今回は、先制して相手に質問することで「ウソのサイン」を見抜く方法等を見ていきます。※本連載は、元警部である森透匡氏の著書『元刑事が教えるウソと心理の見抜き方』(明日香出版社)から一部を抜粋し、ウソや人間心理を見抜くテクニックを紹介します。

相手に「防御策を考える時間」を与えない

◆ウソを見抜くには考える時間を与えないことがコツ

 

ウソを見抜きたいときは、相手が「あの事実について聞かれそうだ」と察知しているようなら、なるべく考える時間を与えないことです。察知してから質問までの間が長いと、相手に防御策を考えさせてしまうからです。相手が防御を開始する前に質問をはじめ、ウソのサインを見抜いてしまいましょう。

 

例えば、容疑者の自宅に赴いて警察署に任意同行し、そのあと取調べをすることがあります。選挙違反事件や贈収賄事件は、このパターンが多いわけです。

 

こういう場合、「○○についてお話を聞きたいので同行願います」と任意同行を求めるので、「○○について聞かれる」ということはわかります。そのため、容疑者は自宅から警察署に到着する数十分、数時間の間に頭を整理してある程度の言い訳を考えるはずです。

 

ですから、あえて言い訳を考えるための詳細なヒントは与えません。車内では事件とまったく関係のない雑談をして、相手に考える時間を与えないのもテクニックのひとつです。

相手に「情」を感じると騙されてしまう

◆ウソつきに情を感じてはならない

 

ウソつきから話を聞いていると、その人の人間性にも触れていくので、情が湧いてしまうことがあります。

 

特に取調べは20日以上行うことが多く、取調室というかぎられた空間で長い時間、顔を合わせていると犯人がかわいくなってくるのです。そうすると、追及の手が緩むことになります。ウソを言われても、「ウソは言ってないよな?」と信じてしまうことにもなりかねません。

 

ですから、真実が全て明らかになるまで、相手に情を感じることは避けなければなりません。自分の感情を殺して厳しい目で見ていかないと、結果として騙されてしまうからです。

 

ある事件の共犯者数名を複数の取調官がそれぞれ担当して、取調べをしていました。取調官同士は定期的に打ち合わせをして、被疑者の全体的な供述に矛盾がないかを検討する機会を設けていました。

 

そこで各取調官が被疑者の供述を報告し、比較していくと相互に合わない部分が出てきたのです。取調官は自分の被疑者は本当のことを言っていると信じているし、信じたいので、他の共犯被疑者の供述は違うと言い張ります。ちょっとした小競り合いになりました。

 

このようなケースでは、証拠から判断して事件の方向づけをしていきます。最終的には落ち着いたのですが、このように被疑者に情を感じてしまうと、冷静な判断ができなくなります。終結するまでは気持ちを許さないことが大事です。

 

森 透匡

刑事塾 塾長

経営者の「人の悩み」解決コンサルタント(人事コンサルタント)

株式会社クリアウッド 代表取締役

元刑事が教える ウソと心理の見抜き方

元刑事が教える ウソと心理の見抜き方

森 透匡

明日香出版社

警察官として約28年、うち知能・経済班担当の刑事を約20年務めた著者が、その経験の中から生み出した「ウソや人間心理の見抜き方」を公開。 相手がウソをついたときのサインの見方や、ウソつきかどうかを見極める質問の仕方が…

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