今回は、米国エンダウメントCIO(チーフ・インベストメント・オフィサー)たちの「運用哲学」を見ていきます。※本連載では、株式会社GCIアセット・マネジメント、投資信託事業グループの執行役員である太田創氏が、「米国名門大学のエンダウメント投資戦略」とは何かを、初心者にもわかりやすく説明します。

米国ファンドマネジャー≒プロスポーツ選手!?

運用資産残高の多寡にかかわらず、エンダウメントのファンドマネジャーには常にプレッシャーがかかります。年間リターンは7~8%を期待され、運用成果がベンチマークを下回り続けると次のポジションを見つけ始めないとなりません。報酬水準は高いと言っても、米国のファンドマネジャーの立場は成績を出さなければ戦力外通告を受けるプロスポーツ選手とあまり変わりなさそうです。

 

そうは言っても、彼ら彼女らも人間です。どこかで息抜きをしたり、座右の銘に従って淡々と運用に対峙しています。今回のコラムでは、そうしたファンドマネジャーの心構えを見ていきましょう。

 

 

1.クレムゾン大学:ジョン・アレクサンダーCIO(運用資産:約800憶円)

 

「忍耐が重要。現代社会では、技術の発展でなかかな忍耐できないことが多いんだ。だから、こういった不自然さに耐えるため、庭いじりや自宅リフォームといった忍耐が必要な趣味を続けている。この趣味は、市場が大荒れになった時に役立つんだ。“耐えろ”ってね。」

 

<筆者コメント>


運用に限らず、一般の仕事や生活の中でも息抜きや趣味は必要であることは同感です。運用の現場では相場環境が悪化したり、一般企業では売り上げが上がらなかったりすると、ファンドマネジャーでも営業担当者でもイライラして好結果は生まないものです。


そこで、リフレッシュは重要ですね。特に趣味を持つことは、仕事以外の人々と交流も深められて違う考え方にも触れられますから、ぜひおすすめですね。

上場初日に「ナイキ株」を買っていたとしたら・・・

2.オレゴン大学:ジェイ・ナムエットCIO(運用資産:約1000億円)

 

「私の考えでは、資産分散モデルだけでは勝てないね。これだけ優秀でハードワークをいとわない人材がいても、結局何に投資するかが問題。我々の投資におけるモットーは、“カネはなくとも、稀有な人材を有する企業に投資せよ”だ。」

 

<筆者コメント>


オレゴン大学は、ナイキ創業者のフィル・ナイト氏の出身大学です。氏は、2016年に同大学に約550億円寄付することを発表しています。運用担当者としては栄誉と共に、かなりのプレッシャーの中で運用していかなければならないでしょう。


ナイキ自体が稀有な人材がいた稀有な企業だったわけで、その当時からナイキ株に投資していたらどうなっていたか。ちなみに、1985年12月5日の上場初日にナイキ株を買って(1株17セント)、昨日まで保有していたとすると(1株74.9ドル)、株価は440倍にもなっている勘定です(配当除く)。


10万円投資していたら4400万円になっていたということですから、“株式投資は夢を買え!”でしょうか。

 

 

3.エモリー大学:メアリ・ケイヒル 元CIO(運用資産:約8000億円)

 

「投資期間やベンチマークが明示されてないパフォーマンスはフェイクに近い。結局、運用者を雇うにしろ、投資対象を見つけるにしろ、自分自身の決定に自信を持てるようになることが一番。それには徹底した調査とヒアリングを怠らないことね。」


<筆者コメント>


これは筆者も同感です。金融商品を選ぶ際は、ある一定の期間の成果だけで判断するのではなく、同じカテゴリーのものと比較したり、リスク値や設定来騰落率等の運用計数を知っておくことです。


売れている金融商品が良い商品と考えてしまいがちですが、投資前には今一度その中身を確かめる習慣をつけておくのは、車を買う際にスペックを確認したり、試乗したりするのと同じではないでしょうか。


いかがでしょう。資産運用に限らず、人生の教訓を与えてくれるようにも思えます。読者のみなさま、ぜひご参考にしてください。


今回のコラムは、Bloombergの“'Go Where The Money Isn't' And More Advice From Endowment Chiefs”を参照しました。

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