NPO法人への寄付で受けられる「税制上の3つの優遇措置」

ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットに代表される世界の富裕層の多くは、自らの資産を活用して「財団」等を立ち上げ、社会問題の解決に挑むなど、積極的な社会貢献活動を行っています。日本ではまだあまり浸透していない社会貢献活動の可能性について、ファンドレイジングアドバイザーの肩書きを持つ宮本聡氏が解説します。今回は、NPO法人への寄付で受けられる「税制上の3つの優遇措置」について見ていきます。

公益事業を行う法人の法人税は「原則非課税」

法人格を持つと一定の納税の義務が課せられるのが通常ですが、NPO法人等の公益事業を行う法人の法人税については原則非課税となり、法人税法に規定された収益事業を行う場合にのみ、その収益事業からの所得に対して一般企業と同じ税率で法人税が課税されることになります。

 

法人税法上の収益事業とは、法人税法施行令第5条に定められた34業種の事業で(下記図表1参照)、継続して事業場を設けて営まれるものをいいます。

 

NPO法人等の公益法人が個人や法人から寄付を受け取ったり、相続財産からの遺贈を受けても、原則として課税されることはありません。

 

[図表1]収益事業の範囲(国税庁HPより、筆者作成)

寄付金控除は所得控除だけでなく「税額控除」も可能に

反対に、NPO法人等に寄付をした側への優遇はどうなっているのでしょうか。一定の条件の元に寄付をした場合には、税制上の優遇を受けられる寄付税制という制度があります。

 

税制上の優遇措置は、具体的には下記の3つからなっており、寄付をすることで社会に貢献したいと考えている人の活動を後押ししてくれます。

 

(1)個人が寄付した場合、一定限度内で寄付金額に応じた所得控除もしくは税額控除が得られる。

 

(2)企業が寄付した場合、一定限度内で寄付金額に応じた損金算入(経費処理)が認められる。

 

(3)個人が相続財産を寄付した場合、その寄付分が課税対象外になる。

 

個人が、国や地方公共団体、特定公益増進法人(公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人等税制上の優遇を受ける法人の総称)や認定NPO法人等に寄付をした場合には、寄付金控除を受けることができます。

 

寄付金控除の対象となる金額は、「寄付をした金額−2,000円」です。ただし、総所得金額等の40%が限度となります。

 

この「寄付金控除」は、従来は「所得控除」の方式しか認められませんでしたが、平成23年度の税制改正で、「税額控除」による方式も認められることになり、寄付者はいずれか有利な方法を選択することができるようになりました。ただし、税額控除を選択することができるのは、認定NPO法人、一定の証明を受けた特定公益増進法人に寄付した場合に限られます。

 

税額控除では、税率に関係なく所得税額から直接控除されるため、既存の「所得控除」と比較して、ほとんどの人は寄付に対して減税額が大きくなります。

 

「所得控除」による方式は、この金額が、医療費控除や配偶者控除のように、所得金額から控除されるものです。所得税は、課税所得金額に税率をかけて計算しますので、所得控除方式の寄付金控除は、税率が高い人(=高額所得者)であればあるほど効果が高くなります。

 

[図表2]控除方式と控除金額

※総所得金額等の40%が限度。ただし、震災関連寄附金は総所得金額等の80%が限度
※総所得金額等の40%が限度。ただし、震災関連寄附金は総所得金額等の80%が限度。

高額所得者で税率が高いほど優遇される「所得控除」

ここで、所得控除と税額控除の減税額が収入(所得)によってどのぐらいの差になるのか、試算して比較してみたいと思います。

 

たとえば、年収400万円(課税所得金額150万円、所得税率5%、所得税額7.5万円)のAさんと、年収1,000万円(課税所得金額600万円、所得税率20%、所得税額120万円)のBさんがそれぞれ年間5万円ずつ寄付した場合に、所得控除を選択した場合と税額控除を選択した場合に分けて計算してみます。

 

<所得控除の場合>

 

Aさん:寄付金額5万円、減税額2,400円

(50,000円※−2,000円)×5%=2,400円

(※)150万円×40%=60万円>50,000円⇒50,000円

 

Bさん:寄付金額5万円、減税額9,600円

(50,000円※−2,000円)×20%=9,600円

(※)600万円×40%=240万円>50,000円→50,000円

 

同じ額を寄付しても、高額所得者で税率が高いほど効果が高いことがわかります。

 

<税額控除の場合>

 

Aさん:寄付金額5万円、減税額18,750円

(1)(50,000円※−2,000円)×40%=19,200円

(※)150万円×40%=60万円>50,000円→50,000円

(2)75,000円×25%=18,750円

(3)(1)>(2)→18,750円

 

Bさん:寄付金額5万円、減税額19,200円

(1)(50,000円※−2,000円)×40%=19,200円

(※)600万円×40%=240万円>50,000円→50,000円

(2)120万円×25%=300,000円

(3)(1)<(2)→19,200円

 

限度額を超過しなければ、所得金額に関わらず基本的に効果は一定であることがわかります。

 

課税所得金額と税率、寄付金控除を受ける前の所得税額がわかっていれば、所得控除と税額控除の減税額の計算はそんなに複雑なものではありません。確定申告の際には計算して比較し、有利な方を選ぶとよいでしょう。

寄付金控除を受けるには「確定申告書」の提出が必要

寄付金控除は、会社員だったとしても年末調整ではできず、寄付金控除または寄付金特別控除(税額控除)に関する事項を記載した確定申告書を提出する必要があります。

 

元々確定申告をしている方にとっては記入欄が少し増えるだけなので大きな手間ではないかもしれませんが、確定申告をしていない方が少額で単発の寄付をした場合など、わざわざ確定申告をする手間をかけるべきかは悩むところかもしれません。

 

ただ、最近では、国税庁のe-Taxサイトを使うと、簡単に確定申告書が作成できるので、自分がその年にどんな寄付体験をしたのか振り返る意味でも、ぜひ寄付金控除の申告をしてみてください。

 

寄付金控除を活用した寄付は、ある意味「税金の使い道を自分で選ぶこと」でもありますので、個人が社会問題等について考えるよい機会になるのではないかと思います。

営業コンサルタント
ファンドレイジングアドバイザー
(株)シティインデックス海外不動産事業マネージングディレクター
認定特定非営利活動法人ACE 理事
公益財団法人 ふじのくに未来財団 理事
株式会社リビルド 社会貢献部長
一般財団法人 共益投資基金JAPAN 理事

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科卒業。1972年静岡県(西伊豆)生まれ。

鉄道会社、地域金融機関、不動産仲介会社、外資系金融経済情報会社、中間支援NPO、マンションディベロッパー、クラウドファンディング運営会社など、様々な業種での勤務経験を持つ営業コンサルタント/ファンドレイジングアドバイザー。主に中小企業やNPO/NGOの経営や営業の支援を行うコンサルタントとして活動する傍ら、海外不動産の販売やファイナンシャルプランナーとして事業承継や資産活用の助言も行う。

<保有資格>
経営管理修士(MBA)、認定ファンドレイザー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、一種証券外務員、等々。

著者紹介

連載富裕層のための「社会貢献としての寄付」入門

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