「節税」とは、税法の枠内で税金を払い過ぎないようにすることである。知識を身につけ、税金の払い過ぎを避けることで、手元に残す現金を最大化させていこう。本連載では、不動産オーナーに特化した「節税策」を100選する。第1回目のテーマは、不動産オーナーが知っておきたい「正しい節税」についてである。

節税とは、税金を「払い過ぎない」ようにすること

そもそも節税とは何でしょうか? 節税とは、税法の枠内で税金を払い過ぎないようにすることです。支払う必要のない税金を支払わないようにすることで、手元に残す現金を最大化させることができます。

 

具体的に節税をするための方法としては、以下の2つが挙げられます。

 

① 各種の税法上の特典(特例、所得控除など)を活用すること

② 経費を最大限計上すること

 

これらによって、課税所得や課税価格を減少させれば、税負担を軽減させ、手元に残す現金を増やすことができます。

 

一般に、利益を増やす努力に比べて、税負担を軽くする努力のほうが小さくて済むので、節税を考えることは、事業を行う上で、とても重要です。もちろん、節税手段を習得するために、専門の税理士を雇うこととなり、費用の負担が発生するかもしれませんが、それによって大きな税負担が軽減されるならば、税理士報酬など安いものでしょう。

 

また、法人税や所得税の節税だけでなく、自分が亡くなった後に発生する相続税も忘れてはいけません。世代を超えて、財産価値を最大化させるためには、これらの税金をトータルで節税する必要があります。

無理に経費をつくるのは「正しい節税」ではない

筆者は、不動産オーナーには「法人化」、すなわち法人で不動産を所有し、賃貸経営することを勧めています。ある一定の規模の不動産経営を行うようになると、所得税の節税手段として、「法人化」が機能するようになるからです。ですので、ここではまず法人税をベースにお話ししていきます。

 

法人税の課税所得は、法人の当期純利益を基礎として計算されます。利益が大きくなれば法人税は増えますし、利益が小さくなれば法人税は減ります(これは個人事業主の所得税も同じです。収入が大きくなれば、税金は増えます)。となれば、経費をガンガン計上して、利益を出さないようにすることが節税になると思われるかもしれません。使うお金を増やすことは、さほど難しいことではないでしょう。

 

しかし、税法上、経費になるのは事業に関連する費用に限られます。基本的には、個人事業主よりも法人のほうが事業として認められる範囲は広いですが、ただ好きだからと、高級腕時計を買っても経費には入れられません。

 

ならば、所有するマンションのエントランスに、高級なシャンデリアを購入することは節税になるでしょうか? これは経費には入ります。しかし、設置したシャンデリアが他の外観と合わず、資産価値を上げる効果がないのであれば、単なる損失とも考えられます。経費にした分、税金は減るかもしれませんが、結果的に収益も手取りの現金も減ってしまっては、まったく意味がないことです。

 

正しく節税しようとするのであれば、税務上の経費として認められて、かつ、収益獲得に貢献するものをうまく計上することが必要となります。例えば、赤字になったとしても、最新の防犯システムを取り入れることで、建物の資産価値が上がるのであれば、それは良い投資だし、正しい節税とも言えるでしょう。

利益を大幅に減らせる「決算賞与」を活用する手も

法人化で活用できる人気の節税策は「決算賞与」です。決算の直前になって、今期は利益が出そうだと判明した場合、その利益を家族などの従業員のボーナスとして支払ってしまうのです。そうすれば利益は大幅に減少し、法人税は減少します。

 

「一度、多額のボーナスを支払ってしまうと、翌期に減らせなくなってしまい困りそう」と思われるかもしれませんが、「うちは業績連動型のボーナスだから、来年はないと思ってね」と伝えておけば、会社の業績と自分の収入が直結することがわかるので、従業員はモチベーションを高めてくれるはずです。

 

不動産投資となると、「どのくらいの収益から法人化を考えると得なの?」と考える人も多いですが、このように法人化には節税だけでなく「事業としてできることの幅が広がる」というメリットがありますので、当初から念頭に置くといいでしょう。

 

 

岸田 康雄

島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

 

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本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2018年7月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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