過去20日間の平均値と本日の価格を比較すると・・・
移動平均線の第一の役割は「価格の動きをなめらかにすること」だと、前項で書きましたが、このように過去の数字を平均化してつくった「線」が何を意味するのか、20日移動平均線を例にとって、もう少し深く考えてみましょう。
20日移動平均線とは、当日を含めた過去20日間の平均値を、当日の位置に置いてつなげて描いた線であり、当日を含めた過去20日間の平均値の推移をみたものです。
そして、移動平均線のいちばんわかりやすい見方は、過去20日間の平均値と、本日の価格を比較することです。これによって、何がわかるのでしょうか。
それは、「過去のある期間の平均買値(または平均売値)と現在の価格を見比べることができる」ということです。
たとえばある日の価格が20日移動平均線よりも上にあるとはどういうことでしょうか。
それは過去20日間に買っているトレーダーは儲かっているということを示しているのです(ということは、逆にカラ売りしているトレーダーは損をしているはずです)。
もし価格が移動平均線の下にあれば、その逆になります。
たとえば、20日移動平均線で現在の価格が1ドル=110円50銭だったとします。そして当日の終値が1ドル=111円だったとすると、過去20日間で米ドルを買っていた人は、平均して50銭儲けており、米ドルを売っていた人は、平均して50銭の損失を被っていることになります。
また、移動平均線を描くことによってその推移も見えてきますから、時間の経過とともにその利益または損失が増えているのか減っているのかもわかります。
買い方がプラスで、有利な傾向が続きそうであれば追撃の買いを検討するでしょう。こういう局面であれば、売り方がロスカット(損切り)の買い戻しを検討することによって、さらに価格が上がるかもしれません。あるいは、買い方の利益がある程度乗ってくれば利益確定の売りを考えるかもしれません。
つまり、平均買値(または平均売値)を把握し、それを現在の価格と比べて、相場に参加しているトレーダーの損益が現在どうなっているかを分析すれば、これからどういう流れになりやすいのかを推理することができるのです。
「ゴールデンクロス」「デッドクロス」が意味するもの
上記で触れたとおり、現在の価格が移動平均線の上にあるのか下にあるのかは、相場にとって大きな意味を持つことになります。そこで、現在の価格と移動平均線との位置関係が変化する地点を「クロスポイント」と呼びます。
ちなみに、多くの基本書では、短期移動平均線と長期移動平均線のクロスをクロスポイントとするケースが多いのですが、グランビルの法則ができたときは、現在の価格と移動平均線のクロスをそのように呼んでいました。本連載では基本に立ち戻って、現在の価格と移動平均線のクロスから解説を始めていきます。
クロスの仕方は、現在の価格が移動平均線を下から上に抜けるか、上から下に抜けるかの2通りがありますが、前者を「ゴールデンクロス」、後者を「デッドクロス」といいます
(図表参照)。
[図表]ローソク足チャートが移動平均線の上にあるか下にあるかは大切
ゴールデンクロスは、それまで平均的にマイナスだった買い方の損益がプラスに転じる分岐点で、デッドクロスは、それまで平均的にプラスだった買い方の損益がマイナスに転じる分岐点のことです。
また、ゴールデンクロスは、それまで平均的にプラスだった売り方の損益がマイナスに転じる分岐点であり、デッドクロスは、それまで平均的にマイナスだった売り方の損益がプラスに転じる分岐点ということもできます。