現金や預金はインフレになると価値が下がります。インフレリスクに備える場合、日本株への長期投資がやはり有効といえます。

経済成長に伴って価値が上がる資産とは?

2%のインフレリスクをヘッジするためだけであれば、債券の投資信託でも十分かもしれません。しかし、仮に投資信託で利回り2%を達成したとしても、2%のインフレが同時に進行していたとしたら、差し引きはゼロです。資産は目減りはしませんが、増えもしません。

 

インフレリスクをヘッジしつつ、資産を増やしていくことを考えるのであれば、筆者が本当にお勧めしたいのは日本株への長期投資です。現金や預金と異なり、株式や不動産や金(ゴールド)などの資産は、物価に連動して価格が上昇します。つまり、現金や預金はインフレになると価値が下がってしまいますが、株式や不動産はインフレになっても価値が下がらないのです。それどころか経済成長に伴って、それまでよりも価値が上昇することもあります。

 

なぜならば、景気がよくなると富裕層は投資に積極的になりますし、インフレに強い株式や不動産への投資を始める人も増えるからです。投資が投資を呼び、需要が増大したところで、供給がそれほど増えるわけでもないので、経済学の需要と供給の原則に従って価格が上昇するわけです。

 

しかしここでは、価格上昇の可能性については簡単に触れるにとどめておきます。欲に目が眩んだ投資はたいてい失敗するものですし、価格が上がるからといわれて株を買った人の多くは、短期的な価格の下落に対して大きく反応し「上がるというから買ったのに下がったじゃないか」と大騒ぎするからです。

 

本来、株式投資とは短期的な売買で利ざやを稼ぐためのものではありません。そのような目的で株に投資したい人は、デイトレードやチャート分析、テクニカル分析などについて書かれている、別の本や記事を読まれたほうがよいでしょう。

短期的な利益狙いで株式投資を始めるべきではない?

筆者が推奨する株式投資の第一の目的は、あくまでもインフレヘッジです。もちろん、長期的に株式投資を行えば、インフレヘッジ以上の利益を上げることは可能です。しかし、これまで、あまりにも利益と株式投資とを結びつけた報道ばかりがなされてきたために、多くの人が投資を敬遠しすぎてきたのではないかというのが筆者の考えです。

 

短期的な利益狙いで株を買った人の多くは、買った次の日から、毎日、株価が上がったか下がったかを確認して一喜一憂します。上がり続けているうちはよいのですが、運悪く、下がることもあります。そうなると株価が気になって仕事がろくに手につかないという人も出てきます。株式投資のせいで本業がおろそかになって、収入が減少するようなことがあっては本末転倒です。そもそも、そんなことをしていたら身がもちません。

 

よほど株が好きで毎日チャートを眺めていても飽きないという人か、株式投資を本業として投資収益で生計をたてているプロの投資家でなければ、短期的な利益狙いで株式投資を始めるべきではないと筆者は考えています。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

仮に今、あなたに1000万円の預金があるとしましょう。安倍内閣が掲げるインフレ目標2%が今後毎年達成された場合、その預金の価値は毎年2%、つまり20万円ずつ目減りしていくことになります。預金の金利はもちろんつきますが、現…

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