今回は、自宅を「本店所在地」にして登記できるか等を見ていきます。※本連載は、起業コンサルタントとして活躍する中野裕哲氏の著書、『起業の疑問と不安がなくなる本』(日本実業出版社)から一部を抜粋し、起業の際の会社設立・許認可に関する疑問に焦点をあて、詳しく解説をしていきます。

 賃貸や分譲マンションの場合は、事前確認が必須

<情報のレベル>☆☆☆☆

Q:店舗や事務所を借りず、自宅を本店所在地にして登記することは可能でしょうか?

 

A:勝手に登記して不動産業者等とトラブルになることも

 

売上が安定するまでの間、自宅を本店所在地として登記することができれば、賃料コストを抑えることができ、魅力的ですよね。基本的に自宅を本店所在地にすることは可能なのですが、住居形態に応じて次のような注意点があります。

 

1 自宅が賃貸住宅の場合

賃貸借契約書では多くの場合、事業目的の使用を禁止しています。そのため、自宅を本店所在地として登記しようと考えている場合、事前に不動産業者や大家さんに確認する必要があります。黙って登記してしまうのは契約違反ですから一番マズいです。

 

認められるかどうかはケースバイケースでしょう。たとえば、プログラミング業やライター業、客先常駐型の業務のように、その部屋に不特定多数が出入りをする業種ではない場合、許可されることがあります。

 

2 分譲マンションの場合

分譲マンションの場合、自己所有の物件だとしても、管理規約上、事業用での使用が禁止されている可能性があります。にも関わらず勝手に登記してしまえば問題となります。事前にマンション管理組合などに確認しておきましょう。

 

他の居住者の郵便受けが個人名だけでなく、会社名も掲示してあるような分譲マンションの場合、認められる可能性があるでしょう。逆に、個人名だけしか掲示されていない場合、望みが薄いと思われます。

 

[図表1]自宅兼事務所のメリットとデメリット

 

実家や間借りのオフィスで登記という回避策も

自宅での登記が難しい場合の回避策として、第5回で紹介したバーチャルオフィスやシェアオフィスで登記するという選択肢もありますが、前述のようにいろいろと問題があります。他の回避策として以下のようなことも検討しましょう。

 

①実家や親戚宅を本店所在地にする

実家や親戚宅が一戸建ての場合は、そこを本店所在地として登記させてもらう方法もあります。

 

ただし、遠隔地だと銀行口座の開設、税務署の管轄、創業融資、助成金など、運用面での無理が生じるため、事業を行なう地域と実家等が比較的近いエリアであれば検討してみるのも一案です。

 

デメリットとしては、郵便物のやりとりなどの手間が発生するため、起業に協力してもらえることが前提となるでしょう。

 

②間借りする

知り合いなどのオフィスの一角を間借りするという手もあります。

 

よくあるのが前職のオフィスの一角を間借りさせてもらうパターンです。円満退職して、なおかつ起業に協力してもらえることが前提となります。

 

ただし、注意点がひとつあります。賃貸オフィスだとしたら転貸(又貸し)にあたるため、元の大家との賃貸借契約書上、契約違反になる可能性があります。不動産会社や大家さんに事前に確認してもらうようにしましょう。

 

[図表2]親戚宅や間借りのメリットとデメリット

 

Point>

賃貸住宅の人は賃貸借契約書に「法人登記の可否」に関する項目がないかチェック!

起業の疑問と不安がなくなる本

起業の疑問と不安がなくなる本

中野 裕哲

日本実業出版社

本書は、経済産業省が後援する起業支援サイト「ドリームゲート」で、累計面談相談者数4年連続日本一の実績をもつ人気起業コンサルタントの著者が、相談業務でよく受ける質問を分野ごとにまとめてアドバイス。 「情報のレベル…

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