まず「老後にどのような生活をしたいのか」を考える
米国債を購入するにあたり、将来のお金のあり方について考えてみましょう。そうすることで、いつ、どのくらいの金額で米国債を購入するべきかが明らかになります。
まず、老後の資金として一般的なのは「年金(公的年金)」です。厚生労働省年金局が平成29年3月に発表した『厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成27年度)』によると、国民年金(老齢基礎年金)の平均支給額は、月額5万5千円ほどとなっています。
ただ、これから先のことを考えると、どれだけもらえるかは未知数です。年金制度の将来性が疑問視されている現状を考慮すると、それほど期待はできないかもしれません。そこで、自ら年金を構築する必要があります。
個人の年金ということで言うと、『個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」』をイメージされる方がいるかもしれませんが、本書でお勧めしているのはあくまでも米国ゼロクーポン債です(iDeCoについては第7章で解説しています※書籍参照)。
つまり、土台となる年金がほぼ支給されないことを前提にして、ゼロクーポン債で老後資金を運用するのです。そうなると、老後にどのような生活をしたいのか想像してみれば、ゼロクーポン債で生み出すべき金額もおおむね予想できるでしょう。
預貯金やその他の金融資産も考慮して、既存の年金支給額と同じぐらいあれば大丈夫そうであれば、月額5万円(年間60万円)ほどが将来、確保できるように投資すればいいのです。1ドル120円だとすれば、額面金額で5000ドルとなります。
将来的な為替変動を考慮しても、額面金額が5000ドルになるように投資すれば十分と言えるでしょう。
米国ゼロクーポン債投資で実現するのは、あくまでも将来の資産形成です。そのため、現在の生活を安定化させる方策をおろそかにしてはいけません。特に用意しておきたいのは、およそ6カ月分の生活費に相当する「預貯金」です。
預貯金は、そのまま持っていても増えません。複利という観点から考えるとマイナスです。しかし、何かあった場合の備えとしての預貯金は、あくまでも投資をするための前提として不可欠です。
6カ月分の生活費は家庭によって異なります。なぜなら年収や家族構成によって、生活にかかるお金が変わるためです。目安としては、おおむね年収の半分ほどでしょうか。ただ最低でも、200万円は用意しておきたいところです。
200万円の預貯金があれば、いざというときでも安心です。不慮の事故や病気などにも対応できます。ほとんどの場合、民間の保険に頼ることなく対応できるはずです(保険の話は第6章で詳しく解説しています※書籍参照)。
この200万円については、できるだけすぐに動かせる状態をキープしてください。銀行預金でもタンス預金でも構いません。いずれにしても、現金で保管しておくのがポイントです。
きちんと生活費を用意しておけば、安心して投資にお金を振り分けることができます。何かあった場合の心配をする必要もありません。まずは6カ月分のキャッシュを用意したうえで、米国ゼロクーポン債投資を開始しましょう。
他の投資も検討するなら「つみたてNISA」がお勧め
預貯金がしっかりとあり、米国ゼロクーポン債投資もきちんと行っている。それでもなお、お金が余っているという人は、株やその他の投資を行ってもいいでしょう。ポートフォリオのなかで、リスク資産を持つのも悪いことではありません。
要はバランスの問題です。守るべき部分ではしっかりと守りつつ、余裕があるのなら少しだけ攻めてみる。投資計画のなかにおいて、整合性が取れているのであれば、そのような投資を検討しても構いません。
ただし、米国債のような優れた金融商品を知ってしまうと、他の投資に対して魅力を感じない可能性はあります。安定性、安全性、利回り、そしてリスクヘッジの観点からも、やはり米国債は非常に優秀なのです。
どうしても他の投資をしたいという人は、「つみたてNISA」などの制度を活用し、日本株と外国株のインデックス投信を買うといいでしょう。つみたてNISAであれば、税金が優遇されているのでお勧めです。
また、インデックス投信の投資は、投資理論の観点からも合理的であると考えられます。人による予想ではなく、あくまでも市場の平均を目指すものなので、長期で考えるとリスクヘッジになるためです。
第1章(※書籍参照)でも紹介しているように、人の予想というのは当てになりません。短期ならともかく、中長期で市場平均以上のリターンを実現することは神業です。そのことを頭に入れたうえで、検討してみてください。