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スモールM&A・・・具体例で見る潜在的な事業承継ニーズ

前回は、スモールM&Aの活用における「投資スタンス」について取り上げました。今回は、いくつかの具体例で「潜在的な事業承継ニーズ」を見ていきます。

「事業再生・地方創生」の期待がかかるキャンプ場の例

実は私たちのまわりには、事業が第三者にバトンタッチされた事例や、現在検討中の方など、潜在ニーズは点在しています。筆者が、ゴールデンウィーク中に接した事例を3つほどご紹介したいと思います。

 

◆キャンプ場には事業再生や地方創生のヒントが満載


数年ぶりに家族と訪れたキャンプ場は、以前の古めかしい名称から、横文字のおしゃれな名前に変わっていました。施設も最近のトレンドを掴んでおり、グランピングと呼ばれる、高級感のただよう大型テントが常設され、Bar風の受付カウンターではドリンクも注文できるスタイルに大きく変化していました。


オーナーと思われる方に質問したところ、昨年に前経営者から事業を譲り受け、リニューアルしたとのことでした。オーナーは、20代後半の若者です。こちらもレジャーなので踏み込んで聞きませんでしたが、譲渡価格はおそらく格安で、スモールM&A領域であることは間違いありません。ターゲット層も地元・ファミリー層だけでなく、県外・若手を取り込むマーケティング施策をしており、とても賑わっていました。

 

 

日本オートキャンプ協会の調査によると、国内のキャンプ人口はピーク時である1996年の1,580万人から、リーマンショック後の2008年には700万人ほどまで半減したものの、その後徐々に回復し2016年には830万人まで増加しているようです。

 


また、アウトドア用品の大手であるスノーピーク社は、地方自治体が運営するキャンプ場のコンサルティング事業に乗り出しています。同社の「人生に野遊びを。」のスローガンは心に響くものがあり、多くのファンに支持されています。地方創生ニーズに合致していることもあり、大きな期待が寄せられています。

 

◆一見地味だが、企業価値が高い園芸農家


キャンプ場からの道すがら見つけた園芸農園のただずまいが、どうしても気になり、ふらりと寄ってみました。排他的な感じで番犬も数匹いましたが、子連れだったためか、怪しまれずに中に入れて頂きました。予想通り、樹齢数百年の盆栽や、希少植物が広大な敷地に、ところ狭しと並んでいます。

 

突然の訪問にも関わらず、快くオーナーに受け入れて頂き、しばし盆栽談義に花を咲かせました。小売りはやっていないものの、噂を聞きつけ直接買い付けに来る方が増えている様子です。海外の方の訪問も多く、思わぬ高値でまとめ買いされるケースもあるとのことでした。筆者も樹齢20年の「五葉松」に思わず心惹かれ、ミニ盆栽を購入してしまいました。

 

雑談のなかでオーナー自ら話をしてきたのですが、息子さんはこの事業に興味がなく、後を継ぐ予定はないとのことでした。おそらく身内の方は、その資産価値と将来性に気づいていないのかもしれません。もし、企業価値評価(バリュエーション)の依頼があれば、売上がわずかだとしても、高い価値がつくのは間違いありません。その価値が分かる方に、適正な評価で引き取ってもらい、オーナーは技術顧問などで事業拡大に寄与して頂くのが、関係者にとってハッピーなのではないかと感じました。

スモールM&Aとは「経営資源のバトンタッチ」

◆マニアからの評価は高いものの、ビジネスは低迷している酒蔵


園芸農家からの帰り道、自宅の晩酌用に地元の日本酒を買いました。本醸造で値段も手ごろでしたが、すっきりとした甘みと爽やかな香りに驚きました。あまり聞かない銘柄だったので、日本酒に精通している知人に早速確認したところ、マニアからの評価は高いが販売力が弱く、売上も数千万円程度とのことでした。おそらく赤字経営で、後継者も不在ではないかとのコメントもありました。

 

本来、良い事業であれば、身内や社員が引き継ぐのが理想と考えています。それができない理由は、それぞれに個別の事情があります。歴史ある企業ほど、第三者という選択肢を分かっていても、決断を引き延ばし、廃業に至るケースが多いように見えます。

 

いずれも、キャンプ場に泊まり、園芸農家に立ち寄り、日本酒を買って家に帰るまでの24時間以内に感じたことです。アンテナを張るだけで、実は事業承継の話はいたるところに存在しています。とはいえ、売却案件として表に出るのは氷山の一角です。

 

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◆顕在化を阻むM&Aのイメージ


M&Aという言葉には、「買う」「乗っとり」等のマイナスイメージがつきまとうのも事実です。何か良い別の表現がないかと思案していたところ、2017年の「中小企業白書」のなかで、とてもしっくりと来る図とタイトルを見つけました。


「経営資源のバトンタッチ」という表現です。さすが、優秀な方々はネーミングも秀逸です。成熟期にある企業は、撤退か承継・M&Aを選択し、成長期の企業、起業を目指す方、創業期の方へ「バトンタッチ」するという概念です。以前から、スモールM&Aの業界では実例がありましたが、このように分かりやすく記載された図を見たのは初めてです。「2017年版 中小企業白書」で詳細は確認できますが、一部、資料を転載しておきます。

 

[図表]中小企業のライフサイクル(イメージ)
 

出典:中小企業庁「2017年版中小企業白書 概要(http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/h29_pdf_mokujityuuGaiyou.pdf)」
出典:中小企業庁「2017年版 中小企業白書 概要(http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/h29_pdf_mokujityuuGaiyou.pdf)」

 

ここ最近、人材関連、IT企業など異業種からのM&A事業への参入が相次いでいます。特に小規模M&Aは、潜在的な件数が多く既存プレーヤーだけでは対応ができないのは明らかです。


それぞれが得意分野を活かして、市場の健全な発展につながるのであれば良い流れだと感じます。とはいえ、とてもセンシティブな情報を扱うため、トラブルも増えています。業界発展を妨げては本末転倒ですが、特に中小企業の譲渡案件を扱う側に、保険や証券のように、何かしら一定のルールや規制は必要と感じます。売り手が安心して情報提供し、顕在化の不安を取り除く施策が、業界の発展につながるに違いありません。

株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

著者紹介

連載新たな投資分野として注目集める「スモールM&A」の活用術

 

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