される時代です。長年掲示する駅看板に、あまりに簡素な地図では勿体ないと思ったのです。広告屋さんに口で説明してもなかなかわかってもらえず、自分で立体的な地図を書いてFAXで送って、上手くいったという経緯もありました。何にでも熱意が必要です。

ホームページ開設は「運営会社選び」が重要

非常に重要な決定事項となります。ホームページの雰囲気で、患者層が変わるといっても間違いではないです。格好いいページよりも、情報がオープンにされている見やすいホームページを作るのが良いでしょう。

 

しかし、何事も経験しないとわかりません。まず最初は、簡易版として無料のページを作ってみるのが良いと思います。世の中には無料のホームページ配布サイトがあります。しかし、気をつけないといけないのは、無料のふりをして、結局は月に5000円くらいの管理費を取る会社もあるということです。

 

全く無料(オプションをつけると有料)の会社で優れた会社にはWIXというのがあります。ここのサイトで、ホームページを作成してみるとわかるのですが、学会発表などでパワーポイントを作成したことのある先生であれば、2、3時間あれば一通り作れてしまいます。医院外観・内観の写真や、従事医師の写真、医院案内の目印(大きな看板など)が必要ですので、事前にデジカメやスマホなどで撮影しておきます。

 

公開・非公開も自分で決められますが、例え公開しても、最初は思ったようには出てきません。検索しても、10ページくらい探さないと出てこないことがほとんどです。自分の作ったホームページのURLを入れて、初めて存在が確認されるレベルなので、この経験をしておいたほうが良いでしょう。

 

実際に開院していれば、2、3カ月ですこし上位には来るようになります(医院の名前にもよります。良くある名前だといつまでたっても上がってきません)。これを踏み台にして、実際のホームページを作成するときの情報には何がいるのか、ということを体験してください。私の場合は、継承する旧医院のホームページを作ってみましたが、みなさんも迷惑にならない範囲で、サークル活動や自分の趣味などの紹介をするページを作ってみてはいかがでしょう。

 

実際のホームページで必要になるのは、簡易版にプラスして、医院の紹介、理念、院長の顔写真、扱っている疾患とその解説、診療内容、検査機器の写真などは最低限度。自費診療をするのであれば、その内容と値段についても必要です。ホームページをきちんとキャッチ―に作っておけば、時には新聞社やTV局から取材が申し込まれることもあります。

 

私の場合は、最初に電子カルテディーラーの友人を紹介してもらったのですが、私の考えているページ数と、その方の力量が合わなかったので、お断りしました。結局、他院のホームページも作成している会社で、かつ知り合いのドクターが運営されている会社を選ばせてもらいました。作ってもらったページも自分の思っている雰囲気とマッチしている感じがしました。結果として、この選択が当たりだったわけです。TV局は、うちのホームページを見て、何か新しそうだという意気込みを感じてやってきてくれたのですから。

 

また、ホームページは急ぎで変更しないといけない場合もあり、そのときにすぐに対応してくれる会社でないと、意味がありません。センスと対応力です。また自分と同科の医院のページを作っているかどうかも確認してください。あらかじめイメージができているほうが仕事がしやすいのは、間違いありません。 私は、下層ページ合わせて約35ページでスマホ版も同時に作成してもらい、作成費用が35+5万円くらいだったように覚えています。あとは管理費ですが、月々5~8000円程度が通常ではないでしょうか。

これから開業する君へ 新装版

これから開業する君へ 新装版

中内 一揚

兵田印刷工芸 出版部

眼科診療所を継承した著者による開業解説本。診療所を事業継承する際の注意点や、継承準備の詳細が記されている。 開業を支援するコンサルタントや新規開業した医師による開業解説本は多いが、昨今増加している継承に関する解…

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