医師による病院運営・・・問われる「経営者」としての手腕

一代で11の医療・介護施設の開業に成功した医師の軌跡から、事業拡大における極意を見ていく本連載。今回は、その第27回です。

「経営」「組織」について学ぶ機会がほとんどない医師

前回の続きです。大学では医学や医療技術ばかりを勉強してきました。もちろん経営学など学んでいません。大学で経営を学んだとしても、それがそのまま社会に通用するとは思いませんが、一般的には企業に就職するなどして働くうちに、仕事を通して社会や組織の仕組みなどを身に付けていきます。

 

その点、医師は特別です。医学部を卒業すると、研修医という世界が待ち受け、多くは大学に残ったり、他の大学に移ったりなどして、医療技術をひたすら磨きます。ここで人間関係を学ぶことはできますが、どうしてもクローズドの世界ですから、医療以外の経営や組織を学ぶ機会はほぼありません。

 

そういった意味で、医師は、一般的な「社会人」としては特殊な存在です。研究ばかりに没頭している高名な学者が電車の切符の買い方を知らなかった、という笑い話もありますが、医師はそれを笑えません。

 

研究肌の人なら医療を追求していけばいいかもしれませんが、開業とは、店を構えて営業するということです。商店街の青果店や食堂とまったく同じです。「あの先生は腕がいい」などと評判が高まり、患者さんが増えていけば繁盛するでしょう。

 

しかし、2番目の八日市場で最初に味わったように、まったく知られていない医療機関ならば、何らかの経営努力をして知名度を上げなければ存続することは難しいでしょう。開業した段階で「自分は医療経営者になったんだ」という自覚を持ち、職員と共に営業に勤しまなければならないのです。

 

ましてや医療法人としてまだまだ成長段階にあり、500名以上の人材を抱えた現在、それだけの数のスタッフやその家族の生活を守るためには、効率よくシステマティックな組織運営が不可欠で、それができなければ末永く存続することは不可能です。

「組織の安定」が職員のやり甲斐、患者の満足度に直結

私の現在の立場としては、優れた若い人材の持つ技術を生かすためにも、理事長として経営に力を注がなければなりません。

 

職員の生活を守るためにも、たくさんの患者さんに来てもらい、彼ら、彼女らの命を長期間にわたって守ることにより、患者さんも職員たちも幸せになれる組織運営が、私共の腕にかかっているのです。

 

そのために重要なことは組織を安定させることです。安定とはすなわち毎月きちんと利益を出せるようにすることにほかなりません。優れたスタッフたちに「ずっとここで働きたい」と思ってもらえる組織となれば、医療事業を継続でき、多くの患者さんたちに最適な治療を施すことができます。規模の大小は関係ありません。

 

組織の安定が職員たちのやり甲斐となり、患者さんに満足のいく治療を行うことで利益が生まれ、その利益は組織に返ってきます。このサイクルをきちんと整えることこそが医療経営なのだと思っています。

 

この話は次回に続きます。

医療法人社団明生会理事長 千葉県医師会会長

千葉大学医学部卒業。1991年に千葉県東金市にクリニックを開業。透析施設7施設、介護施設4施設、関連施設4施設の包括的なネットワークで、患者が安心して受けられる透析治療や介護サービスを提供。日本透析医学会教育関連認定施設でもある同法人の東葉クリニックでは、学会や研究会などで毎年数多くの報告を行う。医療連携室にソーシャルワーカーを配置することで地域との連携を図り、保健・医療・福祉の3方向から総合的なサービスの提供を目指している。

■腎臓病・透析患者のためのブログ「じんステーション
 (https://jin-station.com/

著者紹介

連載11の医療・介護施設を開業した医師に学ぶ「事業拡大」の秘訣

ドクター・プレジデント

ドクター・プレジデント

田畑 陽一郎

幻冬舎メディアコンサルティング

医療者である開業医が突き当たる「経営」の壁。 経営者としてはまったくの“素人”からスタートした著者は、透析治療を事業の柱に据えて、卓越した経営センスで法人を成長させていく。 徹底的なマーケティング、2年目で多院展…

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