蓄電池やEVを活用したソリューションが次々に誕生
近年の再生可能エネルギー関連技術やICT技術の発展などを背景に、エネルギー業界には今、「エネルギーシステムの分散化」と「エネルギーサービスのワンストップ化」という変革の波が押し寄せている。
こうした大きな変革の潮流のなかで、蓄電池やEVを活用した新しいソリューションが生まれてきている。
エネルギーシステムの分散化やエネルギーサービスのワンストップ化の進展とともに、エネルギー供給のバリューチェーンの中でも、配電部門や小売・関連サービスの付加価値は高まっていくと想定される。
一方で、将来的には、大型の火力発電や原子力発電に代表される中央集中型の発電による付加価値は減少していくと考えられる。長期的には、分散電源を活用した配電レベル以下での需給調整が実現されることで、送電部門の付加価値も低減していくことになるだろう。
これらのエネルギー業界における付加価値の変化は、エネルギー事業者のこれまでのビジネスモデルの前提を根底から覆すものである。付加価値が大きく変化するなかで、既存のエネルギー事業者がこれまでの事業領域を維持していては、現状の事業規模を維持することは極めて困難になることが想定される。
エネルギーシステムの分散化に取り組む業者は多いが…
それでは、従来から需要家に対して電力・ガスを供給してきた既存のエネルギー事業者はエネルギー業界の大きな変革の潮流に対して、どのように対応しようとしているのだろうか。
以下の図表は、エネルギー供給事業者や大手機器・サービスサプライヤーがエネルギーシステムの変革に対して、どのような取り組みを進めているかを「エネルギーシステムの分散化」と「サービスのワンストップ化」の視点でまとめたものである。
ここから、「エネルギーシステムの分散化」に対しては、多くのエネルギー事業者が取り組みを始めている一方で、「サービスのワンストップ化」に関しては、電力・ガスのセット販売以外では取り組み状況に差異があることが見て取れる。
[図表]エネルギー供給事業者および大手機器・サービスサプライヤーの動向
エネルギーの主要プレーヤーは、エネルギーシステムの変革に対して、どのような取り組みを行っているのであろうか。また、一部プレーヤーが先進的な取り組みを始めているのには、どのような背景があるのだろうか。
本連載では、特にエネルギーシステムの分散化とエネルギーサービスのワンストップ化が進んでいる欧米において、エネルギー供給事業者(電力・ガス会社)や大手機器・サービスサプライヤーが変革の波に、どのように対応しようとしているのかを見ていきたい。