ネットで「ワンクリック注文」が可能な時代なのに・・・
ここでは少し趣の違った話をします。入居希望者がアパートなどの部屋を借りる場合、実際にどのような手続きをしているかご存じですか?
最近ではインターネットの普及により、消費者が簡単に自分の欲しいものを選び、まさにワンクリックで注文できる時代になりました。賃貸物件についても、インターネットで間取りや設備や家賃などを簡単に調べられるようになりました。
ですが、実際の賃貸契約となると、さすがにワンクリックとはいきません。自分が住む部屋ともなれば、ネット上の取引ではやはり不安です。また、部屋を貸す側にとっても、まったく素性のわからない相手に、何の確認もしないまま貸してしまうのは、とても不安なことだといえます。
入居希望者は賃貸仲介業者を訪ね、希望する部屋の内見を行う。そのことによって、貸す側も入居希望者を確認することができる。この仕組みは簡単には変わりません。
このとき、入居希望者のほとんどはインターネットで事前に確認を済ませています。そこで獲得した部屋のイメージと、内見で実際に確認した結果とが一致すれば、無事に契約へと至る、これが現在の賃貸契約の一般的なイメージです。
営業マンが案内する3室「アテ・ナカ・キメ」
しかしながら、今までに賃貸契約をされた経験のある方ならおわかりだと思いますが、事前の想定どおりに物事が運ぶ確率は非常に低いのが実態です。こうしたギャップはなぜ生じるのでしょうか?
一般に、賃貸仲介業者の営業マンは、入居希望者には3室を案内しています。初めに30分ほど店舗でヒアリングをされますが、いつまで経ってもネットで見てきたお目当ての物件の話にはなりません。
どうしてその部屋だけを速やかに案内してくれないのか? これではただの時間のムダではないか? 入居希望者がそう考えたとしても無理はありませんが、ここに賃貸仲介業者のカラクリがあるのです。
賃貸仲介業者は、1部屋契約すれば、大家と入居者の双方からそれぞれ家賃1カ月分の仲介手数料を受け取ることができます。大家が1カ月分を負担するのは、最近増えてきた敷金・礼金ゼロの場合のケースです。ここまではどんな物件についても同じです。
しかしながら、競合物件との間で差をつけるために、広告料という名目でさらなる謝礼を賃貸仲介業者に払う約束をしていれば、賃貸仲介業者は実入りの多い物件から優先的に、案内を行うようになります。
つまり、入居希望者のイライラの裏側には、早く満室にしたい大家の想いと、少しでも多くの利益を得たい賃貸仲介業者の思惑とが、重なり合ってうごめいているわけです。大家としてのあなたがここから何を学ぶべきか? それはもう言わなくてもおわかりのはずです。
ちなみに、賃貸仲介業者は3室案内するとご説明しました。業界ではこのことを「アテ・ナカ・キメ」と呼んでいます。この聞きなれない言葉について、次回で詳しく説明したいと思います。