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 売手側? 買手側? ポジション別に見るM&Aアドバイザーの種類

前回は、「デューデリジェンス」の理想と現実について取り上げました。今回は、ポジション別に「M&Aアドバイザー」の種類を見ていきます。

M&Aアドバイザーはどんな仕事をしてくれるのか?

M&Aアドバイザーとは、具体的にどのような仕事をしてくれるのでしょうか。そんな質問を受けることが多いです。特に小規模案件を扱う専業アドバイザーは、あまり表に出ることが少ないので、イメージしにくいかもしれません。立ち位置・業務内容によりポジションを改めて整理してみたところ、筆者自身も気づいていなかったポジションが見えてきました(下記図表ご参照)。

 

[図表]M&Aアドバイザーの「11のポジション」

出典:㈱つながりバンクセミナー資料
出典:㈱つながりバンクセミナー資料


以下、主な役割や特性について説明します。皆さんがアドバイザーと付き合う際に、どのポジションにいるのか、得意分野は何かを知ることで活用方法が見えてくると思います。


◆①~④売手・買手アドバイザー


アドバイザーの基本は、売手・買手のどちらにつくかで動き方が大きく変わってきます。基本は実務全般をカバーしますが、単に紹介業務だけを行う「紹介者」というポジションがあります。現在、M&A市場は買いニーズに比べ、良い売り案件情報が不足している状況です。そのため、特に売手情報を多く持つアドバイザーは重宝される存在となっています。


また、実務をメインにデューデリジェンス(資産査定)等の実務を請け負うアドバイザーが「買手・売手アドバイザー」です。一般的にFA(ファイナンシャルアドバイザー)と呼ばれるポジションで、会計士などの士業やコンサルタントが担います。いずれも、買手・売手の利益最大化を目指し、価格や条件の交渉も行います。買手の方は、まず案件情報を多く持つ売手側のアドバイザーと友好的な関係をつくることがスタートになります。


◆⑤仲介アドバイザー


小規模案件の場合は、どちらかにアドバイザーが不在のケースも多く、必然的に「仲介」というポジションを取ることが多々あります。双方の意見やニーズを把握できるため、調整役である仲介者の腕次第で案件がまとまるスピードが速いのが特徴です。お見合いでいう「仲人」をイメージしてもらえれば分かりやすいかもしれません。


一方で、どちらかに肩入れしてしまうと「利益相反」という片側に不利益を生じさせてしまう問題が生じることもあります。仲介アドバイザーは、M&Aの知識だけではなく、公正明大に判断できる能力も必要となります。先ほど「仲人」という表現を使いましたが「レフリー」「審判」「行司役」というほうが、しっくりくるかもしれません。仲介者が信頼できる方なのか、どちらかに寄っていないか等の確認がポイントとなります。

 

◆⑥M&A戦略策定アドバイザー


最近、特にニーズが増えてきたポジションです。良い売却案件情報は待っていても簡単には入ってきません。買手側の数が売手に比べ圧倒的に多いためです。待つ姿勢ではなく、能動的に動くことで良い情報を取ることができます。


それには予算を決め、業種を絞り、対象企業リストを作成し、案件発掘する体制づくり、本気度をアピールすることが必要になります。その一連のプロセス策定を戦略アドバイザーと伴走してつくりあげます。弊社も数年前から平均で月2~3社ほど、同時並行でサポートさせて頂いており、引き合いが途切れたことはありません。人材採用に伴うコンサルティング業務に近いポジションかもしれません。

中小企業支援のひとつの形態である「M&A」

◆⑦⑧廃業・業態転換支援


残念ながら、すべての案件で相手先がみつかるとは限りません。すでに手遅れのケースもあり、その場合はやむを得ず「廃業」という選択がとられます。債務整理、法的処理を伴うケースも多く、再生分野に近い仕事内容です。


一方、まだ余力があるケースにおいては、売却ではなく「業態転換」という支援をすることがあります。純粋なM&A業務ではありませんが、中小企業支援のひとつの形態が「M&A」であり、顧客ニーズや状況により対応しているのが現実です。

 

◆⑨PMI(Post Merger Integration)コンサルタント


売手にとって譲渡契約日がゴールかもしれませんが、買手にとってはスタートの日です。譲渡後の引継ぎ、人事管理、目標達成に向けた進捗管理など、やるべきことは山積みです。また、誰が責任者として事業を運営するかがとても重要になってきます。


一般的に、M&Aアドバイザーは筆者も含め、PMI業務が苦手な方が多い印象を受けます。習性として、どうしても次の案件に意識が向かいがちなためです。しかし、とても大事な業務とは認識しています。再生の分野には「ターンアラウンド・マネージャー(再生請負人)」という重要なポジションがありますが、それに近い領域で、M&A件数が増えるにつれ注目されつつあるポジションです。

 

◆⑩投資家型アドバイザー


小規模M&Aの場合、時にアドバイザー自身が買手になってしまうことがあります。筆者のまわりにも、アドバイザーから事業家に転身した方が複数います。さらにその後、事業を売却してアドバイザー業務に戻る「出戻りアドバイザー」もいます。


また、最初から投資家を目指すことを目的にM&Aアドバイザーになる方もいます。多くの案件情報に触れ、実務を覚えることができるので、合理的な判断かもしれません。規模が大きいM&Aの世界ではアドバイザーが投資家になることはまれなので、スモールM&Aならではの業界特性とも言えます。

 

◆⑪養子縁組アドバイザー


娘さんしかいない歴史ある企業に、外部から優秀な血を入れる目的での養子縁組のアドバイスを生業としている方々がいます。親族内承継を目指す企業にとっては、必要な選択肢のひとつです。歴史的にみると、日本では多数事例があり珍しいことではありません。


ただし、とても難易度が高い業務で、養子縁組した後のフォローも重要になります。⑨のPMI業務も必然的にセットになります。筆者がこれまでに唯一経験していない分野ですが、当面は専門家との連携で対応したいと考えています。

 

以上、M&Aアドバイザーには色々なポジションがあることにお気づきいただいたと思います。依頼後にトラブルや期待外れがないように、まずはアドバイザーの立ち位置、得意分野を確認することが重要です。


またM&Aは、特に自己責任原則が問われる投資分野であり、アドバイザー任せにせず自らも業務に入り込む姿勢が必要です。さらに、アドバイザーからM&A業界に入るという選択肢もありますので、ぜひ、こちら側の世界にいらして下さい。大歓迎いたします。

株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

著者紹介

連載新たな投資分野として注目集める「スモールM&A」の活用術

 

 

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