「財団・基金」「同窓生」からの寄付が半数を占める
日本では、大学のみならず、出身校へ寄付すること自体があまり一般的ではありません。例えば、学校に無償の寄付をするよりも、「ふるさと納税」で寄付金控除と返礼品をゲットしようと考える傾向が多く、本来の寄付の趣旨とずれてきているのが、日本の現状です。
米国の高等教育に対する任意の寄付には、寄付者に対する見返りはほとんどありません(寄付金の所得控除はあり)。もちろん、学校等からの返礼品はありませんし、寄付する際にその使途が寄付者の要望に限定されることがほとんどです。
さて、米国高等教育支援機構(Council for Advancement and Support of Education)から、2018年度のエンダウメント全体の寄付金の受け入れ状況がレポートされています。本記事では、直近の全米のエンダウメントの状況を見ていきましょう。
結論からいうと、2018年度の全米エンダウメントの寄付金の総額は、約5兆1500億円(467億ドル)となりました。2017年度は約4兆8000億円(436億ドル)でしたので、1年間で約3000億円も増えた計算になります。
日本企業と比べると、トヨタ自動車の「営業活動キャッシュフロー」が4兆円ですから、毎年トヨタ自動車以上のキャッシュフローを寄付金として得ているわけです。もちろん、人口が日本の3倍近い米国と日本を比べるのはフェアではありませんが、全米エンダウメントがどれだけ巨額の寄付金を得ているのか想像しやすくなったかと思います。
図表1から寄付者の内訳を見ると、財団・基金からの寄付が最も多く、同窓生や同窓生外からの寄付がそれに続きます。
[図表1]米国エンダウメントの寄付者内訳
また、2018年度のメジャーな大学の寄付金受け入れ額は、次のようになります。
(1)ハーバード:1400億円
(2)スタンフォード:1240億円
(3)コロンビア:1100億円
(4)UCLA:870億円
(5)UCSF:803億円
(6)イェール:640億円
(注:www.thecrimson.comより筆者抜粋)
いずれにせよ、巨大な寄付金が毎年有名大学に集まるということですね。
市場環境に左右される寄付金…株価下落時には減額も
一方、この寄付金は市場環境にも左右されます。図表2からも、株価上昇局面では寄付金が増え、株価下落局面(景気後退期)では、寄付金が前年比減額されているのがわかります。
寄付者の気持ちを想像するに、景気後退局面ではやはり寄付へのモチベーションも後退するのでしょう。
[図表2]米国株式市場と寄付金増減比率の推移
リスク資産の出し手として、米国金融市場で高い地位を保つエンダウメントですが、寄付金額の増減が株式相場の変動に左右されるというのは、まさしく米国の株式資本主義を彷彿とさせる事象です。
太田 創
株式会社GCIアセット・マネジメント
エクゼクティブ・マネジャー(投資信託ビジネス担当)