通常「ゴールデンクロス=買いのサイン」だが・・・
買った後、価格が下がっていたとしましょう。どのような気持ちになるでしょうか?
上がると思って買った自分の思惑が外れているわけですから、どうして自分の読みははずれたのか、あるいは早く損切りしたほうがいいのではないかなどと不安な気持ちになるはずです。
では、そこから価格が回復して、自分が買った価格を上回ったら、どのような気持ちになるでしょうか?
当然、うれしい気持ちになるでしょう。自分の読みはやはり正しかった、あるいはどこまで上昇するか楽しみだという気持ちになるはずです。
つまり、損益がマイナスかプラスかで、投資家の気持ちはまったく違うものになります。心理的に、投資家が強気になる分岐点がゴールデンクロスで、逆に弱気になる分岐点がデッドクロスです。
ゴールデンクロスとデッドクロスのそれぞれについて、買い方がどのような心理状態になるのかをまとめると、以下のようになります(売り方であれば逆になります)。
●ゴールデンクロスのときの買い方の気持ちの変化
ゴールデンクロス前・・・損益がマイナス状態なので、いつ損切しようかと考える。
ゴールデンクロス後・・・損益がプラスに転じるため、追撃を検討する。
●デッドクロスのときの買い方の気持ちの変化
デッドクロス前・・・損益がプラス状態なので、安心してポジションを持っている。
デッドクロス後・・・損益がマイナスに転じるため、慌てて損切を検討する。
こうした理由から、通常はゴールデンクロスが買いサイン、デッドクロスが売りサインになるのです。
「グランビルの法則」に見る8つのシグナルとは?
ゴールデンクロスは買いサイン、デッドクロスは売りサインだと簡単に書きましたが、実際の相場ではそう簡単に割り切れるものではありません。
「だまし」といって、買いサインが点灯したと思って買ったら下降に転じてしまうとか、売りサインが点灯したと思って売ったら上昇に転じてしまうといった、「予想どおりにならない」ケースもよくあります。
そこで、移動平均線を用いて売り買いの判断をする場合には、もう少し細かく、移動平均線と実際の価格の関係を把握しておく必要があります。そのための非常にわかりやすい方法として、「グランビルの法則」があります。
これは、移動平均線の考案者として先ほども触れたジョゼフ・E・グランビルが、その著書『グランビルの法則』において「移動平均線と株価の乖離の仕方や方向性を見ることで、株価の先行きを判断する」ためのルールとして定めたものです(ちなみに、グランビルはウォール街の新聞社である、ハットン・デイリー・マーケット・ワイヤー通信社の人気記者でした)。
グランビルの法則としては、以下の図表ように、買いのシグナルが4つ、売りのシグナルが4つの、計8つのシグナルが定められています。
[図表]グランビルの法則による「買い」と「売り」のシグナル
●買いシグナル
①移動平均線がある程度の期間下降した後で横ばい状態になるか、あるいは少し上昇基調に転じたときに、価格がその移動平均線を下から上にはっきりとクロスしたとき。
②移動平均線が引き続き上昇している時期に、価格が移動平均線を左から右にクロスしたとき(つまり価格が移動平均線を一時的に下回ったとき)。
③価格が上昇基調の移動平均線の上にあり、その後移動平均線に向かって接近(下降)していくが、移動平均線とクロスせずに再度上昇を始めたとき。
④価格が下降基調の移動平均線の下にあって、移動平均線から大きく乖離したとき。
●売りシグナル
①移動平均線がある程度の期間上昇した後で横ばい状態になるか、あるいは少し下降基調に転じたときに、価格がその移動平均線を上から下にはっきりとクロスしたとき。
②移動平均線が引き続き下降している時期に、価格が移動平均線を左から右にクロスしたとき(つまり価格が一時的に移動平均線を上回ったとき)。
③価格が下降基調の移動平均線の下にあり、その後移動平均線に向かって接近(上昇)していくが、移動平均線とクロスせずに再度下降を始めたとき。
④価格が上昇基調の移動平均線に上にあって、移動平均線から大きく乖離したとき。
これだけの解説では、よくわからないという方もいらっしゃると思うので、次項からさらに詳しく解説していきます。