MACDがシグナルを上回ると買い転換、逆が売り転換
本項で解説するMACDの使い方は、テクニカル分析の教科書に書かれている内容とは、多少異なりますが、私なりにバックテストを重ねて検証したうえで得た使い方です。
まずMACDの特性を理解しておかなければなりません。MACDは期間が異なる2つの指数平滑移動平均の差を示す数値です。つまり、テクニカル指標としては「移動平均線の乖離」に近似した数値が元になっています。そしてMACD自体を単純移動平均化した「シグナル」というもう1本のラインが加えられるのが基本です。そして、MACDがシグナルを上回るときが買い転換、その逆が売り転換のサインになります。
ただ、売買サインの発生時に重要なのはMACDの水準です。移動平均線の乖離の概念が計算式のベースにあるため、MACDがゼロ近辺にある場合(計算の元になる2本の指数平滑移動平均線が近接している場合)は、原理的にみて移動平均線と株価もほぼ同じ水準になります(乖離が小さい)。そして、乖離が小さいときに発生した売買サインは、ダマシになる場合が多いため、私はそれをノイズと考えて排除して見るようにしていました。
MACDをエントリーに使う場合は、「MACDがゼロ水準から何%以上、上下に大きく乖離した状態」で発生した売買サインのみを使うようにしていたということです(図表参照)。
[図表]MACDのサインは乖離が大きいときほど有効(日経225日足チャートとMACD)
MACDが「ゼロ水準」に戻るのは・・・
一方で、MACDでターゲット・プライスやロスカット・ラインを決めることには、むずかしい面があります。なぜなら、MACDは価格上のポイントを示してくれるテクニカル指標ではないからです。
したがって、ターゲット・プライスは、価格ではなくMACDがゼロ水準まできたときを一つのチェック・ポイントとしていました。MACDがゼロ水準に戻るのは、計算の元になる2本の指数平滑移動平均線が近接しているときであり、この場合、株価も移動平均線に近づきますから、乖離が縮小し、解消されたことを意味します。これは本書の第3章(書籍を参照ください)で解説した移動平均線を使ったエントリーのタイミングと(計算期間の設定にもよりますが)おおむね同じところになります。
つまり、エントリーにMACDを用いる場合はトレンドに対して逆張りスタンスで臨む場合、エントリーに移動平均線を用いる場合はトレンドに対して順張りスタンスで臨む場合という使い分けをしていたのです。