米国エンダウメントCIOの報酬は「数億円単位」!?
エンダウメントは米国資産運用業界でも、オルタナティブ投資を積極的に利用して、長期分散投資から高いパフォーマンスをあげる投資主体として一目も二目も置かれる存在です。一方、エンダウメントが大学財団といっても、運用資産規模トップのハーバード大学エンダウメントでは4兆円もありますから、米国においては年金や投資銀行と変わらない運用主体と考えられています。
ちなみに、日本のトヨタ自動車の連結ネット資金量は*約8兆円(トヨタ自動車株式会社「2018年3月期第3四半期 決算説明会資料」より)ですから、その米国エンダウメントの運用資産規模の大きさが分かるというものです。
*トヨタ自動車株式会社 「2018年3月期第3四半期 決算説明会資料」より(http://www.toyota.co.jp/pages/contents/jpn/investors/financial_results/2018/q3/presentation.pdf)
さて、そうしたエンダウメントの運用責任者たちは、一体どのくらいの報酬を得ているのでしょう。一般に、ファンドマネジャーは運用成果が出続ければ天国、出なければクビなどと言われますが、そのような環境下で運用のプロはどのくらいの報酬を得ているか調べてみました。
[図表]米国エンダウメントCIOの報酬一覧
上記図表から一目瞭然なのですが、ハーバード大学エンダウメントCIOのNarvekar氏は10億円、イェール大学エンダウメントCIOのSwensen氏は5億円を超える報酬を受け取っています。トップ・エンダウメントCIOの報酬が数億円単位というのも、こうしてデータを見ると一目瞭然です。
もちろん、エンダウメントCIOの報酬もピンキリであることは言うまでもありません。上記図表ではトップ10のみを抽出しましたが、データベースにある107のエンダウメントで、最高額はハーバード大学・Narvekar氏の10億円ですが、最少額はリード・カレッジCIOのAndrew Lonergan氏の1,700万円と約60倍のひらきがあります。
高いパフォーマンスを上げ続けるには「人材」が必須
さすがに報酬が10億円と聞くと、「高すぎる!」という声が上がってきそうなのですが、ここは冷静に何に対して高いのかを分析してみましょう。
そこで、上記図表に戻って企業のCIO(表内では外部委託運用会社(OCIO)で表記)の報酬水準を確認してみます。例えば、ランキング3位のスミス大学OCIO・Investure社の報酬は4.5億円と高水準ですが、運用会社報酬ですから、絶対感ではさほど高い印象はなく、むしろ個人のCIOよりも低いと感じるのは無理もありません。
ところが、図表右端の「報酬率」を見ると、個人CIOの報酬率(報酬額÷運用資産残高)はわずか0.03%や0.04%といった水準ですが、外部委託運用会社(OCIO)の場合は0.3%とか0.4%と、個人CIOの10倍程度の報酬率となっています。
おそらくこの違いは、外部委託運用会社(OCIO)の場合はその会社の様々なサービスを提供する代わりに高い報酬率となり、個人CIOの場合は成功報酬も含め運用資産残高の100分の数パーセントが結果的に妥当だと考えられているからだと思います。データを見ても、運用報酬額の絶対額が少ないリード・カレッジCIOの報酬率は0.03%と、ハーバード大学CIOの報酬率と変わりません。
結論としては、トップエンダウメントのCIOの数億円の報酬は妥当ということになります。前述のように、運用パフォーマンスがよければ神様にもなれますが、悪化すればクビになるのですから、多少報酬が高くないとなかなかCIOのなり手がいないというのも実態かもしれません。
このように、高いパフォーマンスを上げ続けるには、各エンダウメントは運用人材確保という面では並々ならぬ努力をしているのが伺えます。日本の資産運用業界も今後さらに発展していくためには、こうした運用人材の開発と確保、加えて人材の流動化に努めなければ自力的発展は望めないのかもしれません。