今回は、「バーチャルオフィス」のメリット・デメリットについて見ていきます。※本連載は、起業コンサルタントとして活躍する中野裕哲氏の著書、『起業の疑問と不安がなくなる本』(日本実業出版社)から一部を抜粋し、起業の際の会社設立・許認可に関する疑問に焦点をあて、詳しく解説をしていきます。

銀行の法人口座は開設は難しい・・・

<情報のレベル>☆☆☆☆☆

Q:本店所在地をバーチャルオフィスにすると、銀行口座が開設できないと聞いたのですが、本当でしょうか?

 

A:事業をするうえで不利なケースもある

 

事務所を所有等することなく事業活動に必要な機能(住所や電話番号の貸し出し、郵便物の受け取りや電話応対)を提供するバーチャルオフィスは、固定費を抑えたい起業家であれば一度は検討すると思います。

 

ただ、「銀行の法人口座を開設できない」といったデメリットがあるというウワサも出回っているため、「実際のところ、どうなの?」という質問をよく受けます。バーチャルオフィス側としては、自社にとって不利になる情報は率先して公表しないと思われますから、ここでは実際にはどう取り扱われているのかについてお話しします。

 

1 登記はできるのか

バーチャルオフィスでも会社の登記は可能です。この点は問題ありません。

 

2 銀行の法人口座は開設できるのか

結論から言うと、何も実態のないバーチャルオフィスだとほぼ無理です。振り込め詐欺などの犯罪防止の観点で、金融機関側が口座開設時にかなり厳しい審査をしていることがその原因です。

 

一方、壁で仕切られた個室タイプであれば、OKの場合が多いです。共有のデスクで好きな席に座っていい、いわゆるシェアオフィスタイプの場合は微妙です。ケースバイケースといえるでしょう。

 

なお、金融機関側としては以下のような方法により口座開設の審査を行ないます。

 

●住所確認・・・営業エリア内であらかじめ掴んでいるバーチャルオフィスの所在地住所と付き合わせる。本店所在地がバーチャルオフィスかどうかを尋ねる項目が書面上にある機関もある。

 

●確認資料の提出・・・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、定款、事業計画書、代表者の身分証明書(免許証など)、会社のホームページの有無、会社名義の電気代等の領収書、客先からの注文書など(金融機関や支店により、要求される書類はまちまち)

 

●現地確認・・・実際に担当者がオフィスを訪問し、実態があるか確認(金融機関の方針による。支店から遠い場合など、現地確認をしない場合もあり)

 

通常は1〜2週間ほどで口座開設が完了し、通帳を受け取ることができます。なお、会社を設立せず、個人事業で開業する場合は、個人の銀行口座を使えるため、この問題は起こりません。

厚生年金保険、健康保険、雇用保険に加入できない!?

3 創業融資は受けられるのか

自治体の創業融資制度では、バーチャルオフィスの場合は利用不可という扱いがほとんどです。門前払いのようなカタチになる危険性があります。

 

一方、日本政策金融公庫の創業融資では、バーチャルオフィスだからすぐにダメという基準はありません。ただし、審査のなかで不利になる可能性があります。公庫は起業家の事業に対する「覚悟」を重視する傾向にあるため、バーチャルオフィスでの起業の場合は、その点で疑問が残るというのが審査担当者の本音かと思います。

 

4 許認可は受けられるのか

許認可が絡む業種の場合、バーチャルオフィスの利用は避けるのが無難です。たとえば、宅地建物取引業では、他の法人と同一の住所を本店とすることは認められていません。登記ができたとしても事業が行なえない事態もあり得ます

 

5 厚生年金保険、健康保険、雇用保険に加入できるのか

バーチャルオフィスの場合、厚生年金保険、健康保険、労働保険、雇用保険に加入できない可能性が大きいです。たとえば、客先常駐型のシステム開発などの業種の場合、本社機能が要らないことから、バーチャルオフィスの利用を検討することがよくあります。ただし、役員や従業員の待遇を考えると、厚生年金保険、健康保険や雇用保険に加入できない事態というのは現実的ではないでしょう。

 

このことをもっと詳しく言うと、厚生年金保険、健康保険や雇用保険に加入できるか否かの境目は、「会社専用のキャビネットがあり、そこに財務諸表や帳簿類を置いておける状態かどうか」です。つまり、バーチャルオフィスや共有デスクタイプのシェアオフィスはダメで、個室タイプやパーティションで仕切られた専用デスクがあるタイプの場合、加入できる可能性が高いです。

 

[図表]オフィス形態別のメリット・デメリット

 

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