合併、吸収…日本の大手電力会社・都市ガス会社はどう変わる?

今回は、日本の大手電力会社・都市ガス会社は将来的にどのように変化していくのかを探ります。※本連載は、東京工業大学特命教授・名誉教授、先進エネルギー国際研究センター長である柏木孝夫氏の著書『超スマートエネルギー社会5.0』(エネルギーフォーラム)の中から一部を抜粋し、ドイツのエネルギー戦略を参考にした、政府主導の「日本版シュタットベルケ」について説明します。

将来、日本の大手電力会社は「3社のみ」となる!?

大手電力会社が今後どうなるかを予測すると、将来的には沖縄電力を除き3社になると考えている。

 

ドイツの場合、電力自由化で8社あった大手電力が4社にまで減った。イーオンという会社が最大手のひとつだが、同社の売り上げの半分ほどをガス事業が占めている。つまり自由化が進むとガス&パワーの方向に進むわけで、日本もドイツと同じような道を辿るだろう。

 

現在は、沖縄電力を除いた9電力会社がそれぞれ原子力発電を持っているが、今後経営の大きな負担になる。そのため原子力のアライアンスが進むだろうが、M&A(合併・買収)まではいかないとみている。

 

まず、西日本で「西日本総合エネルギーホールディンググループ」のような形になり、その中のひとつとして原子力カンパニーができる。このホールディンググループの中に、関西電力カンパニー、中国電力カンパニー、四国電力カンパニー、九州電力カンパニーが入るという形である。

 

送配電線事業、すなわちネットワークカンパニーは送電網が広域化され、逆に地域ごとに配電線ユニットができる。送配電ともにニュートラルに総括原価が適用され、配電線ユニットの中には、自営線など小規模のネットワークや、新電力の配電ユニットなどが接続される場合が出てくる。

 

ここで原子力をひとつにまとめられるかが大きな問題であるが、送電網の広域ネットワークといっても、九州と本州、四国と本州などの連系線が弱いため、各カンパニーの陣地は守れるため、原子力による電力の需給構造はこれまでとあまり変わらず、管理の合理化などが図れるため可能性は大きい。

 

中国と関西は地続きだが、製造業が多い中国でも需要がしっかり確保できるため、そう簡単に関西に負けることはない。関西電力は、原子力が動くと強くなり、現状でもその傾向にある。

 

原子力がひとつのカンパニーになれば、安全性に優れたより合理的な運営が可能となり、持ち分に応じて、その分が関西電力に割り当てられる。それ以外の電力会社にとっても、それぞれ特色ある陣地が守れるため、原子力をまとめるメリットが出てくるわけである。

 

一方、東日本はどうか。東京電力は実質国営化されている。そして中部電力は、東京電力と「JERA(ジェラ)」という火力・燃料の統合会社をつくった。

 

佐久間周波数変換所のFC(周波数変調器)を120万キロワットから300万キロワットに増強しようとしているが、それはたいしたことではない。依然60ヘルツと50ヘルツの壁はある状況下で、陣地が守れるので一体化する。

 

そこに北陸電力もくっつく。北陸は関西の隣だが、北陸電力はBWR(沸騰水型原子炉)、関西電力はPWR(加圧水型原子炉)なので馴染みがない。FCのバリアで、それぞれ陣地が守れ、BWRの原発を所有している東京、中部、北陸で、ひとつの原子力カンパニーをつくるのが自然な流れである。

 

そうなると東北電力が浮いてしまうわけだが、北海道電力との境の北本連系線は60万キロワットしかないから、ここでもお互いの陣地は守られる。

 

PWRとBWRの差はあるが、一体化して合理的な原子力の推進体制ができるというメリットを見込んで、ここでも原子力カンパニーができてもおかしくはない。さらに再生可能エネルギー由来の電力が多いので、CО2排出原単位が小さいというメリットもあり、他社との差別化ができる。

 

つまり最終的には、原子力のカンパニー化をきっかけに、①沖縄を含む西日本、②東京・中部・北陸が一体化した中日本、③東北・北海道の東日本―の3つの総合エネルギーホールディングカンパニーに収斂していくと予測している。

都市ガス会社の一部は「電力会社の傘下」に

では、ガス会社はどうなるか。

 

都市ガス会社は現在200社程度あるが、LPガス事業者だけでまとまったとしても、一般ガス事業者の供給区域外である白地地域では、それほど統合のメリットは期待できない。数社は広域でまとまることもあるだろうが、それよりコンパクト+ネットワークでつながって、電力会社の傘下に入ったほうがメリットは大きい。

 

LPの一部は、オール電化やエネファームを扱うなど好きなことができるようになり、上位系の電力会社とタイアップする。

 

[図表]エネファームについて<タイプ>

出所)メーカーのホームページなど
出所)メーカーのホームページなど

 

元売りに関しては、例えば、東京ガス管内であれば、京葉ガスなど大手は、東京電力と東京ガスの両方から卸供給を受けている。そういうところは、東京電力とつながるか、東京ガスとつなるか、これは今後の思案になる。こうして広域でのグルーピングが出来上がっていき、そのあと新電力と組むようになる。

 

新電力は、現在400社ほどあるが、生き残るのはガス会社系や、大規模な発電所を保有している50社程度とみている。デマンドだけを持っているブローカーのような形で参入してきた新電力は、単独では潰れていくので、大手とアライアンスと組みながら生き残りを図る。

 

ガス会社が広域でまとまり、発電所ができ、需要サイドにエネファームが入り、ネガワット取引を仲介するアグリゲーターになると、かなり大きなネットワークとなる。

 

エネファームは、2030年までに530万台を導入する計画がある。530万台分の発電力となると、400万キロワットほどである。これにデマンドレスポンスをかければ、総発電量のうち3分の2程度は逆潮して外部への電源として見込める。つまり数百万キロワットの発電所を持つこととイコールになるわけである。

 

このようにガス会社は、VPP(仮想発電所)として機能するエネファームのアグリゲーターになっていくだろう。

 

いろいろなクラスターができて、スマート&マイクログリットで自然エネルギーを取り込み、入ってきたコージェネレーションをアグリゲートする。大手ガス会社は、デマンドは持ってはいるが、潰れそうな新電力をまとめて自分の傘下に置く。

 

さらに、管理を専門にしているところ、例えば、病院の管理を専門にしている会社がガス会社系の新電力とアライアンスを組む。すなわちサービスイノベーションによる新しいバリューチェーンビジネスが誕生し、地域活性化をもたらしていくのではないだろうか。

東京工業大学特命教授・名誉教授
先進エネルギー国際研究センター長 

1946年東京生まれ。1970年、東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。1979年、博士号取得。米国商務省NBS招聘研究員、東京工業大学工学部助教授、東京農工大学大学院教授を経て、2007年より東京工業大学統合研究院教授、2009年より同大先進エネルギー国際研究センター長、2012年より同大特命教授・名誉教授。

1995年、国際連合の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第2作業部会の代表執筆者。2011年より、(一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(コージェネ財団)理事長。

現在、経済産業省総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会長、水素・燃料電池戦略協議会座長、内閣府エネルギー・環境イノベーション戦略推進WG座長などを務め、長年、国のエネルギー政策づくりに深く関わる。2018年、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム」のプログラム・ディレクター(PD)に就任。2017年、エネルギー・環境分野で最も権威のある国際賞「The Georg Alefeld Memorial Award」をアジアで初めて受賞。

主な著書に『コージェネ革命』(2015年)、『エネルギー革命』(2012年)、『スマート革命』(2010年)など。

著者紹介

連載ドイツのエネルギー戦略に続け! 日本政府が仕掛ける「日本版シュタットベルケ」とは?

 

超スマートエネルギー社会5.0

超スマートエネルギー社会5.0

柏木 孝夫

エネルギーフォーラム

地方創生と地域活性化を促す「日本版シュタットベルケ」の実現へ! 2018年7月3日に「第5次エネルギー基本計画」が閣議決定された。再生可能エネルギーを早期に経済的に自立化させて主力電源化を目指すことが明記された。その…

 

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