自らの意思を「法的効力」として残せる遺言書
遺言書で自らの真意を正しく伝えるためには、まずそもそも遺言書でどのようなことができるのかを把握しておく必要があるでしょう。法律により、遺言書で具体的にできるとされていることは以下の通りです。
(1)財産処分の指示
故人の自由な意思表示が尊重され、遺言による死後の法的効力が認められます。つまり、遺言で、誰にどのように財産を相続させるか指定でき、また、相続人以外の第三者に財産を譲り渡す(遺贈:民法964条)ことや財産を寄付したり、財団法人を設立するなどの寄付行為が可能です。
(2)相続人の廃除、取り消し
虐待や侮辱などの理由で財産を相続させたくない時、相続人を廃除することができます。手続きは生前でも可能ですが、遺言でも可能です。なお、遺言でする場合はその手続きを遺言執行者が行います。また、生前認められていた廃除を遺言により取り消すこともできます(民法892・893・894条)。
(3)子の認知
婚姻外で生まれた子との親子関係を認め、相続人の資格を与えることができます。いわゆる認知です。認知は生前でもできますが、家族にいえない場合や胎児に対する場合などは、遺言で認めることができます(民法781条)。
(4)後見人・後見監督人の指定
遺言者の子が未成年の場合は、その子の生活や財産管理を委託する後見人の指定ができます。さらに、後見人を監督する後見監督人を指定することもできます(民法839・848条)。
(5)相続分の指定とその委託
特定の人に多く財産を残したい時など、法定相続分とは異なる各相続人の相続分を指定することができます。また、第三者に相続分の指定を委託することができます。遺言で相続分を指定した時は、法定相続分に優先します(民法902条)。
遺言内容を実行させる「遺言執行者」の指定も可能
(6)遺産分割の指定とその委託
財産をどのように分けるか、具体的に遺産分割の方法を指定することができます。また、第三者に分割方法の指定を委託することができます。具体的に誰が何を相続するかを指定することで、トラブルを回避することが期待できます(民法902条)。
(7)遺産分割の禁止
土地の分割など、経済的な価値に影響があり、すぐに分割が不可能な財産について、相続開始から最長5年以内であれば、財産の分割を禁止することができます(民法908条)。
(8)相続人の担保責任
遺産分割後、財産に過不足や瑕か疵しなどがあった場合、不公平を避けるため各相続人は相続分に比例してお互いの担保責任の減免・加重が義務づけられていますが、遺言により法律に定められたものとは違った担保の方法を指定することができます(民法914条)。
(9)遺言執行者の指定とその委託
遺言の内容を実行させるための遺言執行者を指定しておくことができ、また第三者に指定を委託することができます。遺言執行者は、第三者の立場で、遺言の内容を忠実にかつ公平に実行する義務と権限を有します(民法1006条)。
(10)遺留分減殺請求方法の指定
遺言によって侵害された遺留分を、法定相続人が減殺請求した際に、どの財産から減殺していくのか、その順番と割合を指定することができます(民法1034条但書)。