最も典型的な「ゴールデンクロス」の形状とは?
買いシグナル①について
これが、最も典型的なゴールデンクロスです。まず、移動平均線がしばらく下降していること。次に、その移動平均線が下げ止まりを予兆させるものであること。この2つが大前提であり、その条件がそろっている状態で、移動平均線の下にあった価格が、移動平均線を上向きにはっきりとクロスする形になったときが、最大の買いのチャンスになります(図表1)。
[図表1]買いシグナル① 典型的な買いサイン
ゴールデンクロスについては、何となく「短期線が長期線を下から上に抜けるとき」だと覚えている人も多いようです。しかし、本章でこれまでに解説してきたように、移動平均線と価格の関係には深い意味がありますから、その関係と合わせて考えながら、正確に上記の3つの条件を理解しておきましょう。
買いシグナル②について
一見するとデッドクロスに見えるのですが、デッドクロスではありません。正しいデッドクロスになるためには、移動平均線が横ばい状態になるか、少し下降基調に転じるという前提が必要です(後述する売りシグナル①参照)。加えて、価格が上から下へとはっきりとクロスしなければなりません。
このケースでは、移動平均線がまだ上昇しているなか、価格が移動平均線の下にいくという形です。これは、上昇トレンドがまだ継続するなかでの押し目であり、売り場ではなく
むしろ買い場になります(図表2)。
[図表2]買いシグナル② だましのデッドクロス(買いサイン)
ただ、こうしたケースでは、移動平均線と価格が何度も交差を繰り返すパターンがよく見られます。そして、やがて勢いをなくして下降に転じてしまうこともあります。つまり、押し目買いのチャンスなのかトレンドの転換点なのかは紙一重ですから、大きく取るために強くいける場面ではないということです。
上昇トレンドに見られる「押し目買い」のサインとは?
買いシグナル③について
価格が安定的に上昇しているとき、価格と移動平均線は平行して上昇していきます。このとき、価格は基本的に移動平均線の上にあります。なぜなら移動平均線は、過去数日間の平均値なので、上昇局面では当然、現在の価格より低い値になるからです(これを「移動平均線の遅効性」といいます)。
価格はその都度、上がったり下がったりしますが、移動平均線はそれより遅れて上昇し、遅れて下降します。
ですから、価格と移動平均線の位置関係をみれば、現状が上昇トレンドか下降トレンドかがわかるわけです(下降トレンドであれば、価格は移動平均線より下に位置することになります)。
上昇トレンドにあるとき、価格が上昇力を失うと、価格と移動平均線は間隔を徐々に縮めていき、逆に価格が上昇力を強めているときは、価格と移動平均線の間隔が徐々に広がっ
ていきます。
つまり、上昇トレンドのときは、価格と移動平均線の位置関係を保ったまま、価格が移動平均線に接近したり離れたりするわけですから、買いシグナル③のケースは、一度、上昇力を弱めた相場が再度上昇を開始したことを意味し、買いのチャンスだといえます(図表3)。
[図表3]買いシグナル③ 押し目買いのサイン
買いシグナル④について
これは「移動平均乖離率」という、別のテクニカル指標として扱われることもあります。
移動平均乖離率とは、価格と移動平均線がどれくらい離れているかを数値化(%)してトレードの目安にするテクニカル指標です。移動平均は文字どおり「平均」ですから、価格が平均から離れる(乖離する)と、その後、価格は移動平均線に向けて戻ってくる(平均に回帰する)性質があります。その性質を利用して売買のシグナルにするのです。
もし、価格が一定の角度で下降し、移動平均線もそれに並行して、同じ角度で下降していくとしたら、価格と移動平均線の乖離は一定です。
ここで下降していた価格が急落するなどすれば、価格は移動平均から乖離することになりますが、通常、そうした状態はいつまでも続くものではありません。急落した相場にはいずれリバウンドが入ります。それにより価格は、移動平均線に近づきます(図表4)。
[図表4]買いシグナル④ 急落後の買いサイン
とはいえ、移動平均乖離率は使いづらい指標でもあります。なぜなら、「どのくらい離れたら、戻ってくるか」ということが明確になっていないからです。通常、売買シグナルとして使う場合は10%以上とするケースも多いようです。つまり移動平均線から下へ10%以上離れたら「売られすぎ=買いサイン」ということです。しかし、この数字はチャートの時間軸や銘柄ごとの値動きの性質、そのときの市場の状況によって変わってきます。
システマチックにトレードを行なう場合は、過去のデータから統計的に最適値を求めて機械的に適用しますが、それでも誤差はつきものです。
使いづらいルールは、あくまで参考程度に止めておくことをおすすめします。