経営を任せた優秀な人材からの「手ひどい裏切り」
ここで、株式会社GOSPAの設立当初から立ち上げメンバーとして協力してくれていた、岡野忠さんのお話をしましょう。一昨年、残念ながら彼は74歳でお亡くなりになられましたが、岡野さんから学ぶことはたくさんありました。その中のあるエピソードをご紹介します。
彼は、22歳で独立し、10社の会社を立ち上げ、従業員は300名以上、国税庁の調査によると30年後に生き残る会社は0.03%だと言われる中で、32年間黒字経営を続けてこられた、3000社のうちトップ1社に入る、素晴らしい大経営者でした。
そんな岡野さんが定年を迎えたとき、現役社長を引退し、それぞれの会社の経営を優秀な人たちに任せるようになりました。しかし、その中のある1社で問題が起きたのです。
当時の岡野さんはオーナーとして存在していることになるので、経営の指揮はとりません。それぞれの会社の財務諸表をチェックすることのみを行っていたのですが、その問題が起きた会社の業績を見て、「何かがおかしい」と思う節が多々あったそうです。しかし、岡野さんは、売上は上がっているので、「まぁ大丈夫だろう」と思い、深読みはしなかったそうです。
しかし、とうとう、その会社で資金が足りないということになってしまったのです。何が起きていたのかと言うと、売上の数字としては充分でしたが、実際に顧客からお金を回収できておらず、手元にお金がなかったのです。しかし、これまでの長年の経験を積んでいた岡野さんにとっては、自分が社長に復帰すれば、半年もすれば経営が回復すると思っていました。そこで、社長に返り咲くことになったのです。
しかし、本当の問題は、ここからでした。岡野さんの想像をはるかに超える事態が起きていたのです。
経営を任されていた前社長は、知らない間に別会社を立ち上げ、社員や会社の預貯金などの資産をすべて別会社に移していたのです。岡野さんが社長として返り咲いた会社に残っていたのは多額の借金だけ・・・。さらには、ありもしない噂を流され、取引先には岡野さんの会社と取引させないようにし、計画的に追い詰められたのでした。当然、岡野さんはそのようなことが起きているなんて想像もしていませんでした。
結果、予期せぬ膨大な借金だけを背負い、結局のところ倒産することになってしまったのです。
それから20年以上経ったときに、岡野さんは私にこう言っていました。
「全部これも僕の責任だったんだよね」
岡野さんが経営を任せた社長は、とても優秀な人だったそうです。しかし、以前から人格面においてどうも引っかかる部分があり、対策をとれる機会があったにも関わらず、売上を最優先に考え、「きっと大丈夫だろう!」と思って続行してしまっていたそうです。
「絶対、誠実な人じゃないとダメ」と、岡野さんは念を押して私に教えてくれていました。
たった一人の人間のせいで、事業が傾くこともある
組織は人の集合体です。組織作りの際にやり残した課題があると、たった一人の人間によって、事業が傾いてしまうこともあるのです。
岡野さんによる経営指導のおかげで、設立から5年で90%の会社が倒産すると言われている現在も、株式会社GOSPAを経営して事業を発展させることができていることにとても感謝しています。
【まとめ】経営者ステージを強固なものとするために
チェックしてみよう!
□信頼できる右腕がいるか?
□右腕に、口座や通帳を預けられるか?
□チームの調和をとれているか?
□調和を乱すメンバーがリズムを取り戻すよう指導をしているか?
□定期ミーティングを開催しているか?
□再現性のある教育システムが整っているか?
□会社の使命・ビジョンは明確か?
□チームメンバーに対する明確な基準を設けているか?
さて、岡野さんはどのステージにいたのでしょうか。
自分自身が社長としてチームを形成した後、自分は社長という立場からは退き、優秀な人材に経営を任せると、あなたは経営者ステージの一つ上の、オーナーステージになります。
「ウェルススペクトル理論」では、「青レベル」と呼ばれています。このステージは、オーケストラの指揮者に例えられ、演奏家と異なり、顧客には完全に背を向け、楽器も持ちません。業務は、書面チェックがメインとなり、一社だけでなく、何社もの会社の株主として、経営の再現性と資産のバランスを維持する能力が求められます。
指揮者なので、実際に曲を演奏しているわけではありません。ですので、もしあなたが飲食店のオーナーになれば、レストランに食べに行ったとしても、社員やアルバイトからは「誰? このおじさん」と思われることでしょう(笑)。現場から姿を消しているがゆえに、このステージの人は感謝されにくいステージとも言われているのです。
オーナーステージでは、すべての業務がマニュアル化されており、完成されたシステムの中であなたがいなくても経営が回っている状態を形成できています。
オーナーステージでのキーワードは、「再現性」です。岡野さんが、長年、10社の会社においてすべて黒字経営を続けたように、黒字経営のサイクルを回し、バランスを維持するスキルが求められます。
起業家ステージでは、売上を高めることを最優先に考え、経営者ステージでは利益をいかに残すのかを考えるようになるのに対し、オーナーステージでは、いかに資産を作るのかに意識が向きます。
さらに上のステージに行くと、「ウェルススペクトル理論」では「藍色レベル」と呼ばれ、業界のドンステージです。ここは、数分で数億円を稼ぐステージとなり、孫正義さんや、三木谷浩史さんなど、業界をリードする億万長者の経営者たちが集う世界となります。
彼らは、担保可能な人材として存在しており、信用が最大の資産です。オーケストラに例えると、主催者です。
その上のステージに行けば、「ウェルススペクトル理論」では「紫レベル」と呼ばれ、統治者ステージです。政治家など、国や世の中のルールを書き換えることができる立場になり、オーケストラに例えると、作曲家です。つまり、完成された曲で判断が下される世界に突入します。
これらのステージは、当然、扱う規模も大きくなり、稼ぐ金額も突如大きくなります。我々が見えていない視点で世の中を見ていることでしょう。その反面、多くを手にするために、それに見合う代償も払っているということがおわかりいただけるでしょう。その一例として、これらのステージの人たちには命を狙われる危険があり、必ず護衛がついているほどです。
とは言っても、一度きりの人生において、どうせならいけるところまで高いステージに行こうと考える人がいるかと思います。実は、私もその一人です。なぜなら、この人生で実現すべき大きなビジョンがあるからです。
そしてその上は、いよいよ9つのステージのうち、最も上のステージになります。最も上のステージでは、何が起きているのでしょうか?