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M&A投資家として売手やアドバイザーから信頼を得るには?

前回は、「M&Aアドバイザー」の種類をポジション別に解説しました。今回は、M&A投資家として売手やアドバイザーから信頼を得るためのポイントを見ていきます。

「M&Aの目的」をまずははっきりさせる

M&A市場への異業種からの参入が相次いでおり、マッチングサイトやプラットホームが次々に立ちあがっています。そのような背景もあり、買いニーズが高まり、投資家が急増しています。マッチングサイトに売却案件を掲載すると、10名以上の投資家からオファーが届くことも珍しくありません。


一方、買いニーズに見合うほどには売却案件は表に出てきません。良い案件であれば、アドバイザー自身のネットワークで完結してしまうことが多いためです。加えて、ノンネームベースでも情報をサイトに上げることへの売手側の抵抗感がまだまだ強いためです。


企業の人材採用のように、良い人を獲得するには求職者(売手)に、社風や採用の本気度、待遇などをアピールすることが必要です。M&A市場においても同様です。今回は、選ばれる投資家となるための資質・アピール方法について説明いたします。

 

①M&Aの目的を明確にする


まずは何のためにM&Aをするのかを、はっきりさせることがスタートです。一般には、既存ビジネスの拡大、新規事業の代替手段、起業、人材不足解消、技術獲得等があります。これらの目的を満たすために、本当にM&Aが必要なのか立ち止まって考えることが必要です。ここが明確でないと、相手に本気度は伝わりませんし、最後の段階になって「はしごを外す」ことになると、信用を失うどころかトラブルに発展することもあります。

 

②独自の投資基準を持つ


「良い案件があったら何でも持ってきて欲しい」という方がいますが、実際に買った方をあまり見たことがありません。投資家としての基準、モノサシがないのです。投資基準とは、対象業種、予算、エリア等です。特に予算に関しては、自己資金で対応できる額、資金調達できる額を把握しておくべきです。


先日、実際にあった事例です。飲食店舗を買う方が共同出資者にはしごを外され、譲渡代金が決済できず着手金が没収されてしまうケースがありました。もともと、身の丈以上のM&A案件でした。もう少し早ければ、他に打つ手はありとても残念なケースでした。

意思決定が遅いと、買手候補から外されてしまうことも

③意思決定を迅速にする


意思決定の速さは、強いアピールポイントとなります。決断するまでに時間がかかりそう、はっきりしないと思われてしまうと、その時点で買手候補から外されてしまうこともあります。

 

また断る時にも先延ばしにせず、早めに相手に伝えることが重要です。あまり待たせると、相手の期待が高まってしまうので注意が必要です。①②であげたように、目的が明確で、投資基準がはっきりしていれば、迅速に判断できるはずです。

 

④最低限のM&A知識を持つ


専門的な会計用語や企業評価手法をマスターする必要はありませんが、「のれん」や「減価償却」等の基礎的な財務会計知識、「表明保証」「簿外債務」等の法律用語、「株式譲渡」と「事業譲渡」、「会計」と「税務」の違い、議決権比率による株主の権限等は理解しておくべきかもしれません。


買手にあまりにも基礎的知識がないと、アドバイザーも不安になります。M&Aの知識は多岐にわたり、深く理解する必要はありませんが、的確な指示と判断ができるように最低限の知識は身につけておくべきです。

 

⑤重箱の隅をつつかない


「意向表明」「基本合意」に至る前の初期段階で、決算書の細かい経費項目など、本質的ではない質問を繰り返されることがあります。買手側と同様に、売手側にも相手を選ぶ権利があります。以前、シンプルな事業モデルの少額案件に、上場企業がリクエストしてくるような膨大な質問リストが送られてきました。なかには、中小企業では通常作成していないような資料まで入っていました。売手と相談した結果、ストレスと時間がかかりすぎることを予想し、交渉自体をお断りしたことがあります。

 

⑥投資の自己責任原則を理解している


M&Aは買った側次第で、事業がプラスにもマイナスにもなる自己責任原則が大きく問われる投資分野です。同じ事業でも、うまく行く人もいれば、いかない人もいます。このあたりが金融商品の投資とは違うところです。重大な説明義務違反でもあれば別ですが、お門違いの責任転嫁を売手側にするケースも多々見られます。


以前取り扱った案件で、譲渡後のマネジメントの失敗と、法規制が変わったことによる業績不振を、買手側から「売手の責任」と責められたことがあります。その内容も、全体には影響のない軽微な会計処理の認識相違などでした。当然ながら、訴えは退けられましたが、関係者一同、何とも言えない気持ちが残りました。

 

いずれにせよ、案件を選別するのと同様に、売手やアドバイザーも相手を選びます。お金を出すほうの立場が強いと思いがちで、買手側が上から目線で接してしまうことがあります。危機的な救済案件でもない限り、多くの場合で立場は対等なのです。そのあたりを認識し、売手やアドバイザーとの信頼関係をつくりながら良い案件に巡り合って下さい。

株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

著者紹介

連載新たな投資分野として注目集める「スモールM&A」の活用術

 

 

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