今回は、株式会社と合同会社の違いを見ていきます。※本連載は、起業コンサルタントとして活躍する中野裕哲氏の著書、『起業の疑問と不安がなくなる本』(日本実業出版社)から一部を抜粋し、起業の際の会社設立・許認可に関する疑問に焦点をあて、詳しく解説をしていきます。

会社組織の体制づくりの自由度が高い「合同会社」

<情報のレベル>☆☆☆☆

Q:株式会社と合同会社、どちらにすべきか迷っています。それぞれのメリット・デメリットを教えてください。

 

A:コスト面だけで判断してはいけない

 

これもよくお受けする質問です。まずは、基本的なことから確認しましょう。

 

下記の図表1は株式会社と合同会社の違いをまとめた表です。これを見ただけではわかりにくいと思うので、以下、簡単に主な違いを説明していきます。

 

[図表1]株式会社と合同会社の違い

 

 

違い① 自由度

合同会社のほうが会社組織としての体制づくりの自由度が高いです。たとえば、株式会社の利益の配分は、基本的に株数の割合に応じて行なわれますが、合同会社の場合は、出資割合に関係なく、社員同士の合意で自由に配分割合を決めることができます。

 

違い② 各種名称

株式会社と合同会社では、各種の名称が異なります。例を挙げると次のとおりです。

 

●株式会社の株主にあたるのが、合同会社では社員

●株式会社の代表取締役にあたるのが、合同会社では代表社員

●株式会社の株式にあたるのが、合同会社では出資

 

特に、実務上での違いとして大きいのは代表者の名称の違い。株式会社の場合、社長の名刺に書かれる役職名は「代表取締役」ですが、合同会社の場合は「代表社員」です。せっかく社長になるからには、「代表社員」よりは「代表取締役」と記載したい人が多いかと思います。

初期コストの面では合同会社が有利だが・・・

違い③ 印象、信用、イメージ

株式会社と合同会社では初対面で名刺を出したときの会社のイメージや印象が違う可能性があります。名刺を出すとき、株式会社と名乗ったほうが信用される場合が多いでしょう。逆に合同会社と名乗れば、ややそれよりも下かと思います。

 

これは、かつて、有限会社よりも株式会社のほうが信用されたことに似ています。相手が合同会社という形態そのものを知らなければ、そこから説明しなければならない可能性すらあります。

 

もちろん、これはビジネスモデルや業種によっても違うでしょう。たとえば、介護事業で起業する場合、株式会社だと営利目的っぽいイメージが出てしまうために、あえて合同会社を選ぶという傾向もあります。

 

違い④ 定款の有無

株式会社を設立する場合は公証役場での定款認証を経る必要がありますが、合同会社の場合は不要です。これによってもたらされるメリットとしては2つ。ひとつは定款認証が不要なため、設立手続きが簡単で、時間的にも早く設立できるということ。もうひとつは、株式会社だと約5万2000円かかる定款認証費用がかからないということです。

 

違い⑤ 登録免許税

会社設立する際には、登録免許税を国に納める必要があります。この納付額は株式会社と合同会社で違いがあります。

 

●株式会社の場合資本金額の7/1000(ただし15万円未満は15万円)

●合同会社の場合出資金額の7/1000(ただし6万円未満は6万円)

 

では、結局どちらがオススメかですが、コストから考えると、定款認証費用が不要なこと、登録免許税が低いことにより、合同会社のほうが約14万円安く済みます。合同会社を選択するケースのほとんどは設立コストを節約するためです。

 

一方、合同会社の場合、取引先などの信用が株式会社より一段下がる傾向にあります。

 

長い目で見て、信用力アップによる営業上のメリットを享受できるのであれば、設立コスト差は吸収できるのではないでしょうか。

 

[図表2]設立コストの違い

 

ケースバイケースですが、以上の理由から、筆者は株式会社をオススメすることが多いです。

起業の疑問と不安がなくなる本

起業の疑問と不安がなくなる本

中野 裕哲

日本実業出版社

本書は、経済産業省が後援する起業支援サイト「ドリームゲート」で、累計面談相談者数4年連続日本一の実績をもつ人気起業コンサルタントの著者が、相談業務でよく受ける質問を分野ごとにまとめてアドバイス。 「情報のレベル…

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