今回は、年齢別に「米国債」投資のシミュレーションについて見ていきます。※本連載では、株式会社ゴールドハーツ代表・ファイナンシャルプランナーの杉山暢達氏の著書、『証券会社がひた隠す米国債投資法』(ベストセラーズ)より一部を抜粋し、米国債投資の具体的な方法について解説していきます。

最長の30年物以外の「米国債」をおススメしない理由

30年後の年金代わりということで、米国債投資のモデルケースは35歳からとしていますが、40歳を超えてからスタートしても遅くはありません。30年後にもらえるという点を考慮に入れていれば、いつから始めてもいいのが米国債投資です。

 

現代は、「人生100年時代」と言われています。政策としても、国が中心となって100年時代を後押ししているほどです。そう考えると、極端な話、70歳までは投資のチャンスがあると言えるかもしれません。

 

たとえば、現在40歳の人が米国ゼロクーポン債の30年物を購入した場合、満期日は30年後なので、70歳のときにもらえることになります。現代の70歳は、かつての70歳ではありません。仕事もまだまだできますし、趣味に励む人も多いでしょう。

 

あとはスタートが遅くなってしまった分、金額は多めに投資した方がいいかもしれません。35歳の人が30年間毎年投資するのとは異なり、40歳の人は定年までの25年間、額を増やして投資すればいいのです。

 

もっとも、その定年という概念もいつまであるのか分かりません。すでに、定年はかつてより延びていますし、定年制を廃止している企業も出てきています。あるいは、定年後の再雇用という事例も増えているのです。

 

そうなれば、年金代わりの米国債という発想に執着する必要はありません。とにかく30年後にもらえれば問題ないと思えるときまで、米国債投資を続けてしまっていいのです。ライフプランに合わせて、米国債の活用法を考えてみてください。

 

ただし、ここで注意が必要なのは、「満期日がより近い米国債を購入すればいいのでは」という発想です。実は、最長の30年物以外については、あまりお勧めできないのが実情です。その理由を考えてみましょう。

 

たとえば、前述の米国ゼロクーポン債の在庫中、最短のものは、2年4カ月とされています(2017年10月時点。野村證券の場合)。つまり、購入から2年4カ月後には満期日を迎え、額面金額を得られることになります。

 

しかしこの場合、購入単価は「97.53」、つまり1万ドルの額面金額に対し、9753ドル支払わなければならないことになります。利回りはたったの「1.070%」しかありません。これでは、米国債投資としての旨味がないのです。

 

その他の数字も見てみましょう。10年10カ月物ではいかがでしょうか。こちらの場合、2年4カ月物よりは購入単価が低いものの、それでも「78.94」、つまり1万ドルに対して7894ドル必要となります。利回りは「2.190%」です。

 

このように、複利のメリットについて考慮すると、最長である28年4カ月物(約30年物)でなければ、思うように増えないのが実感です。確かに、市中金利を考えれば2%でも大きいのですが、為替を含む長期投資のリスクを許容できるかどうかは疑問です。

 

もちろん、どうしても10年後、あるいは20年後にお金が欲しいということであれば、為替リスクを十分に加味したうえで、満期日までの日数が短い米国ゼロクーポン債に投資するのもいいでしょう。ただし、あくまでも投資の旨味は複利にあることを忘れないようにしてください。

年齢別米国債投資シミュレーションのまとめ

①35歳(モデルケース)

●年に1回、額面1万ドルの30年ゼロクーポン債を購入。

●35歳から55歳までの20年間、これを続ける。

 

※65歳時に、35歳で購入したゼロクーポン債が償還を迎え、1万ドルが口座に入る(税金考慮せず)。66歳時に、36歳で購入したゼロクーポン債が償還を迎え、1万ドルが口座に入る。以下、85歳まで自動的に毎年償還を迎える。

 

②25~34歳

●35歳になるまで、ゼロクーポン債に投資する必要なし(十分、間に合う)。

●毎年少しずつ35歳以降の投資のための原資を貯めていく。

●20代は貯蓄というより、「収入≫支出」のバランスをいつも維持できるよう意識して暮らすほうが重要。借金をカード支払いで回すなど、自転車操業的なライフスタイルが一番NG。悪い習慣は即脱却する。

●30歳あたりから具体的な原資づくりを始め、35歳を迎えるときに100~500万円ぐらい貯蓄できていれば尚可。

●35歳をスタートに①を実行。

 

③36~44歳

●30年のゼロクーポン債を①同様に20年続ける。

●最初のゼロクーポン債の償還のタイミングを65歳に合わせ、その分償還期間が短いゼ

ロクーポン債を購入してもよい。

 

※40歳の方が、65歳から1万ドルを受け取りたい場合。40歳のときに、25年満期のゼロクーポン債を購入すればいい。ただし、30年物に比較し、25年物の方が投資金額は多くなる。つまり、より多くの資金が必要になることに注意する(期間が長くなるほど、複利効果でゼロクーポン債は魅力を増す)。

 

65歳にこだわらず、70歳で構わない場合、40歳から毎年1回30年ゼロクーポン債を買い続ければいい。

 

④45歳~

●自分が何歳のときにゼロクーポン債の償還を迎えたいか計算する。

 

※45歳の方が70歳で償還希望の場合、25年のゼロクーポン債を購入すればいい。ただし、償還を早く迎えたいと思うほど、今投資するべき金額は順次上がってしまうことに注意。複利効果を最大限得たければ30年債がベストではあるが、年齢を加味し、どこで妥協するか検討する。

本連載は、杉山暢達氏の著書『証券会社がひた隠す米国債投資法』(ベストセラーズ)から一部を抜粋したものです。掲載している情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。投資はご自分の判断で行ってください。本連載を利用したことによるいかなる損害などについても、著者、出版社および幻冬舎グループはその責を負いません。

証券会社がひた隠す米国債投資法

証券会社がひた隠す米国債投資法

杉山 暢達

ベストセラーズ

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