今回は、起業の際に、会社設立と個人事業主のどちらを選択すべきかを見ていきます。※本連載は、起業コンサルタントとして活躍する中野裕哲氏の著書、『起業の疑問と不安がなくなる本』(日本実業出版社)から一部を抜粋し、起業の際の会社設立・許認可に関する疑問に焦点をあて、詳しく解説をしていきます。

 節税面だけを基準に考えるのはNG

<情報のレベル>☆☆☆☆

Q:会社にするか個人事業かで悩んでいます。選択の基準はありますか?

 

A:よく言われる2つの基準も押さえつつ、大きな視野で総合的な判断を!

 

会社を設立するか、個人事業でいくか。起業相談で最も相談の多いテーマです。

 

会社と個人事業、両者の基本的な違いは下の図表のとおりです。

 

[図表]個人事業と会社の主な違い

 

この違いを前提に、よく言われる選択基準としては次のようなものがあります。

 

原則、個人事業で2年間消費税の免税を受けてから法人化し、さらに2年間免税を受けるのが有利

所得(年間の利益)が500万〜1000万円くらいを超えたら会社設立したほうが有利

 

ただ、これは節税面だけから見た視野の狭い基準。経営は節税だけを基準として考えるべきではありません。もっと大きな視野で総合的に判断しましょう。

 

一番大事なのは、「1円でも多く売上を上げること」。売上がなければ節税も何もありません! 売上を上げるためには「信用」が必要になる場合があります。

 

たとえば、大手企業との取引を予定している場合は注意が必要です。「個人事業とは取引しない」「資本金いくら以上、営業年数が何年以上じゃないとダメ」など、一定基準をクリアしている会社以外とは取引をしてはいけないと内規で定められていることがあります。

 

大手企業との取引を予定しているのであれば、起業前に内規で定めた基準をなんとか聞き出しておくことが必要でしょう。それが、個人事業でいいか、会社にすべきか、資本金をいくらにするかなどに影響してきます。

 

また、どうしても基準をクリアできないようであれば、起業当初は、すでに取引口座を開いている会社を通じて取引をすることも選択肢のひとつです。逆に、信用面から見て個人事業でも問題ないのは、社長個人の信用にかかるビジネスや店舗系のビジネスなどです。

 

たとえば、社長が腕ひとつではじめる経営コンサルタント業だとしたら、経営主体が個人事業だろうと会社組織だろうと、クライアントにとっては関係ないでしょう。あくまで社長個人の信用で依頼するからです。

 

店舗系のビジネスも同様です。飲食店や美容院に入店するときに、経営主体が個人事業か会社組織かを気にすることなんてないですよね。この場合も信用面とは関係なく、節税面などで判断してもOKでしょう。

年の途中で法人成りすると、個人事業の申告が残る!?

A:法人成りするタイミングにも注意が必要

 

もうひとつ、よく受ける質問が、「はじめは個人事業で開業するとして、会社へと法人成りをするタイミングは、いつがいいか?」というものです。

 

ひとつの考え方として個人事業の確定申告の手間があります。個人事業は暦年課税なので、12月で締めて確定申告をします。したがって、法人成りを年の途中でしてしまうと、半端な個人事業の確定申告が残ってしまいます。

 

例)7月末で個人事業を廃業。8月に会社設立→8〜12月の分を翌年2月16日〜3月15日に確定申告する必要あり

 

これを避けるために1月頭に会社設立をする考え方もあります。法人化を迷っているなら、毎年、年末が近づいたら法人化するかどうかを検討する、というのもひとつの考え方でしょう。

起業の疑問と不安がなくなる本

起業の疑問と不安がなくなる本

中野 裕哲

日本実業出版社

本書は、経済産業省が後援する起業支援サイト「ドリームゲート」で、累計面談相談者数4年連続日本一の実績をもつ人気起業コンサルタントの著者が、相談業務でよく受ける質問を分野ごとにまとめてアドバイス。 「情報のレベル…

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