ウォーレン・バフェット氏が占う「今後の投資環境」
毎年、2月下旬頃になると、米国の投資会社「バークシャー・ハサウェイ」の会長兼CEOであるウォーレン・バフェット氏は、年次報告書、いわゆる同社株主への「バフェットからの手紙」を発表します。毎回、機知に富んだ内容となっているので、日本でもバフェット氏のファンは多いことでしょう。
バフェット氏は、2019年2月23日に発表された「手紙」のなかで、「The American Tailwind(追い風を受けるアメリカ)」の章において、今後の投資環境について言及しています。比喩的な表現が多く、難解ではあるのですが、いわんとすることは下記6点と考えれられます。
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「追い風を受けるアメリカ」
(1)初めて株式を買ったのは、77年前の1942年。11歳のとき、6歳から貯めた114ドル75セントで「シティーズ・サービス」の優先株を買った。
(2)1942年といえば、アメリカや同盟国が第二次世界大戦に参戦し、経済が停滞していた最悪の年だったかもしれない。しかし、その前の77年間、アメリカは素晴らしい成長を遂げていた。
(3)もちろん当時、人々は戦後経済の復興を願っていたし、実際アメリカの経済成長は予想以上になった。
(4)仮に、1942年に、114ドル75セントを「S&P500指数連動インデックス・ファンド(運用報酬なし)」に投資したとしよう。77年後の今では、それが61万ドルになっている。つまり、元本の5300倍になっているということだ。
(5)同様に、当時100万ドルを投資した年金やエンダウメント(大学基金)であれば、その資金は53億ドルになっている。一方、1%の手数料を払って運用を任せれば、その資金は26億ドルと半減する。
(6)これからも、アメリカの繁栄は想像以上であるし、当社は「節約」の心を忘れてはならない。仮に、先達がそんな資金を先食いして、消費し尽くしていたら、今のアメリカの繁栄はない。
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[図表]バークシャー・ハサウェイの投資先企業
「運用コストの見直し」が基本かつ重要に
本章は、アメリカはこれからも長期的に繁栄を続けていくので、長期的な観点で運用に臨むということを再確認するようにも読めますが、筆者は下記のように捉えます。
つまり、
●時間を味方につければ、百戦危うからず。
●運用コストはなるべく低く、理想はゼロに。
●年金やエンダウメントのような大手機関投資家も、運用コストに注意すべき。
●(運用費用も含め)運用資金の外部流出はなるべく避けよ。
ということが、運用の本質ではないかなと考えます。
これらの示唆は当たり前のことなのですが、なかなか77年間もやり切れるものではないですね。
いつの世もそうですが、儲かりそうな投資対象はどんどん出てきます。今はフィンテックブームで、何でもかんでもテクノロジーに委ねようとしてきています。しかしながら、その結果は歴史のみぞ知るのでしょう。
一方、バフェット氏のようなオールド・スタイルが生き残って、時々原点に返らせてくれるような箴言を聞くのも悪くはありません。筆者も今日から、運用コストの見直しをはかります。
太田 創
株式会社GCIアセット・マネジメント
エクゼクティブ・マネジャー(投資信託ビジネス担当)